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アルゼンチン新大統領の急進政策実行は難しい

 アルゼンチンの新大統領に19日、ハビエル・ミレイ候補が決定しました。ブラジルのメディアによると、ミレイ候補は超リベラルな経済学者で、選挙戦では急激に進むインフレ対策として、経済のドル化、ペソの放棄、中央銀行の閉鎖などの急進的な措置を掲げ当選しました。

 アルゼンチンは自国通貨の切り下げ、ドル準備の不足、債務、貧困の増加など深刻な経済危機に直面しており、これらへの対処が緊急課題です。選挙後の勝利演説では、経済のドル化、中央銀行の閉鎖には触れず、抜本的な対策が必要だと述べたのみでした。専門家の見立てでは、「ミレイ氏はアルゼンチン議会に基盤がないため、新政策を実行に移すのは難しい」と話しています。

 ミレイ新大統領の選挙時の公約の一つは、アルゼンチン経済のドル化でした。ドル化とは、アルゼンチン・ペソを放棄し、米ドルを国の公式通貨とすることです。エコノミストのフランシスコ・ペソア・ファリア氏は「実際、この問題で支持を得るのは非常に難しく、このことでミレイ氏に投票した人はがっかりするでしょう」と言います。

 ドル化は考えるほど簡単なことではなく、ドルを輸入するために米国造幣局の支援が必要です。さらに、それは連邦準備制度理事会(FRB、米国の中央銀行)の金利政策に依存し、10億ドルの対外債務とアルゼンチン中央銀行による国内為替レートのコントロールで減少した外貨準備不足で、国民のドル所持が制限されることになります。

 また、政府のドル化政策は民間の抵抗に合う可能性も高く、ビジネス競争力が無くなり、地元の観光産業が魅力を失う可能性もあります。サンパウロのブラジル資本市場研究所のアレクサンドル・ピレス教授は、「経済のドル化は難しいだろうが、ドル口座を持つことを認めるような解決策はまだ残る」と指摘します。

 ミレイ氏のもう一つの公約、中央銀行の閉鎖ですが、これを実行すればアルゼンチンは通貨主権を放棄し、ドルと米国中央銀行に依存することになります。アルゼンチンは金利や為替レートの問題を放棄し、財政支出のみで経済をコントロールすることになります。金利の引き上げや引き下げの決定は米国にあり、これではアルゼンチンの経済状況は考慮されません。この政策は物議を醸すことになり、この国の危機がさらに悪化する可能性もあります。

 この他ミレイ氏はメルコスールからの離脱、ブラジル、中国との関係断絶についても言及しています。専門家は、新大統領がこれらの提案を議会で通過させることの難しさを指摘し、実行すればインフレを悪化させ、失業率が上昇し、成長が鈍化するとみています。しかし、専門家は、こうした判断はまだ時期尚早で、新大統領が実際にどのように行動するかはこれからだとしています。