中南米の最新情報

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ベネズエラ現政権が自由選挙協定を無視

 ベネズエラマドゥロ政権は7月に実施される大統領選挙で自由選挙を実施する協定に署名しましたが、この協定を無視して野党候補の立候補を妨害しています。これにブラジルのルーラ政権は懸念を表明しました。ブラジルの懸念表明にマドゥロ政権は、「米国の指示によるもので、政治的現実についての深い無知に満ちた灰色で押し付けがましい声明を否定する」と反発しています。

 マドゥロ政権が署名した選挙協定はバルバドス協定と呼ばれるもので、マドゥロ政権と野党が民主的な選挙を実施するとした約束です。協定はノルウェーマドゥロ政権と野党間の交渉を仲介し、ブラジルの外交代表も協議に加わって10月、マドゥロ政権と野党が署名しました。

 ところが、野党10党が結集した民主統一綱領連合支援のコリーナ・ヨリス氏の立候補が妨害され、立候補が阻止されようとしているのです。最初の野党候補はマリア・コリーナ・マシャド氏でしたが、同氏が議員在職中に汚職で告発されたという理由(彼女は否定)で失格になり、その後継としてコリーナ・ヨリス氏が擁立されました。彼女の立候補登録が妨害されているのです。

 ブラジルは同協定署名に関与したこともあり、ブラジル政府はヨリス氏の立候補を阻止する理由はないと懸念を表明したもので、ブラジルの他に11か国(米国、アルゼンチン、コロンビア、チリ、エクアドルコスタリカグアテマラパラグアイ、ペルー、ドミニカ共和国ウルグアイ)も同調しています。
 
 国際監視団によると、ベネズエラは長年にわたって真に競争力のある選挙を行っていなく、頻繁に野党候補者の資格を剥奪しているとしています。マドゥロ政権は、いくつかの国からクリーンな選挙を実施するよう圧力をかけられ、米国は経済制裁を行っています。選挙が近づく中、マドゥロ政権は協定に従わない兆候を示し始めたと言えるようです。

ブラジル、フランス両大統領、ベネズエラ大統領選に懸念を表明

 ブラジルのメディアによると、ルーラ大統領28日、ブラジル訪問中のフランスのマクロン大統領歓迎式典で、「ベネズエラ大統領選(7月28日に選挙予定)で大統領反対派のコリーナ・ヨリス氏が立候補登録できなかったことは深刻である」と述べました。この発言にマクロン大統領も賛意を示し、「立候補を禁止された候補者に参加を許可するようマドゥロ大統領を説得するつもりだ」と語りました。

 ルーラ大統領はベネズエラマドゥロ大統領と会談した際、「ベネズエラが世界に正常な状態に戻ったことを示すことが重要」と指摘し、「そのためには民主的な選挙を保証することが不可欠だ」と強調したと言います。しかし、労働者党内には、コリーナ氏の登録拒否は何らかの圧力が加えられた、とする意見もあります。

 ルーラ大統領はベネズエラの今回の処置に、「裁判所から立候補を禁止された候補者(マリア・コリーナ・マシャド氏)が、後継者(コリーナ・ヨリス氏)を指名するという良い決断をした。これは重要な一歩だと思ったが、候補者が立候補登録されていなかった可能性があることは深刻だ」と述べたのです。

 コリーナ氏の登録拒否に懸念を見せた労働者党の党員は「彼女は裁判所で立候補を禁止されていない。コンピューターを使用しようとした彼女は、室内に入ることができなかったのではないか。それは彼女の立候補を阻止するためだったと思われる」としています。そう考える理由として党員は、「反対派を候補者にすることを禁止することについて、法的、政治的な説明がされていない」と指摘しています。

ブラジルで日銀の金利政策変更を報道

 ブラジルで日銀の金利政策の変更を報道しました。ブラジルのメディアが24日付で報じたもので、「日本銀行は19日、公定金利を-0.1%から0%~0.1%に引き上げると発表した。これまで日銀はデフレを回避するため、世界で唯一マイナス金利を続けていた」と金利政策の変更を報じています。

 日銀のマイナス金利政策の終焉で世界中の中央銀行と同じく、日本もインフレ抑制に舵を切ったことになります。これで日本は、インフレに苦しむ世界の中でマイナス金利を維持した最後の国になりました。

 日本のマイナス金利政策は、経済を刺激するためでしたが、マイナス金利でも物価の持続的な下落が続き、経済は何年も低成長でした。経済学者の多くは、経済が健全であれば価格は下落すべきではなく、むしろ緩やかに上昇すべきであるとしています。

 マイナス金利の導入は例外的な政策で、目的は貯蓄を犠牲にして投資と消費を促進し、金の回転を促進することにあります。ここに来て日本は円安(輸入品の価格上昇)、賃金上昇、石油や穀物の上昇の影響で1年以上も年間2%の物価上昇が続いています。日銀は、「好循環」が「より強固になった」として、マイナス金利政策変更に踏み切ったものです。

 世界のほとんどの国は近年、金融当局が経済のブレーキを踏み、金利を継続的に引き上げることを決定しています。これで日本も、ようやくアクセルから足を離すことになりました。これによって銀行は融資によってより多くの利益を得ることができますが、企業や個人は融資を受けるのがより困難になります。

 もっとも今回の利上げは僅かなもので、市場の穏やかな反応を見ると、専門家は利上げが経済に劇的な影響を与えるとは考えていないようです。

サッカーのロビーニョ選手が収監され、服役へ

 2013年にイタリアで起きた強姦事件の容疑者、サッカーで有名なロビーニョ選手(本名ロブソン・デ・ソウザ)が21日、ブラジルの高等司法裁判所特別法廷で有罪判決を受け逮捕、22日に収監されました。ブラジルのメディアによると、ロビーニョ選手は2022年1月19日にイタリアの裁判所で懲役9年の判決を受けており、ブラジルではそれを追認する形の判決になりました。

 ブラジルの法律では、海外で刑に服するブラジル出身者の引き渡しは禁止されています。イタリア政府は2月、 ロビーニョ選手が有罪判決を受けたことからブラジル連邦公共省に逮捕、収監を求める要請書を提出していました。21日のブラジルでの有罪判決でロビーニョ選手はその日に、サントスの自宅でブラジル連邦警察に逮捕されました。22日にも刑務所へ護送されます。

 警察の逮捕要求は、判決が下された後、サントス連邦裁判所が許可しました。ロビーニョ選手の弁護士は21日、逮捕を阻止するため連邦最高裁判所に人身保護令状を提出しましたが、この要請は拒否されました。

 強姦事件は2013年、ロビーニョ選手がイタリア・ミラノの主力選手の1人だったときに起きました。ロビーニョ選手は、ミラノのナイトクラブで他の男性5人とともにアルバニア人女性を強姦したとされています。被害女性は大量の飲酒により意識不明でした。被告たちは、関係は合意の上だったと主張しましたが、事件から9年後の2022年、イタリアの裁判所は有罪という判決を下しました。

スイス最高裁、マルフ元市長に8000万レアルの返還命令

 ブラジルのメディアによると、スイス連邦最高裁判所は19日、スイスの銀行で凍結されていたサンパウロ市のパウロ・マルフ元市長の預金約8,000万レアル(約24億円)をブラジルに返還するよう命令したと発表しました。判決はブラジル連邦公共省とブラジル​​司法長官府の要請に応えたものです。

 同連邦公共省は「これは経済犯罪と戦うための法的協力の重要性を示している」と同省のアナマラ・オソリオ国際協力長官は指摘し、「この決定はブラジル人に正義をもたらす取り組みの成果だ」と語りました。

 同事件は、2017年、マルフ氏がマネーロンダリングで金融情報を入手、銀行口座に公庫から8,000万レアルを流用したとされるもので、ブラジル連邦最高裁判所はすでに有罪判決を下していました。連邦公共省はスイスの裁判所にこの金額の凍結と返還を求め協力要請をしていました。

 マルフ氏の弁護側はスイス刑事裁判所が9月に下した有罪判決に対して控訴、スイス連邦最高裁判所は2月2日、控訴審で「資金のブラジル送還」を命じていました。同最高裁は、19日になってこのことを明らかにしました。

アルゼンチン議会にミレイ大統領敗北

 アルゼンチン上院がミレイ大統領の暫定措置の必要緊急政令を拒否しました。ブラジルのメディアによると、14日、上院で7時間以上も討論が続いた後に採決され、反対42票、賛成25票で拒否されました。必要緊急政令は通常「政令」と称され、現職大統領が提案した「法令」が拒否されるのは初めてのことです。

 「法令」は下院にも提出されており、下院で否決されるまでは必要緊急政令は暫定的な措置として機能したままです。政府当局は「上院での否決は大統領の呼びかけを攻撃するものだ」と主張しています。

 ミレイ政権が提出した必要緊急政令は、規制緩和を行うことで、アルゼンチン経済の数十分野の変化を狙った法令です。労働改革、物価監視機関の廃止、家賃に関する新たな規則、外国製品の市場開放、民営化などが盛り込まれています。大統領は上院での拒否を受け、「国の利益と変革の道に尽力し、意図的に国の発展を妨げ用としている人たちに与しない議員に感謝する」としています。

アルゼンチン上院がミレイ政権政策を否定か

 アルゼンチン上院は14日、ミレイ政権が経済規制緩和を可能にする必要緊急政令の審議を開始ました。上院で同緊急政令は審議され、採決に持ち込まれると承認の可能性がないため、ミレイ大統領は審議、採決の延期を画策していました。ミレイ政権の副大統領であり上院議長でもあるビジャルエル氏はアルゼンチン大統領の嘆願を無視して採決を議題に組み込み、大統領との関係がギクシャクしてきました。

 緊急政令はミレイ政権の政策の核とも言えるもので、これが承認されないとミレイ政権の政策が否定されることになります。このためミレイ大統領は上院議員に承認を働きかけていました。あまり効果を発しなかったようです。

市長選の集票力はボルソナロ氏よりルーラ氏に軍配

 ブラジルのメディアによると、サンパウロ市長選でルーラ大統領推薦候補には有権者の42%が投票し、ボルソナロ前大統領が指名した候補者には63%が投票しないと回答しました。12日に発表されたデータフォーリャの調査によるものです。

 調査によると、ボルソナロ氏が指名した候補者に間違いなく投票するとしたのは有権者の17%で、19%はおそらくボルソナロ氏が選んだ候補者に投票すると回答しています。

 一方、ルーラ大統領推薦候補の場合、有権者の24%が労働者党(PT)メンバーが提案した名前に間違いなく投票し、31%がおそらく投票するだろうと回答しました。現大統領はボルソナロ氏よりも有能な広報マンのようです。

 参考までに記すと、ボルソナロ前大統領が支持するのは現サンパウロ市長のリカルド・ヌネス氏で、ルーラ大統領はギリェルメ・ブーロス連邦副議員の支持に回っています。10月のサンパウロ市長選における市民の動向は両候補とも互角だけに、これからの展開が気になるところです。

アルゼンチンが基本金利を年100%から80%に引き下げ

 アルゼンチン中央銀行は基本金利を年100%から80%に引き下げます。ブラジルのメディアによると、同中央銀行は11日、同国の基本金利を年100%から80%に引き下げると発表しました。

 金融当局は「小売インフレの軌道は、これまでの経験に比べて為替レートのパススルーが目に見えて減少しており、一方、合意された経済金融政策の覚書の予測よりも低い軌道を示している」と理由を説明しました。

 政府統計機関によると、2月のアルゼンチンのインフレ率は12カ月で世界で最も高い254.2%に達しました。しかし、1 月には20.6%に減速し、12月の25.5%をも下回っています。中央銀行は「実質的に通貨問題は改善されており、バランスシートも改善している」としています。

 また外貨準備も持続的に蓄積されており、2023年12月10日の時点で96億ドルになったとしています。

武装集団の暴力エスカレートでハイチの治安悪化深刻化

 首相の辞任を求める武装集団の暴力行為でハイチ国内の治安は悪化の一途です。9日には首都ポルトープランスで警察と武装集団が衝突するなど情勢は一段と悪化し、米国は10日、大使館職員一部の撤退と警備の強化を発表しました。ハイチ政府はポルトープランスを含む地域に非常事態を宣言し、夜間外出禁止令を発令しています。

 ブラジルのメディアによると、ポルトープランスでは病院が攻撃され、食糧不足が深刻化、インフラの老朽化もあって、人道状況は危機に陥っています。悪化するハイチの治安について米国とケニア両国が会談、武装集団が求めるハイチ首相の辞任要求を受け、「自由で公正な選挙を実施する』ことを目的に、「多国籍安全保障支援ミッションを展開する」ことで一致しました。

 暴力がはびこるポルトープランスでは犯罪者が店を破壊したり、武装集団が大統領官邸、警察署、裁判所、刑務所を襲撃し、市民は行政事務所に避難所する騒ぎになっています。国際移住機関(IOM )は、首都は「包囲された都市」であり、市民は逃げようとしても武装集団に家族や友人と連絡を取ることを妨害され、閉じ込められた状態あると述べています。

 武装集団はポルトープランスへの道を封鎖し、IOM は「ハイチでは36万2,000人(その半数以上が未成年)が自宅から動けなくなっている」と説明、その数は年初から15%増加しているといいます。

 最新の報道によると、武装集団と国民の一部は、プエルトリコに滞在中のハイチ首相の辞任を要求しています。同首相は2月に退任する予定でしたが、新たな選挙が行われるまで野党も政権に協力、首相を続けることで合意しました。国連安全保障理事会は10月、ケニア主導の多国籍警察任務にゴーサインを与えましたが、こちらはケニアの国内事情で行き詰まっています。

 エルサルバドルのブケレ大統領は10日、ハイチの治安危機を「解決」することを申し出ました。同大統領は「我々はこの問題を解決できる。しかし、国連安全保障理事会の決議、開催国の同意、そして費用の全額負担が必要だ」としています。