中南米の最新情報

NPOチャレンジブラジルが、ブラジルを中心に中南米のニュースをお届けします。

ペルーの新大統領、総選挙の2年前倒しを表明

 ペルーのペドロ・カスティーヨ大統領が失脚後、女性として初の大統領に就任したディナ・ボルアルテ前副大統領が12日、カスティーヨ氏退陣でアンデス地方が騒然としてきたこともあり、総選挙を2年前倒しして2024年4月に実施する法案を議会に提出すると発表しました。ブラジルのメディアが報じています。

 ボルアルテ新大統領は、「私は、総選挙を2024年4月に前倒しすることで議会と合意するための法案を提出することを決意した」と国民向けの演説で述べました。ペルーでは11日、カスティーヨ氏退陣に伴って総選挙を求める抗議デモが起き、2人の若者が死亡、4人が負傷しました。このデモを受け新大統領は「近日中に」法案を提出すると表明したものです。

 デモ隊の多くはカスティーヨ氏の支持者で、ボルアルテ氏の政権維持を認めず、数日前から「選挙を実施せよ」とデモをしていました。また、デモ参加者の一部には、議会の閉鎖を要求する者もいました。

 カスティーヨ前大統領は弾劾を回避しようと議会の解散工作を行い、最高裁はこの工作を「クーデター」と認定、議会の弾劾決議を受け、身柄拘束を命じていました。

石油の恩恵でベネズエラ経済が復活

 ブラジルのメディア10日付けによると、10年近く停滞していたベネズエラ経済が復活、ラテンアメリカで最も経済成長率の高い国のひとつになると予想されています。ラテンアメリカカリブ海経済委員会(ECLAC)が発表したもので、ベネズエラ経済は今年12%、来年は5%の成長を遂げるとしています。

 同委員会は、ベネズエラ経済拡大の理由に2022年の原油生産量が2021年比で約20%増加することと原油価格の上昇を挙げています。ちなみに同委員会は、ブラジル経済の今年の成長率は2.6%、2023年は1%と予想しています、一方、アルゼンチンの経済は、今年は3.9%、来年は1%の成長と予測しています。

 ベネズエラの経済拡大を上回る成長を期待されているのが、膨大な量の石油が発見されたガイアナです。同委員会はガイアナの成長を2022年には52%、2023年には30%の伸びと予測しています。ガイアナの石油掘削の歴史は新しく、ここ2年間のGDPの大幅な増加は石油の新規発見が寄与しています。

 世界有数の石油埋蔵量を誇るベネズエラよりもガイアナが高い成長率なのは、人口規模の違いです。ベネズエラの人口は約2,850万人ですが、ガイアナは100万人に届かない約80万人の人口に過ぎません。委員会はこの違いが成長率の差になっていると指摘しています。

 ベネズエラは米国などから経済制裁を受けていますが、米国はシェブロン社に対し、3年ぶりにベネズエラの石油生産と輸出事業を再開することを許可するなど制裁緩和に出ています。ベネズエラマドゥロ政権と野党が対話再開したことを受けて行ったものです。

敗戦で沈むサッカーのブラジル代表

 サッカーW杯カタールで9日、ブラジルはクロアチアにまさかの逆転負けしました。延長戦に入りネイマール選手が見事な足技でゴールへボールをたたき込み、これで誰しもが「勝負あった」と思ったに違いありません。ところがその後、クロアチアが同点ゴールを入れPK戦に持ち込みました。それでもPK戦でブラジルが負けるとは、誰もが予想しなかったはずです。

 しかし、ブラジルは負けました。ブラジルのメディアは、各選手に敗戦の弁を語らせています。選手たちはロッカールームで沈んでいました。キャプテンのチアゴ選手は「もう少し集中できたはずだ。私たちはこのような反撃を受けることに慣れていなく、少し混乱し、セカンドボールを失い、反撃を許した」と嘆きました。

 ほとんどの人が悔し涙を流している中、カゼミーロ選手は「勝利を逃してしまった。難しい瞬間だった」と敗戦について語りました。ネイマール選手は「今、この瞬間を語るのは難しい。私たちは団結力のあるグループで、幸せで満足していたが、今日は悲しい日だった」と選手全員の気持ちを代表していました。

 ブラジルを代表するネイマール選手は2010年8月からブラジル代表として活躍しています。30歳にして3度目のワールドカップ出場を果たしたばかりで、今後もブラジル代表としてプレーするかどうかについて、「正直なところ、わからない。今話すのはまずいと思う。頭が熱くなっていて、考えがまとまらない。これで終わりとは断言できない」」と語りました

国民の半数が期待するルーラ次期政権

 ブラジルのメディアによると、世論調査研究所のアイペックが8日、ルーラ次期政権に対する期待について調査し発表しました。それによると、素晴らしい、良い政権になると思う人が50%、ひどい政権になると思う人が25%、規則正しいものになると回答したのが20%でした。国民の半数はルーラ次期大統領に期待しています。

 調査は1日から5日にかけ、全国126都市の2,000人を対象に行われました。調査結果は以下の通りです。
 素晴らしい:18
 良好:32%
 普通: 20%
 悪い:7%
 非常に悪い:18
 わからない・無回答:5%

 アイペックは、ボルソナロ政権に対する評価についても尋ねています。結果は素晴らしい、良いが39%、悪い、ひどいが36%でした。

 さらに、ルーラ政権移行チームがこれまで発表し、計画していることについて方向性は正しいか、間違っているか、を尋ねたところ、結果は次のようになりました。
 正しい方向に進んでいる:58%
 間違った方向に進んでいる:33%
 わからない・無回答:9%                        

 このほか、「ルーラ新政権は、過去の就任期間と比較して、どのようになると思うか」という質問には、より良い45%、イコール22%、悪い26%、わからない・無回答6%でした。

ペルー議会、カスティーヨ大統領を解任

 ブラジルのメディアによると、ペルーのペドロ・カスティーヨ大統領は7日、同国議会を解散しようとしましたが、議会が反発、大統領の解任決議を採決、解任しました。その後、大統領は「クーデターを起こした」として逮捕されました。最高裁判所は後任にボルアルテ副大統領を指名、議会も承認しました。

 カスティーヨ大統領は2021年、わずかな票差でアルベルト・フジモリ元大統領の娘ケイコ・フジモリ氏を破り、大統領の座につきました。敗れたフジモリ氏は選挙結果を問うために選挙裁判所に訴え、カスティーヨ支持者とフジモリ支持者双方がデモが起こす騒ぎになりました。フジモリ氏が選挙の結果を受け入れたのは、決選投票が終わってから1カ月以上経ってからでした。

 カスティーヨ大統領は選挙期間中に、「議員が自分の計画を受け入れなければ、議会を閉鎖する」と脅すような発言をして物議を醸し、議会の反感を買っていました。野党が多数を占める議会では、就任後2カ月で首相を始め閣僚全員が辞任するという最初の政権危機が訪れました。

 そして2021年12月、カスティーヨ大統領は最初の弾劾請求案を上程されましたが、この時は解任は拒否されました。これまでに3回弾劾請求が出され、7日の3回目で、政権を維持するための「道徳的能力がなく、政権の方向性が欠如している」と非難され。解任が決議されました。

 大統領は非常事態を宣言し、新たな政府を発足させると対抗策を講じようとしましたが、軍隊も大統領を支持せず、最高裁判所もカスティーヨ大統領の動きをクーデターと断じ、副大統領を新大統領に指名、議会も承認しました。ペルー検察庁は、「議会閉鎖は憲法違反で、法的措置を講じる」と発表し、カスティーヨ大統領が大統領府を出たところでペルー警察が逮捕しました。

 大統領に就任するボルアルテ副大統領は「カスティーヨ大統領が議会閉鎖という憲法違反を実行する決定をしたことを容認しない。これはクーデターであり、ペルー社会が法律を厳守して乗り越えなければならない政治的・制度的危機を悪化させるものだ」とツイッターで表明しています。

 ディナ・ボルアルテ氏は、女性初のペルー大統領です。

W杯でブラジルチーム、ペレ氏に敬意を表する横断幕

 ブラジルのメディアによると、決勝トーナメントが行われているW杯カタール大会で5日、ブラジルが韓国を4-1で破り準々決勝に駒を進めました。次回の対戦相手は日本を破ったクロアチアです。

 韓国戦では前半で4ゴールを奪う鮮やかさで、ブラジルの強さが際立ちました。勝利が決定的となった時点でティテ監督は、怪我から復帰したダニーロネイマール両選手を外す余裕を見せました。

 試合終了後ブラジルチームは、ピッチ上に入院中の元サッカー選手ペレ氏に敬意を表する横断幕を掲げました。そこには「私たちをとても幸せにしてくれた」と書かれ、ペレ氏も「愛のメッセージの一つひとつが、私のエネルギーになる」と応じたといいます。

ペレ氏の家族が健康状態について「問題ない」と語る

 ブラジルのメディアによると、29日から元サッカー選手のペレ氏は呼吸器感染症の治療でサンパウロ市の病院に入院、治療していますが、このニュースは、W杯開催中のカタールでも大きな反響を呼びました。

 ペレ氏の容体について同氏の家族は「ICU にも入っていないし、普通の病室にいるので、今のところ何の危険もない」と話しました。これは、ペレ入院を知ったファンがSNSで「安らかに眠ってください」といった記述を多く寄せているのを気にかけ、それに回答する意味で語ったものです。家族は「いつかはやってくることだが、今日ではない」とも付け加えています。

 病院側も「ペレの健康状態は安定しており、感染症への反応も良好」としています。ペレ氏は3週間前に新型コロナに感染しましたが、家族は今回入院したのは「ワクチンは接種していたが、癌治療の薬や化学療法で体が弱っており、肺に感染症を起こしたためだ」と語り、経過は良好としています。

入院中のペレ氏の健康は安定

 ブラジルのメディアによると、サンパウロ市の病院に入院している元サッカー選手のペレ氏(82歳)は3日、インスタグラムに投稿、「世界中から届く皆さんからの愛のメッセージの一つひとつが、私のエネルギーになっている。W杯のブラジル戦も観戦した」とファンに安心するよう呼びかけました。

 ペレ氏は29日から入院、治療を続けています。病院によると、入院は呼吸器感染症のためで、健康状態は安定しているとのことです。現在は「抗生物質を投与し、感染症を治療している」ところで、担当医は「治療では良い反応が見られる」としています。ペレ氏は2021年9月に大腸腫瘍に対する化学療法の再評価で入院したことがあります。

 ブラジル敗戦直後の花火でコパカバーナで火災

 ブラジルのメディアによると、有名なリオデジャネイロコパカバーナの森林地帯で2日午後、火災が起きました。夜に入っても炎は収まっていませんが、負傷者はいない模様です。通報を受けた消防署は6台の車両を出動させ、コパカバーナ地区の軍人も消火作業に当たっています。

 住民は「カメルーンチームがブラジルに1ー0で勝利した際のゴール後に打ち上げられた花火で火の手が上がった」と説明しています。昼過ぎから夕方にかけて、コパカバーナ、レメ、イパネマなどの地域から火災の様子を見ることができました。一部の通りはこの火災で通行止めになりました。

ルーラ氏、年内に米国、アルゼンチンを訪問か

 ブラジルのメディアによると、ルーラ新政権で財務大臣就任が有力視されているフェルナンド・ハダド氏が30日、ルーラ次期大統領は年内に訪米し、バイデン米国大統領と会談すると語りました。同氏によると、ルーラ氏は多くの有力国から招待を受けているが、年内は「米国とアルゼンチンを訪問することになるだろう」と指摘しました。

 ルーラ氏は選挙後、エジプトでのCOP27に出席し、その後ポルトガルを訪問するなど外交活動を活発に行っています。米国安全保障顧問も来週ブラジルにやってきて、ルーラ氏やボルソナロ大統領との会談が予定されています。

 ハダド氏は「多くの国から招待を受け、ルーラ氏は対面するか、あるいはバーチャルで対話をすることになる。世界の大国と対話をして年を越すことになると思う」と述べました。また、同氏は、「中国から年末に来ないかと招待を受けている」と明かし、「しかし、年内は米国とアルゼンチン訪問が予定されており、時間はなさそうだ」としています。

 アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領は、南米左派のリーダーの一人で、決選投票で勝利したルーラ氏をサンパウロまで訪ねて来ています。また、バイデン大統領とルーラ氏は、ルーラ氏当選翌日に電話で会談しています。バイデン氏は電話会談で、「自由で公正かつ信頼できる選挙を行ったブラジルの民主主義制度の強さを賞賛した」とされています。

 年内に予定される米国との会談では、「アマゾンの保護やウクライナ戦争とブラジルの関係などが話題になりそうだ」と米国の会談担当者は述べています。