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オリンピック開催が決定したブラジルの入門書

 サンパウロ新聞福岡支局の吉永拓哉記者が2冊目の著書を上梓しました。28日に扶桑社から全国発売された「ヤンキー記者 南米を行く」(定価1470円)で、前著「ぶっちぎり少年院白書」の後編とも言える作品です。内容は、少年院を出所してから南米へ旅立ち、そこで失敗を繰り返しながら成長していく南米体験記です。とにかく南米では破天荒な生活の連続で失敗の繰り返し。筆者は移住者たちが味わった苦労とはまた違った苦闘に身をすり減らし、南米の奥深さを肌で感じることになります。そうした体験をストレートでコミカルに表現、楽しく読める本になっています。
 南米へ移住を試み果敢に挑戦したものの結論は、夢破れ帰国することになるのですが、普通の旅行では体験できないエピソードが満載されており、冒険旅行記として読めば結構楽しめるし、全てが事実だから迫力もあります。
 たとえば、アマゾンで味わった毒蜘蛛と巨大な蛾に恐れをなし眠れなかった夜、南部ブラジルでは自動車事故のもつれからギャング団に命を狙われた話、サンパウロでは目の前で展開された麻薬密売人と警官隊との銃撃戦に巻き込まれ、危うく流れ弾で命を落としそうになったエピソードなど、日本にいては考えられないような話が次々と展開していきます。面白いのはこうしたエピソードを読み進むうちに、南米、あるいはブラジルがどんな国かということがおぼろげに判ってくることです。
 ブラジル体験記では、開高健氏の書いた「オッパー」が有名。これは釣りを通してブラジルが描かれた名作ですが、釣りの話を書きながらもブラジルにある進んだ面と遅れた部分の二面性を浮き彫りにしていました。吉永記者の著書は、体験を描くことでブラジルの底辺層の生活を見事に活写しています。貧しいと書いても実感としては湧いてきませんが、この本を読んでいると、貧しいとはどんなことか、目の前に浮かんできます。今やBRICsの一員として経済成長著しいブラジルの暗部が、理解できる好著でといえましょう。