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技術を身につけた帰国デカセギ労働者が大モテ

 地元のエスタード・デ・サンパウロ紙が報じるところでは、日本経済の不況により帰国した元デカセギたちが、東北ブラジルの造船会社で次々に就職しています。日本で身に着けた技術や職場での規則遵守、倫理観の高さなどが評価されてのもので、デカセギたちをわざわざ日本でリクルートしているほどです。
 ペルナンブッコ州イポジュッカ市のスアッペ川工業港にある南大西洋造船社はトランスペトロ社などの船舶を製造していますが、このところ積載量100万バレルを積み込む石油タンカーなど22隻を受注、製造に追われています。ところが同社は、造船の歴史が浅い同地で技術を身に着けた溶接工を見つけるのに一苦労、質の高い労働力不足に悩んでいました。悩んだ末に、日本へ出稼ぎに行き技術力、職場の倫理観をたたき込まれたデカセギに目を付けました。南大西洋造船社は人材斡旋会社に「日本で働き技術を身につけたデカセギを獲得してくれ」と依頼、人材斡旋会社はすぐに愛知県豊橋市に飛びました。10日間の面接で82人と雇用契約を結んだといいます。「当面は200人の即戦力が必要」という南大西洋造船社はまだまだ技術者不足で、人材斡旋会社は4月にも担当者を再訪日させ、人材を捜す予定です。
 人材斡旋会社によって帰国したデカセギたちは、「造船大国」として息を吹き返しつつある日本で造船技術を身に着けた人や、別分野であったとしても溶接技術や職場倫理を身に付けた人たちばかり。技術だけでなく、職務に対する姿勢や生産性も高く評価され、責任ある仕事を任されています。
 同僚から「ショクニン(職人)」と呼ばれる伊達フラービオさん(40歳、パラナ州アサイー市出身)は19年の日本滞在中、5年間はNKK(産業機器用の操作スイッチ製造)で働いていました。その経験が買われ南大西洋造船社では溶接工のリーダーとして活躍しています。
 また日本では橋やトンネル、鉄道敷設などの土木業に携わっていたという佐藤クラウジオさん(48歳、サンパウロ州マリリア市出身)は、分野は違うものの日本で学んだことを同僚に伝えていると語り、「専門技術より仕事に対する姿勢が大切」と話しています。
 雇用側の南大西洋造船社は、こうしたデカセギたちが職場にもたらす効果に期待しており、今後も日本での勤務経験がある質の高い人材を揃えることに意欲的です。日系社会では、「新しい日系コロニアがイポジュッカ市に生まれるかも」と語るほど、日本で技術を習得したデカセギたちの働きぶりに注目しています。