木川ロベルトさん(40、サンパウロ市出身)は社会貢献が認められ、シュワブ財団(本部スイス・ジュネーブ)の「第6回社会企業家ブラジル大賞」に輝きました。
受賞に至る源は、20年前、末期がんの父が木川さんに遺していった「患者の痛みがわかる医者になってほしい」という言葉にありました。当時木川さんは、まだ医学生でした。医大卒業後はしばらく外科医をしていたのですが、手の震えが出て外科医を辞め、シリオ・リバネーズ病院で末期患者の治療や内視鏡検査に従事していました。そうした診療をしながら、サンパウロ州内には医療が行き渡らない無医村のようなところが少なくないことを知りました。
木川さんは、「憲法で保障されている医療を万人に」という使命感から2年前、医療サービスが行き届きにくい小さな町をトラックで巡回、診療するという医療トラックを思いつきました。巡回診療の実現は簡単ではありませんでしたが、木川さんの考えに市や企業、地域コミュニティーが賛意を示し、応援してくれたことで巡回診療を目的とした「教育保健統合センター」を設立でき、医療トラックが実現したのです。