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アルゼンチン新大統領は選挙公約を実行に移せるか?

 アルゼンチンのハビエル・ミレイ新大統領はこれからの4年間、どのような政治を繰り広げるのか。現実的な自由主義か、それとも選挙中に超リベラルな右派政治家とアピールしたことを実行に移すのか、注目が集まっています。ブラジルのメディアによると、批判していた政治家の関係者を政権に取り込むなど、急進さを控える姿勢が見えるとしています。

 政権は右派のマウリシオ・マクリ政権の元メンバーと左派のアルベルト・フェルナンデス派両派で構成するチームづくりをしています。ミレイ大統領の政党「自由前進党」は下院の257議席のうち40議席、上院の72議席のうち7議席しかなく、議会の多数は野党のペロン主義政党で下院105人、上院で33人を占め、法案を通すには他の政党と協力関係を構築する必要があります。

 現在、下院でミレイ大統領と組みそうなのは、マウリシオ・マクリ前大統領の政党(40議席)と急進市民連合(35議席)両党です。こうした議会の状況を見て、サルミエント国立大学のセルジオ・モレシ教授は、「ミレイ氏は選挙運動中の言動を徐々に穏健化させているが、過激さはまだ維持している。伝統的右派と反体制右派は接近しつつある」と述べています。

 ミレイ大統領はよくボルソナロ前大統領に例えられますが、ボルソナロ氏は国軍で一貫した支持を得ており、経済界の一部も取り込んでいました。しかし、アルゼンチンの国軍はブラジルのような権力と影響力はなく、ミレイ氏は多くのビジネスマンに支持されてもいません。したがってミレイ氏は強力な政治力は発揮できないと見る専門家もいます。

 結果としてミレイ氏はいくつかの公約を放棄せざるを得ない、とも言われます。専門家は「ミレイ氏の支持者は強い心情的なもので支持しており、約束を実行できなかったとしても、彼を見放すことはない」と政策変更を認めると言います。例えば通貨のドル化政策ですが、ペソを廃止するのではなく、ドルの価値を基準にして契約を結ぶことを可能にし、ペソとドルの両貨幣の流通を認めるということにするのではないか、というのです。

 また、中央銀行閉鎖についてミレイ氏は、同行の金融市場規制機能に終止符を打ち、異なる通貨の流通と金融システムに介入せず、より自由な金融市場にすると説明していますが、専門家は「理想的すぎる政策で実行には疑問符がつく」と述べています。