中南米の最新情報

NPOチャレンジブラジルが、ブラジルを中心に中南米のニュースをお届けします。

経営者と従業員、チップの配分で大喧嘩

 地元紙フォーリャ・デ・サンパウロが伝えるところによると、レストランやホテルが顧客から徴収するサービス料を従業員にも分配する「チップ法案」が6月16日に下院を通過、来月、上院でも審議が始まり、この法案が可決されるかどうかが注目を集めています。特に当事者であるサンパウロ市内の高級レストランの経営者と従業員はそれぞれ結束し、可決阻止、あるいは可決へ向けて議会での活発なロビー活動を展開しています。
 ホテルやレストランでのチップはこれまで、客が直接、従業員に手渡すのが通例。会計に含まれる10%のサービス料は、経営側の設備投資や税金の支払いなどに充てられ、従業員に分配されていませんでした。
 ルピ労働相が昨年9月、これは「労働者の権利に反する」として、サービス料の8割を従業員に分配し、残り2割が経営側の取り分とする「チップ法案」をルーラ大統領に提出しました。この法案は、従業員にとっては諸手を上げて賛成したい法案。が経営側にすれば、「チップは税金を払ったらほとんど残らない金」と経営の悪化を招く悪法と大反対です。
 このため経営側は、上院での審議に圧力をかけるため、ロビイストを雇い、結束して法案可決の阻止を図るために奔走を始めました。法案を下院に差し戻すため、下議75人の署名も集めたそうです。これに対して労組側も負けてはいません。同様にロビー活動を展開するとしています。さらに同法案は可決されても罰則規定がなく、チップの分配をするかどうかは雇用側の裁量に任されていることから、「これでは実施されない」と罰則の制定も求めています。
 直接実入りに関係する法案ということもあり、同法に対する労使の対立は平行線を辿り、今後一層、両者の対立は激化することが予測されています。