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領有権争いで矢継ぎ早に手を打つベネズエラ

 ベネズエラガイアナ両国の紛争になっているガイアナが支配するエセキボ地域を巡り、両国の対立はますますきな臭くなってきました。ブラジルのメディアによると、ベネズエラマドゥロ大統領が5日、ベネズエラ国会に「エセキボにベネズエラの州を創設する法律の制定を提案」し、国営企業にこの地域での石油探査のライセンスを与えるよう命じたためです。

 ガイアナは一連の紛争、特にベネズエラの一方的な国民投票の中止を求め国際司法裁判所に訴え、裁判所は国民投票中止の決定を命じましたが、国際司法裁判所は国家間の紛争を解決するための国連の機関でも、その決定を執行する方法がありません。このためベネズエラは裁判所の決定は国内問題への干渉で、憲法に違反しているとして、決定を無視する態度です。

 マドゥロ政権のエセキボ地域併合の主張は「諮問的国民投票で国民が下した決定を実行する」というもので、「ギアナ・エセキバ」(ベネズエラ人が領土に与える名称)を創設すると強調しています。同時に国営企業ペトロレオス・デ・ベネズエラに、ガス、石油、鉱業の試掘のライセンス付与を表明しました。この他マドゥロ政権はガイアナのエセキボ住民にIDカードを与えるともしています。

 ガイアナは石油のおかげで、近年最も急速に成長している南米の国です。しかし、ベネズエラガイアナの50倍の軍事力を持ち、大陸で最も装備の整った軍隊の1つと言われます。軍事力での対決となれば、ガイアナの劣勢は明らかです。ガイアナはその対抗策として、米軍の駐留を要求しています。

 はっきりしているのは、実行力の伴わない国際司法裁判所の決定では解決にならず、エセキバ地域の所有権の最終決定は、何年も先になりそうということです。