中南米の最新情報

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サンパウロ南部のファベーラで抗争激化

 サンパウロ南部で元警察官で結成された民兵組織と麻薬組織が抗争、民兵組織のメンバーが殺害され、警察が調査しています。ブラジルのメディア22日付によると、この対立で今年3月から7月にかけ、すでに5人の死者が出ています。

 これまでサンパウロのカンポ・リンポなどのファベーラ(スラム街)は1990年代から麻薬組織のPCCが統治しており、リオデジャネイロと違って民兵組織(元警察官で組織)と麻薬組織の対立は見られませんでした。ところが、民兵組織が麻薬組織の支配するサンパウロ南部地区のファベーラに手を出し始めたことで、両組織間の抗争が激しくなりました。

 抗争で死者が出たことで警察は、事件の捜査を行っており、これまでに4人の容疑者を起訴し、他に2人を予防的に逮捕しています。捜査は今も続けられ、逮捕者は増加する見込みです。

ペルー議会、総選挙前倒し案を今回は可決

 ブラジルのメディアによると、ペルー議会は20日、失脚したペドロ・カスティーヨ前大統領によるクーデターの失敗後に発生した混乱を緩和するため、総選挙を2026年から2024年に前倒しすることを承認しました。同議会は16日に2026年4月から2023年12月に選挙を前倒しする案を否決していましたが、今回は2024年4月に実施する安に変更したことで承認されました。

 議会の評決は前倒し賛成93票、反対30票、棄権1票でした。今回承認されたのは、世論調査で大多数の国民が選挙の前倒しに賛成していること、米州人権委員会代表団が訪問していること、多発するデモで21人の死者が出ていること、選挙が前回案より4カ月先送りされたこと、混乱を早期に収める必要があることなどが考慮され、議決に至ったようです。

 世論調査によると、国民の83%が選挙の前倒しに賛成し、国家選挙審査委員会は2023年12月には選挙を行える状態にあると表明し、議決の後押しをしました。選挙前倒しが決まったことで、各空港の活動が徐々に再開し、閉鎖されていたマチュピチュ観光も再開、国内は平静を取り戻しつつあります。

 カスティーヨ前大統領はメキシコ大使館に亡命しようとしましたが、その前に反乱罪で逮捕、拘束されました。

ブエノスアイレス市は優勝祝賀で負傷者350人が出る騒ぎ

 W杯カタール大会で18日にアルゼンチンがフランスを破って優勝しました。その日以降アルゼンチン国内では優勝を祝う混乱が続いています。ブラジルのメディアによると、選手団が帰国した20日は選手を乗せたバスが通過するのを見ようと電柱、橋、屋根、木、信号機などに上り、転落する人が出る騒ぎになりました。中には選手団の乗ったバスの上に落下する人まで現れたといいます。

 救急隊によると、この騒ぎで首都ブエノスアイレス市では18日以降、市内で350人近くの負傷者が出ています。選手団が帰国した20日だけで340人以上の負傷者が出ました。そのうち8人は腕や脚を骨折する重傷といわれます。SNSで公開された動画には落下する人たちの様子が映し出されています。

 選手団はオープントップバスブエノスアイレスの街中をパレードしながら移動する予定でしたが、押し寄せたファンで身動きが取れなくなり、警察がヘリコプターで選手立ちを移動させました。選手たちはバスからヘリコプターに乗り移り、市内を飛行したのです。大統領府報道官がツイッターに、「落ち着いて愛と賞賛を示し、祝いましょう」と書き込むほどでした。  

 選手たちがブエノスアイレス中心部をパレードしなかったことにファンは落胆しましたが、街頭では勝利を祝う声は絶えませんでした。ファンの1人は「警備陣はアルゼンチン人のサッカーに対する思いを甘く見ていた。しっかりと組織的な警備をしていたら、こんな混乱は起きなかった」と嘆いていました。

ブラジル教育大臣にカミーロ・サンタナ元知事

 ブラジルのメディアによると、ルーラ次期大統領は19日、セアラ州の元知事で次期上院議員のカミーロ・サンタナ氏を教育大臣に任命することを決定しました。財務大臣に就任が予定されているハダッド氏、セアラ州フレイタス次期知事らが出席したブラジリアでの会合で決まりました。

 先週、ルーラ氏がカミーロ氏を招いたことから、教育大臣就任が予想されていました。当初、教育大臣にはイゾル州知事が検討されていました.しかし、カミーロ氏がボルソナロ支持派や上院議員の支持を得られやすいと判断しと思われます。

ブラジル大統領公邸で新主人を迎える準備が進む

 ブラジルのメディアによると、大統領府公邸にはボルソナロ大統領とその家族が住んでいますが、ルーラ新大統領の就任まで2週間となり、17日には公邸前に引っ越し用のトラックが横付けされるなど、公邸では清掃と改修(塗装など)が行われ始め、新しい主を迎える準備が進められています。

 今のところ、ボルソナロ大統領がいつ大統領府公邸を引き払うかは明言していません。そのためルーラ氏の公邸入居も未定です。ゲデス経済大臣は「16日に大統領はリオデジャネイロへ退去した。もう、ブラジリアには戻らない」と語りました。同大臣も「リオデジャネイロに出張して仕事を済ませ、政府の最後の日まで働く」と強調しました。

 大統領公邸はオスカー・ニーマイヤーが設計し、ブラジリアで初めて石造りで建設され、1958年6月に落成式が行われました。地下には30人収容の講堂、ゲームルーム、倉庫、パントリー、キッチン、ランドリー、管理室があります。1階は大統領が公式行事に使用するホール、住居部分(4つのスイートルームと団欒等の部屋)があります。最初に住んだのはクビチェク大統領でした。

ペルー新政権の混乱収束案を議会が否決

 ブラジルのメディアによると、ペルー議会は16日、2026年4月から2023年12月に選挙を前倒し、国内の混乱を収束しようとするディナ・ボルアルテ新大統領の提案を否決しました。決議には87票の賛成が必要でしたが、公式集計で賛成49票、反対33票、棄権25票でした。

 ペルーでは、ペドロ・カスティーヨ前大統領が議会を解散し、政令で統治しようとしたため、議会が同氏を追放し、司法当局が逮捕しました。これに抗議するデモが全国で起き、それを制止しようとする警察と衝突、デモ隊に死者が出るに及んで、道路封鎖やタイヤの焼き捨てといった暴力的なデモに変化しました。とくにアンデス地方や北部の都市を中心に激しいデモが起きています。

 同国第2の都市アレキッパの空港では、数百人のデモ隊が滑走路を一時的に封鎖、クスコ市とインカの城塞都市マチュピチュを結ぶ列車は運休、普通の道路の封鎖、農民組合と先住民組合の無期限ストとデモは拡大し、メキシコ、アルゼンチン、コロンビア、ボリビアの各政権がカスティーヨ支持を表明するなど、混乱は収束の気配が見えません。このため政府は全国に30日間の非常事態宣言を発令しました。

 この混乱収束のためボルアルテ新大統領はデモ隊が要求する新しい選挙を前倒しで実施する案を議会に提案する一方、ペドロ・アングロ元検察官をトップに、19の省庁に8人の女性を含む官僚を配置した新内閣を提示しています。米国は「ペルーは民主主義が安定している」と評価し、ボルアルテ政権への協力を約束しています。

ペルーのカスティーヨ前大統領を18カ月間予防拘禁

 ブラジルのメディアによると、ペルーの最高裁判所は15日、同国のペドロ・カスティーヨ前大統領の予防拘禁は少なくとも18カ月間継続するという判決を下しました。この間、当局は、カスティーヨ前大統領の弾劾と逮捕につながった「クーデター未遂事件」を調査する予定です。

 今回の判決は、カスティーヨ氏の反乱罪の是非には触れず、カスティーヨ氏の容疑について検察が捜査を行う間、拘束するかどうかだけを判断したとされています。カストロ判事は、議会がペルーの大統領が刑事責任を問われない特権をカスティーヨ氏から剥奪した後、当初数日間だけだった拘束の延長を発表しました。

 この判決にカスティーヨ氏の弁護団は、「最低限の保証」を欠いているとして、15日の審理への出席を拒否しました。カスティーヨ氏の弁護団は公選弁護人です。

駐ブラジル米国大使にエリザベス・バグレー氏

 ブラジルのメディアによると、米国上院は14日、駐ブラジル新大使にエリザベス・バグレー氏を承認しました。米国政府は1月、バグリー氏を指名していましたが、12月になって米国上院で正式に承認されたものです。6月の米上院外交委員会では、過去のバグリー氏の発言が「反ユダヤ主義的」と問題視され、却下されていました。

 今回の承認は、バグリー氏が「あの発言は間違っていた。今は違う考えだ」と訂正して承認に漕ぎ着けました。

 上院への提出資料によると、新大使のバグリー氏は国務省で20年以上の外交官の経験を積み、イスラエルとエジプトの和平を成立させたキャンプデービッド合意で補佐役を務めていました。ビル・クリントン米大統領時代には駐ポルトガル大使を務め、マドレーン・オルブライト国務長官のアドバイザーを務めていたこともあります。

収束しそうもないペルーの混乱

 ブラジルのメディアによると、ペルーの司法当局は13日、反乱と陰謀の罪でカスティーヨ前大統領を起訴し、カスティーヨ氏はリマ警察に留置していると発表しました。被告の弁護側は7日間の公判前勾留期間満了前の釈放を求めましたが、当局は「根拠がない」と判断し却下しました。

 ペルーではカスティーヨ氏の逮捕以降、それに抗議するデモが相次いでいます。首都リマの街中は火災の煙と催涙ガスが溢れ、この1週間で少なくとも7人が死亡しました。

 ペルーは、21世紀におけるラテンアメリカ経済のスターであり、力強い経済成長により何百万人もの人々が貧困から脱却しました。しかし、格付け会社が格下げを警告し、世界第2位の銅生産を誇る主要鉱山が発掘停止になるなど、抗議者が議会野解散とボルアルテ新大統領の辞任を要求、政治の混乱が深まるばかりです。

 ペルーは、過去5年間に6人の大統領が誕生し7回の弾劾が試みられたことでも判るように、絶え間ない政治的内紛に晒されてきました。有権者はこの混乱に辟易しているといわれます。米州評議会と米州協会のファーンズワース副会長は、「ペルーの人々は、あらゆる政治的駆け引き、犯罪、不安、成長の停滞に疲れ果てている」と指摘しています。

 同氏は、「2024年4月に早期選挙を実施するというボルアルト大統領の提案は、短期的には緊張の緩和に役立つかもしれないが、有権者の分裂や行政と議会の内部紛争に根ざした問題の解決にはならない」と指摘し、「弱い大統領、機能不全の議会、正当な解任に対して民衆の抵抗を生み出そうとする追放された大統領、激昂する国民、この混乱から抜け出すためのビジョンを誰も持っていない」と説明します。

 ペルーの憲法では、議会の不満が弾劾に発展することは比較的簡単といわれます。一方、有力政党がないため(最大政党の人民軍は130議席中24議席を占めるのみ)、政党間の話し合いはそれほど大きな影響力がありません。また、汚職もたびたび問題になっています。

 こういった事情から、多くのペルー人は、自分たちの声を届けるには路上でのデモしかないと思っています。ここ数日、デモ隊は道路を封鎖し、火を放ち、空港を占拠するという過激さです。これに対し取り締まる警察は、銃器や催涙ガスを使用していると人権団体から批判を受けています。

 カスティーヨ氏は、人気は低いが地方に支持基盤があり、昨年の厳しい選挙を勝ち抜きました。彼は、反乱と陰謀の容疑で捜査されている間、収容されている刑務所から国民に支持を呼びかけています。12日には、ボルアルテ大統領を「簒奪者」と呼び、ペルーの国民に向けた手紙で、自分がまだ国の正当な指導者であると主張し、「国民は、新しい選挙という彼らの汚いゲームに引っかかってはならない」と付け加えています。

 ボルアルテ大統領は、国の平穏を求め、全員参加の政府を約束していますが、彼女の前途には厳しい現実が待ち構えているようです。

アルゼンチンがクロアチアと今夜激闘

 サッカーW杯カタール大会の準決勝第1戦アルゼンチン対クロアチア戦が13日、ルセールスタジアムで行われます。ブラジルのメディアは、この大会でW杯に別れを告げるとしているメッシ選手の活躍に注目したいとしています。

 クロアチアカタール大会で、5試合中1勝しかしていません。1次リーグではモロッコにリードされ、アフリカ勢、ベルギー勢とは0-0で引き分けました。カナダを4-1で破り決勝ランドに進みましたが、決勝ラウンド第一戦では日本と120分戦った末に1-1の引き分けで、PK戦でどうにか日本を退けました。準々決勝でも優勝候補のブラジルとPK戦になり、どうにか勝ちを拾いました。今のところクロアチアは勝ち運に恵まれているといえましょう。

 一方、アルゼンチンは開幕戦のサウジアラビア戦で敗れましたが、メキシコとポーランドを撃破、グループ1位で決勝ラウンドに進出しました。決勝ラウンドの初戦ではオーストラリアを苦もなく倒したものの、準々決勝のオランダ戦で2-0とリードしながら土壇場で同点弾を許し、PK戦にもつれこむドタバタぶり。結果的には勝利をもぎ取りました。

 この2チームが決勝戦を目指し、覇を競うことになります。どちらもバランスの取れたチームで、勝利の女神がどちらに微笑むかは予測がつきません。過去のW杯での対戦を見ても、最近では1勝1敗で、まさに好敵手といったところです。