中南米の最新情報

NPOチャレンジブラジルが、ブラジルを中心に中南米のニュースをお届けします。

ベネズエラは大統領選を7月に実施

 ベネズエラは大統領選挙を7月28日に設定しました。マドゥロ大統領はルーラ大統領)に対し、今年下半期に予定されている選挙では「野党との合意」で、国際監視員と監査が行われることになるだろうと語っていました。

 ブラジルのメディアによると、ベネズエラ全国選挙評議会は5日、政府と野党間の合意で7月28日に決まったと発表しました。同日は第53代大統領であるチャベス大統領の誕生日に当たります。これまでベネズエラの大統領選挙は12月に行われるのが恒例でした。

 昨年10月、ベネズエラ政府と野党は選挙に関して合意に達し、選挙の実施方法に関するガイドラインを定めた「バルバドス協定」に署名しました。協定では、大統領選の投票は2024年後半に行われることになっていました。

 3月1日のルーラ・マドゥロ会談で、ベネズエラ大統領選が取り上げられ、マドゥロ大統領は「2024年後半に行われる」と述べ、「バルバドス協定」の順守を約束していました。今回の発表を受け、ブラジル政府関係者は「一歩前進した」と安堵しています。

 しかし、1月に最高裁判所が主要野党政治家であるマリア・コリーナ・マチャド氏の資格を剥奪し、2月には活動家のロシオ・サン・ミゲル氏が逮捕されるなど、まだ予断を許さないところがあり、ブラジル政府はバルバドス協定の順守を求める文書を発表したりしています。

ブラジル人女性、インドで集団強姦被害

 ブラジルのメディアによると、インド警察は5日、ブラジル人観光客フェルナンダ・サントスさんへの集団強姦に関与した容疑者8人全員を逮捕しました。事件はインド北東部ジャルカンドナ州で起き、サントスさんは夫とともにバイクで国中を旅していて、同地でキャンプをしていた1日に襲われました。

 インド警察はこの事件に関する記者会見を行い、容疑者全員を逮捕したと発表し、国内で大きな衝撃を与えました。容疑者は犯行現場近くの警察に拘束されており、全員裁判にかけられます。ただ、容疑者8人の身元と国籍は不明のままです。

 インドでは、犯罪を犯した者は誰でも死刑に処される可能性があります。2012年に学生が強姦され死亡したことを受け、暴力的で衝撃的なレイプ事件の犯人には死刑が導入されました。

 強姦犯への死刑導入にも関わらずインドでは、依然として強姦事件が多発しています。インド政府によると、2022年には約3万1500人のレイプ被害者が出ています。ただ、ブラジルと比べるとレイプ被害者は少なく、ブラジル公安年鑑による2022年のブラジルでのレイプ被害者は74,930人に上っています。

アイルランドで発見されたアマゾンの魚

 アマゾンの魚がアイルランドの湖で発見され、話題になっています。ブラジルのメディア5日付によると、発見されたのはアマゾン原産で雑食性の淡水魚パクーです。発見場所はアイルランドの田園地帯にある湖で、首都ダブリンから140 kmほど離れています。ベテランの漁師が見つけました。

 アイルランド当局は「アマゾンの魚がどうしてここにいるのか」と調査を始め、アイルランド内陸漁業局も調査を始めています。当局は、「誰か飼育していた人が、湖に棄てたのではないか」と推理しています。

 アイルランドでは外来魚の養殖は特定の法律によって規制されており、内陸漁業局は「この魚の起源やどのようにして湖に到達したかについては、まだ明確な詳細はなく、民間の水槽から放流された可能性がある」と述べています。

エクアドル大統領候補殺害協力者の裁判開始

 ブラジルのメディアによると、エクアドルの司法長官事務所は28日、 2023年のエクアドル大統領選に立候補していたフェルナンド・ビジャビセンシオ氏殺害に関与したとして告訴された5人の容疑者を裁判にかけると発表しました。勾留されていたのは6人ですが、審問の後、容疑者の1人は釈放される事になりました。

 検察の調べによると、容疑者のうち2人は犯罪組織のリーダーでした。ビリャビセンシオ氏は元議員でジャーナリストでした。同氏は報道で汚職や政治家と組織犯罪とのつながりを暴露し、犯罪組織から絶えず脅迫の標的にされていました。

 同事件では銃撃犯は現場で死亡し、最初に拘留された容疑者13人のうち7人が刑務所内で殺害されました。検察は、裁判にかけられる5人は凶器、車両、キャンペーン用のTシャツや帽子の調達などの後方支援を担当し、殺人実行者と刑務所内の殺人命令者との仲介役を務めたとしています。

 被告の弁護士は「彼らを犯罪組織と結びつける証拠が不足している」と主張し、「計画に使用されたとされる携帯電話が被告のものであるという証拠を提示していない」と反論しています。

 事件の銃撃犯が現場で死亡したこともあり、殺害の動機はまだ解明されていません。検察は誰が殺害を指示したかという捜査を続けています。

ルーラ・マドゥロ会談で和平を模索

 ブラジルのメディアによると、ルーラ大統領は28日、カリブ諸島へ出発します。カリブ諸島訪問後、カリブ諸国共同体(カリコム)首脳会議出席のため、ガイアナへ移動します。

 首脳会議ではガイアナと紛争中で大統領選を控えているマドゥロ政権が議題の中心になると見られています。ベネズエラの同盟国であるブラジルにとって、この問題は大きな課題とも言え、ルーラ大統領はベネズエラマドゥロ大統領との会談で解決策を探ると見られます。

 ブラジル政府はベネズエラ大統領選の自由選挙を望んでおり、ガイアナ・エセキボ地域でのベネズエラの軍事行動を支持しないというシグナルを送っています。

 カトリック大学政治研究センターのベニグノ・アラルコン所長は「国内で弱体化したマドゥロ大統領は、常に外部紛争を通じて国を統一したいと考えているのかもしれない」と指摘し、それでも軍事行動は行わないだろうと見ています。しかし、「マドゥロ政権は国境での軍事駐留を強化している」と注意深く見守る必要があると言います。

 ベネズエラ中央大学(UCV)出身でベネズエラ選挙評議会(CNE)のルイス・サラマンカ氏は「ルーラ、コロンビアのペトロ両大統領が「マドゥロ大統領とチャベス派のエリート層を説得することで、和平交渉の道を切り開くのに役立つ可能性がある」と語り、「危機から平和的に抜け出す方法は、ブラジルとラテンアメリカにとって大きな関心事です。ルーラ氏はマドゥロ氏に助言できるかもしれない」とルーラ・マドゥロ会談に期待を寄せています。

日本の伝統神事「裸祭り」に女性も参加

 ロイター通信が配信した「1250年ぶりに女性を受け入れた日本の伝統」という記事を、ブラジルのメディアが27日に報じています。記事で伝統と記載しているのは愛知県の国府宮神社で行われている厄よけの伝統神事「裸祭り」のことで、ふんどし一つの男たちが神男に触れ、役を落とそうと揉み合う祭りです。

 記事は、「世界経済フォーラムジェンダーギャップ指数で昨年146カ国中125位にランクされた日本で、男たちの聖域に女性が参加するのは極めて珍しい」としています。もちろん女性が参加するといっても、ふんどし姿で男たちに混じって揉み合うというわけではなく、ふんどしの代わりに白い短パン、長めの法被を身にまとい、赤と白の布で包まれた長い竹竿を「わっしょい」の掛け声をかけながら神社まで運び奉納するものです。

 この祭は神社でお祈りする前に祭りで男たちが厄払いをするという習わしで、祭りには1200年間、男だけしか参加できませんでした。その禁が男優位社会の日本で破られたことになります。参加した女性はロイター通信に、「最も重要なことは、みんなにとって楽しい祭りがあることだと思う。神様もきっと喜んでくれると思う」と話しています。

 「男の祭りで女が何をするのか」「これは男の祭りなんだよ」と女性の参加を危ぶむ声もあったといいます。しかし、時の流れは祭りのあり方も変えました。岩手県・黒石寺の裸祭りは、厳寒の中で祭りに参加する若者がいなく、「今年が最後」と宣告されました。時代が変わったということのようです。

アルゼンチン大統領にIMFが「貧困層保護を忘れるな」

 国際通貨基金IMF )はアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領に対し、超自由主義経済改革を推進し財政赤字をゼロに削減しようとする政策で、貧しい階層の保護を忘れてはいけないと勧告しました。ブラジルのメディアによると、ギタ・ゴピナスIMF副局長が25日掲載の「ラ・ナシオン」紙で述べたものです。

 ゴピナス副局長は「財政改善策では、社会援助は削減されることなく、最貧困層に負担がかからないよう調整すべきだ」と強調しています。前日、アルゼンチン大統領は超保守党大会の演説で、社会主義の進歩をさせないよう求め、「社会正義の呼び声に流されないで欲しい」と述べていました。

 ミレイ大統領は演説で「社会主義者は我々の生活を台無しにする」と述べ、スペインの経済学者の言葉を引用、「社会正義は暴力的で不公平だ。つまり、それは公平でも社会的でも何でもない」と強調し、「規制を支持しない、市場の失敗という考えを支持しない、殺人的な中絶計画の推進を許さない、そして社会正義の呼び声に騙されるな 」と語りました。

 ミレイ政権発足の2カ月半の間に、254.2%のインフレ抑制のため通貨の50%切り下げ、価格の完全自由化、規制緩和を実施しています。信用機関は「インフレ率は今年半ばまでに一桁に低下する可能性があるが、さらにインフレ率を低下させ、その水準を維持することが求められる。それには少なくとも1年はかかるだろう」と語っています。

ブラジル大統領が再び「イスラエルの行動は大量虐殺」と発言

 ルーラ大統領は再び「イスラエルがガザで大量虐殺を行っている」と発言、反発するイスラエルに反論しました。ブラジルのメディアによると、大統領の発言は23日、リオデジャネイロの近代美術館イベントで行われたもので、戦争真っ只中のイスラエルの姿勢を批判し、「同国はパレスチナ人に対して大量虐殺を行っている」と指摘しました。

 ルーラ大統領がイスラエルガザ地区での行動を「大量虐殺」と発言したのは18日が最初で、これにイスラエルが猛反発し撤回を求め、米国のブリンケン国務長官も「大統領には同調しない」と異論を唱えていました。こうした批判を恐れることなくルーラ大統領は再び「大量虐殺」と強調しました。

 ルーラ大統領はイベントで「私は自分の尊厳を虚偽と引き換えにするつもりはない。私は自由で主権のあるパレスチナ国家の創設に賛成で、パレスチナ国家がイスラエルと調和して生きられるよう望んでいる。付け加えれば、イスラエル政府がパレスチナ人民に行っていることは戦争ではなく、女性と子供を殺害する大量虐殺だ」と述べました。

 続けて大統領は、現在の国連安全保障理事会では「紛争を終わらせるための効果的な行動をとれない」と批判、21世紀にふさわしい国連に改革するよう持論を展開しました。

ガザ和平、ベネズエラの選挙で伯米が会談

 ブラジルのルーラ大統領とブリンケン米国務長官は21日、ブラジリアでガザ和平とベネズエラの選挙について話し合いました。ブラジルのメディアによると、会談で米国務長官は、ガザでの死をホロコーストに例えたルーラ大統領の声明に異議を唱えました。

 伯米会談はブラジル大統領府で両国政府の代表も出席し約2時間行われました。席上、米国務長官は「イスラエルの攻撃で、ガザでパレスチナ人が大量に死亡したことをナチス政権によるユダヤ人絶滅のホロコーストに例えたルーラ大統領の発言に同意しない」と述べました。

 会談終了後、米国大使館が記者会見、「長官は、人質全員の解放を促進し、人道支援を強化し、パレスチナ民間人の保護を改善するためのパートナーとの緊急の取り組みを含め、ガザ紛争に対する米国の取り組みについて話し合った」と発表したのみで、公式にはルーラ大統領の演説に関するブリンケン国務長官の対応には触れませんでした。

 ブラジルのメディアが大統領府関係者から得た情報では、ルーラ大統領のホロコーストに関する声明は会談で取り上げられ、ブリンケン米国務長官は継父がナチスに迫害された生存者だと語るなどルーラ発言にも言及、ルーラ大統領は国務長官の指摘に耳を傾けていました。この話の中で国務長官は「ルーラ声明には同意しない」と述べたと言うことです。
 
 このほか会談では、ベネズエラガイアナ間の紛争も議題に上り、国務長官は紛争を調停し、紛争の拡大を避けようと努力しブラジルの姿勢を称賛しました。紛争はベネズエラガイアナの埋蔵資源地域を併合しようとしたもので、両国間の緊張が極度に高まりました。ブラジルは緊張緩和に努力しました。また、国務長官は今年予定されているベネズエラの大統領選挙にも言及、「マドゥロ政権は民主的で透明性のある選挙を行う必要がある」と強調しました。

ブラジル大統領と米国務長官が会談

 ブラジルのメディアによると、イスラエルと外交面で対立が表面化したブラジルのルーラ大統領は21日、訪伯する米国のブリンケン国務長官と会談します。ブラジル大統領府は「二国間および世界的な問題について話し合う」としか発表していませんが、ガザ地区におけるイスラエルハマスの紛争も議題に上ると見られています。

 ブリンケン国務長官は、国務長官としては初のブラジル訪問で、ブラジル訪問後はアルゼンチンでミレイ大統領と会談する予定です。米国政府は、G20(世界最大の経済大国を束ねるグループ)の議長国であるブラジルに、労働者の権利とエネルギー転換の分野での米国の主張を、両国間のパートナーシップの面から支持を求めると思われます。

 同国務長官ガザ地区の紛争終結に向けた各国間の交渉に参加してきました。米国は、ガザでのイスラエルの軍事作戦をホロコーストに例えたルーラ大統領の声明に「ブラジル政府の公式なものとは考えていない」とコメントしています。その一方で米国は、停戦を求める国連安全保障理事会の決議案(アルジェリアが提出)に対して3度目の拒否権を発動しました。

 米国政府はイスラエルに軍事資金を提供するなど主要な支援国です。ルーラ、バイデン両大統領は気候変動、労働者の権利、民主主義の強化などでは意見が一致していますが、ウクライナ紛争、ガザ紛争では両国間に違いが見られます。そうした面から今回の両国会談の結果に注目が集まっています。