中南米の最新情報

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ブラジル大統領がイスラエルの行動を虐殺と非難

 ブラジル大統領がガザ地区でのイスラエルの行動を第二次世界大戦中のユダヤ人虐殺に例えた演説にイスラエル政府が反発、駐ブラジル大使の召喚を決めました。ブラジルのメディアによると、ルーラ大統領が発言したのは5日間のアフリカ大陸旅行を終え、帰国を前にエチオピアで記者団に語ったものです。

 同大統領は記者から、ハマスが1200人を殺害し242人を誘拐した10月7日のテロ攻撃に国連パレスチナ難民機関のメンバーが関与した疑惑があるが、同機関への資金援助についてどう思うかと質問されました。質問に大統領は、当局によって調査されており、すでに従業員グループは解雇されていると指摘、資金提供を中断した国々を批判しました。

 ルーラ大統領はガザ地区では2万8000人以上が死亡していることに触れ、「そこで起きていることは戦争ではなく、虐殺だ」と語りました。さらに大統領は「裕福な世界がパレスチナ人に対する人道問題への貢献をやめると発表するのを見ると、この人々の政治的意識がどれほど大きいのか、疑問に思う」と続け、ヒトラーナチス政権が600万人のユダヤ人を絶滅させたときのホロコーストに対するイスラエルの反応と比較し、「人道支援を見逃していませんか? ブラジルはハマスを非難したが、イスラエル軍ガザ地区で行っていることも非難しないわけにはいかない」と述べたのです。

 これにはイスラエル政府や関連団体が一斉に反発しました。イスラエルのネタニヤフ首相はソーシャルネットワーク上で、ルーラ大統領の言葉を恥ずべき深刻なものだと指摘、「ホロコーストを矮小化し、ユダヤ人とイスラエル自衛権を傷つけようとするものだ。イスラエルナチスホロコーストヒトラーと比較することは越えてはならない一線で、イスラエルは自らを守り、未来を保証できるよう完全な勝利を得るまで戦う」と述べています。

 イスラエル外務大臣は、19日に駐ブラジル大使を召喚すると述べ、「ブラジル大統領の言葉は恥ずべきものであり、深刻なものである」と批判しました。その他、エルサレムホロコースト博物館館長、ブラジル・イスラエル研究所なども「中東とホロコーストはまったく異なるもので、ブラジル大統領の言葉にはユダヤ人に対する偏見や憎しみがあり、反ユダヤ主義的な側面が見られる」と現実を歪曲しているとしています。

 ブラジル大統領府は18日、「 10月7日以来、ルーラ大統領はハマスによるテロ行為を非難し、ガザ地区の女性と子供の苦しみに対する不釣り合いな対応に反対している」というメモを発表しました。

サンパウロでカーニバル期間中、携帯電話1,035台が盗難

 サンパウロ都市圏ではカーニバル前とカーニバル期間中(10日から13日まで)に1,035台の携帯電話(強盗66件、窃盗477件)と多数のキャッシュカードが盗まれました。警察治安部隊は183台の携帯と598枚のキャッシュカードを回収し、54人の容疑者を逮捕しました。ブラジルのメディアによると、捜査官は花柄のシャツやショートパンツ、アクセサリーで変装し酒宴に潜入、犯人を逮捕したということです。

 報道によると、捜査官はブラジル代表チームやサッカークラブの花柄のシャツ、ショートパンツ、帽子、キャップ、サングラス、さらにはキラキラ光るアクセサリーで変装し、酒宴の客になりすまし街頭のカーニバルに潜入、携帯電話やキャッシュカードの強盗・窃盗犯を逮捕しました。公安事務局の調べでは、カーニバル前開催の3日から4日とカーニバル期間中の10日から13日の間にサンパウロ都市圏で1,035台(昨年は1,762台が盗難)の携帯電話が盗まれました。

 捕まった窃盗犯は携帯電話6台を下着の中に隠していたり、バッグの中に18台を隠し持っていたりしていました。10日に逮捕された女窃盗犯は22台の携帯を持ち歩いていました。この他、サンパウロ南地区では71枚のキャッシュカードを大量所持した男が逮捕され、サンパウロ・サンバドローム近くで他人名義の銀行カード450枚を所持した男も逮捕されています。

 回収された携帯電話とキャッシュカードは持ち近く持ち主に返却される予定です。これからもサンパウロ市ではポストカーニバルが開催されお祭り騒ぎが続きます。街頭パレードもにぎやかに行われるため、警察は一層警戒を強めています。

ボルソナロ前大統領、任期末に80万レアルを米国口座に送金

 ボルソナロ前大統領は任期末(2022年12月末)の渡米する前に米国の銀行口座に80万レアルを送金、訪れたフロリダで、ブラジルでのクーデター事件の展開を見守る予定でした。ブラジルのメディアが14日に報じたもので、メディアが入手した連邦警察の捜査資料に記載されていました。

 連邦警察によると、ボルソナロ氏は12月27日に同氏が口座を持っている米国に拠点を置く銀行に80万レアルの為替操作を行ったとしています。また、クーデター関連で捜査対象になっている人たちについて警察は、「彼らはクーデターが完了する可能性があると予想していた」と見ています。

 メディは入手した資料から、「捜査対象者の一部は国外に逃亡し、違法行為で刑事訴追から身を守るため、金融機関に保有していた資産をすべて引き出し、米国に送金した」と報じています。連邦最高裁判所に送られた警察の陳述書では、「金額にはサウジアラビアから贈られた宝飾品の売却と同じく、外国当局から引き渡された高額資産を流用した金が含まれている可能性がある」と指摘しています。

 連邦警察は「当時のボルソナロ大統領は任期満了を前に、大統領選挙の結果次第では海外に住むことを目的に、違法・合法に関わらず、すべての資産と財産を米国に移管した」と説明しています。調べで、80万レアルを米国に送金した後、ボルソナロ氏のブラジルでの貯蓄残高はマイナス11万1000レアルになっています。

 連邦警察の結論は、「クーデターが未遂に終わったことで、捜査対象となった数名が、様々な理由(休暇や休暇)をつけ、国外に出始めたことで明らかだ」と述べています。彼らは有罪判決を受けた場合に出国しやすい公式パスポートを所持しているため、パスポート没収の必要があると指摘しています。

ブラジルはロシア製ディーゼルの最大輸入国

 ブラジルはロシア製ディーゼル油の最大輸入国になりました。ブラジルのメディア13日付によると、2023年度ブラジルは4 億ドルを支払い610 万トンを輸入し、ロシア製ディーゼルの最大の輸入国になりました。輸入量は対前年比 6000% 増(2022年度は10万1000トン)を輸入しています。

 2023年のディーゼル輸入傾向は、主に米国やインドからの輸入量に取って代わりロシア製ディーゼルの輸入増加が見られます。これはロシア製ディーゼルに対する欧州の制裁で、新たな購入者を求めロシアが割引価格で市場販売しているためで、ブラジルの輸入業者が積極的に買い入れた結果と見られています。エネルギー関係のアナリストも「ブラジル政府の策ではなく、安い油を求める業者の動き」と指摘しています。

 ロシアは日量約95万バレルのディーゼルを輸出してきており、この量の約70%は欧州連合と英国向けでした。これが欧州の禁輸措置により、ロシアは売り先をなくしました。このためロアシアは市場で安値販売を始め、これにブラジルの輸入業者が飛びつき、大量に購入したものです。

 ブラジルの貨物輸送、農業のエネルギーはディーゼルに依存しています。早い話が、ブラジル経済の裏の主役はディーゼルで、国内ではまだ30%が不足気味と言われます。輸入業者が安いディーゼルに飛びつくのは当たり前で、今年度の輸入量も若干の増加が見込まれています。
 
 ロシアからのディーゼル輸入増加について、欧米からの圧力は感じられないようです。欧米にはインフレと燃料価格高騰の懸念があり、迂闊には割引されたロシア製品購入に圧力はかけられないという事情もあるようです。

パラグアイで窃盗団がトンネルを掘削、数百万ドルを盗む

 ブラジルのメディア11日付けによると、パラグアイとブラジルの国境にあるシダーデ・ド・レステでパラグアイの両替商の金庫から数百万ドルを盗まれる事件が起きましたが、このほど窃盗団にはブラジル人も含まれるなど事件の詳細が明らかになりました。

 パラグアイ警察の調べによると、事件を起こした窃盗団は2022年末から1年掛け、最も交通量の多い道路や建物の下を通るトンネル180㍍を掘って両替商内に侵入しています。掘削には先端がダイヤモンドのドリルや液体ダイナマイトなどの特殊な道具を使い、トンネル内の空気を循環するのに扇風機を使っていました。トンネル内部での通信には有線電話が使用されていました。

 トンネル内は高さ約70センチ、幅約70センチの空間しかなく、調べた捜査官は「這ってしか進めない。 湿気、泥、下水が多く、180㍍進むのに3時間もかかった」と話しています。盗まれた金庫は店の地下にあり、窃盗犯は地下に到着すると金庫室の側壁を破壊し、148個の小型金庫を盗み出しています。被害金額はまだ確定していませんが、警察は 200 万米ドルから1,600 万米ドルになると推定しています。

 これまでの捜査でパラグアイ警察は、容疑者3人を特定したと発表しています。首謀者と思われるのが犯罪組織「PCC」と関係のある2人と、トンネル掘りの拠点となった建物の借り主です。同事件ではブラジル連邦警察も協力しており、首謀者と言われるPCCと関係のある他の2人の容疑者を監視しています。 そのうちの1人はすでに銀行強盗で逮捕されており、もう1人は武器密売の容疑で行方を追っている人物です。

追い詰められるブラジル前大統領

 ブラジル連邦警察は9日、2022年に起きたクーデター未遂事件でボルソナロ前大統領が同クーデターに参加していたと思われる証拠のビデオを押収、公開しました。ブラジルのメディアによると、そのビデオはボルソナロ前大統領のマウロ・シド元副官のコンピューターから押収したもので、同前大統領が招集した閣僚会議で「このまま大統領選での敗北を認める訳にはいかない」と発言していました。

 2022年7月に開かれた問題の閣僚会議は大統領選での敗北を回避する戦略が話し合われており、そこでボルソナロ氏は「権力を維持するための方策」を発動するよう要請しています。この他に連邦警察は、自由党(PL)本部のボルソナロ氏の執務室で、包囲状態の布告と国内の法と秩序の保証の賦課を発表するクーデターの内容を含む文書を発見しており、同ビデオはクーデター関与を補足するものになりました。

 捜査当局は、ボルソナロ氏のクーデターを巡る会議の発言で、「これほど密接に関与していることが明らかになり、捜査は前例のない段階に達している」としています。 一方、前大統領の支持者らは、大統領はクーデターを望んでいるとは具体的には言っていない、と主張しています。

 また、連邦警察は、ロドリゴパチェコ連邦議会議長の逮捕に加え、連邦最高裁判所のアレクサンドル・デ・モラエス判事とジルマール・メンデス長官の逮捕を規定したクーデター草案を発見しています。 この草案には新たな選挙の実施も規定されていました。 警察は、ボルソナロ氏が政権を離れる直前の2022年11月と12月、草案について話し合うボルソナロ氏協力者の会話も入手しています。

ブラジルで企業爆破事件の桐島聡容疑者の死亡を報道

 1974〜75年に起きた連続企業爆破事件で指名手配されていた桐島聡容疑者(70)を名乗る男が29日、入院先の病院で死亡しましたが、このテロリストの死亡に関してブラジルのメディアも3日付で報じています。記事によると、50年間逃亡し続けた桐島容疑者は、最後は本名で埋葬されたいと警察に正体を明かした、としています。

 日本の警察は2日、男性が死の床で警察に対し「自分は指名手配されている逃亡者の一人で、1970年代に爆弾テロを行った過激派グループの一員として50年近くも裁判を逃れてきた」と供述したと発表しました。警察は先週、末期がんを患っている70歳の男性を事情聴取するため東京近郊の病院を訪れ、男から「ペンネームではなく本名の桐島聡で死にたい」との供述を得たということです。

 病床で男は襲撃に関する知られていない事実について詳細に述べたことから、警察は、男は東アジア反日武装戦線と呼ばれる過激派グループ10人のメンバーの一人で、逃亡していた人物と考えています。調べによると桐島容疑者は逃亡中、発覚を恐れ内田洋という偽名を使い、携帯電話や生命保険にも加入せず、給料も現金で受け取っていました。

 男性は取り調べから4日後の29日に死亡しました。日本のメディアによると、死亡した男は、死後に容疑者とその家族のDNA検査が一致したことから、逃亡犯であることが確認されました。桐島聡容疑者は1954年生まれ、東京の大学に在学中に過激派活動に参加し、1970年代に日本の大手企業に連続爆弾テロを行った過激派組織、東アジア反日武装戦線のメンバーとして活動していました。

ブラジルでデング熱が猛威

 ブラジルでは2024年に入ってデング熱の症例が爆発的に増加しています。ブラジルのメディアによると、保健省は、 30日の時点でデング熱の症例数が 217,481 人とは発表しました。 昨年同時期には65,366 人でしたから、233% の増加になります。増加の原因は厳しい暑さと豪雨の組み合わせ、デング熱ウイルスの血清型3および4が再流行していることが挙げられています。

 デング熱はアルボウイルスと呼ばれるグループの一部で、雌のネッタイシマカに刺されることによって伝播します。高齢者や糖尿病や高血圧などの慢性疾患を患っている人は、死に至る場合や合併症を発症するリスクが高くなります。感染しても常に症状が現れるわけではなく、無症候性の場合もあります。

 ただ、突然発症し高熱 (39 ℃ ~ 40 ℃) を出し、激しい頭痛、目の奥の痛み、筋肉痛と関節痛、吐き気と嘔吐、体に赤い斑点が現れたりします。この場合は、適切な診断と治療を受けるために医療機関を受診することが重要です。感染症専門家は「大多数の人はこの病気の古い型を患っていますが、中にはデング出血熱につながる可能性のある重篤なウイルスに感染している人もいます」と医療機関の受診を勧めます。

 予防策はデング熱を媒介するネッタイシマカの発生場所を作らないことです。蚊は古い貯水池、水槽、屋外プール、ボトルのキャップ、植木鉢などで繁殖します。保健省は、こうしたところを常に清潔にしておくことが大切と広報しています。

サンパウロ市と裁判所が中絶をめぐり論争

 ブラジルのメディアによると、サンパウロ市が市立病院の患者の医療記録データを違法にコピーしたとして問題視されています。同市保健局は、市立病院で合法的中絶を受けた患者の医療記録の調査を認め、「手術手続きが適正に行われているかどうかを調べている」と説明しています。

 サンパウロ市は2023年12月以降、現場での手術能力を高めるという理由で調査と同時に手術を停止しています。この停止にサンパウロ裁判所は29日、合​​法的中絶を再開するよう3度目の命令を出しましたが、サンパウロ市は無視して再開していません。

 市のルイス・カルロス・ザマルコ保健長官は、正式な手続きで手術が行われているかを確認するために医療記録をコピーした」と述べ、「ここ事務局には、不正が疑われる医療記録をチェックする権限を持っている」と反論しました。同市のリカルド・ヌネス市長も30日、 「調査をどこで行うかを決定するのは裁判官事務所ではない」と主張しています。

 専門家は、患者のデータは患者の許可や裁判所命令なしには秘匿されるべきで、個人データのコピーは違法と指摘します。ヴァルガス研究所のエロイーザ教授は「行政当局や政治家には、医療記録にアクセスするいかなる特権もない。裁判所命令や患者の許可がない場合、医療監督者も、情報にアクセス出来ない」と指摘します。

 問題となっている合​​法的中絶とは、ブラジルの法律によって認可された中絶処置で、統一医療システムによって無料で提供されます。 妊娠が強姦の結果である場合、妊婦の生命に危険がある場合、胎児無脳症と診断された場合などに許可されます。

アルゼンチン新政権、少数与党で苦境

 急激な改革で150万人が全国ストライキを起こすなど揺れるアルゼンチンで、ハビエル・ミレイ大統領は少数与党の悲哀を味わっています。ブラジルのメディアによると、アルゼンチン政府は増税から民営化に至る包括的な改革案をパッケージしたオムニバス法から財政関係を削除、新たに議会の承認を求めるとしてます。

 アルゼンチンのルイス・カプト経済大臣が26日、ブエノスアイレスでの記者会見で「オムニバス法から財政章を削除することを決定した」と発表しました。削除理由を経済大臣は「議会での承認を促進し加速するため」と説明しました。同法案には知事や野党議員らの反対が強く、上下両院で少数派である与党は、修正せざる得ない状況に追い込まれていました。

 削除されたのは、年金計算の改革、未申告資産の外部化、増税などを含む財政部分です。カプト経済相は「これは決して財政均衡達成への取り組みや赤字ゼロという目標を放棄するという意味ではない」と強調、「削除しても赤字ゼロ目標の達成に失敗することはない。削除は法律の最も重要な部分の承認を促進するためだ」と述べました。

 12月に就任した自由主義者のミレイ大統領は、世界で最も高いインフレ率と40%を超える貧困者を抱える国の経済を立て直そうとしています。カプト経済相は、2023年のインフレ率が200%を超えた後、過去2週間で物価上昇は「著しく」減少したと述べています。