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日航の直行便廃止方針で日系社会に怒りの声

 経営再建を目指す日本航空が、成田―サンパウロ間の定期路線を2011年度までに廃止する方向で検討に入ったことに対し、日系社会では早くも「廃止反対」の声が上がっています。サンパウロ新聞は、「日本政府はことあるごとに、海外に在住する日系人は日本の財産だと美辞麗句を並べる。それなら、ブラジルの日系人を支えるためにも日航の直行便は残すべきだ。日系コロニアも一丸となって路線廃止反対運動を起こし、署名を集め、日本政府に対して存続を呼びかけようではないか」と署名活動まで提起しています。
 日本航空の翼は、特にブラジル路線は採算をどうこう言うのと違い、ブラジル日系150万人に取って日本の香りを運んできてくれ、故国、そして母国日本とを繋ぐ象徴だということです。今はNHKが見られるとはいっても、これは見えない電波での絆であり、JALの翼を目にするのとは別です。目の前に日本から飛んできた飛行機を目に出来、サンパウロ空港で乗ったとたんに日本の空気を味わえる感激とは比べものになりません。1950年代から定期路線開設に向け動き、20年近くかけてやっと実現したブラジル路線は日系コロニアにとっては心のよりどころであり、決して無くしてもらっては困る路線なのです。
 同紙はこう書いています。「太平洋戦争が勃発し、交換船がサントスから出港するとき、日本人移民は取り残され、『棄民思想』が生まれた。同様にサンパウロの空港に日航機が離発着しなくなるとき、もう一度、我々は「棄民」となる」。もはやブラジル路線は、一企業の思惑ではなく、日本政府の考え方を問う大課題なのです。