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収束しそうもないペルーの混乱

 ブラジルのメディアによると、ペルーの司法当局は13日、反乱と陰謀の罪でカスティーヨ前大統領を起訴し、カスティーヨ氏はリマ警察に留置していると発表しました。被告の弁護側は7日間の公判前勾留期間満了前の釈放を求めましたが、当局は「根拠がない」と判断し却下しました。

 ペルーではカスティーヨ氏の逮捕以降、それに抗議するデモが相次いでいます。首都リマの街中は火災の煙と催涙ガスが溢れ、この1週間で少なくとも7人が死亡しました。

 ペルーは、21世紀におけるラテンアメリカ経済のスターであり、力強い経済成長により何百万人もの人々が貧困から脱却しました。しかし、格付け会社が格下げを警告し、世界第2位の銅生産を誇る主要鉱山が発掘停止になるなど、抗議者が議会野解散とボルアルテ新大統領の辞任を要求、政治の混乱が深まるばかりです。

 ペルーは、過去5年間に6人の大統領が誕生し7回の弾劾が試みられたことでも判るように、絶え間ない政治的内紛に晒されてきました。有権者はこの混乱に辟易しているといわれます。米州評議会と米州協会のファーンズワース副会長は、「ペルーの人々は、あらゆる政治的駆け引き、犯罪、不安、成長の停滞に疲れ果てている」と指摘しています。

 同氏は、「2024年4月に早期選挙を実施するというボルアルト大統領の提案は、短期的には緊張の緩和に役立つかもしれないが、有権者の分裂や行政と議会の内部紛争に根ざした問題の解決にはならない」と指摘し、「弱い大統領、機能不全の議会、正当な解任に対して民衆の抵抗を生み出そうとする追放された大統領、激昂する国民、この混乱から抜け出すためのビジョンを誰も持っていない」と説明します。

 ペルーの憲法では、議会の不満が弾劾に発展することは比較的簡単といわれます。一方、有力政党がないため(最大政党の人民軍は130議席中24議席を占めるのみ)、政党間の話し合いはそれほど大きな影響力がありません。また、汚職もたびたび問題になっています。

 こういった事情から、多くのペルー人は、自分たちの声を届けるには路上でのデモしかないと思っています。ここ数日、デモ隊は道路を封鎖し、火を放ち、空港を占拠するという過激さです。これに対し取り締まる警察は、銃器や催涙ガスを使用していると人権団体から批判を受けています。

 カスティーヨ氏は、人気は低いが地方に支持基盤があり、昨年の厳しい選挙を勝ち抜きました。彼は、反乱と陰謀の容疑で捜査されている間、収容されている刑務所から国民に支持を呼びかけています。12日には、ボルアルテ大統領を「簒奪者」と呼び、ペルーの国民に向けた手紙で、自分がまだ国の正当な指導者であると主張し、「国民は、新しい選挙という彼らの汚いゲームに引っかかってはならない」と付け加えています。

 ボルアルテ大統領は、国の平穏を求め、全員参加の政府を約束していますが、彼女の前途には厳しい現実が待ち構えているようです。