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集団的自衛権行使に反対=ブラジル被爆者平和協会=

 日本の安倍晋三首相がサンパウロ市を訪問し日系社会と友好親善を深めている中、ブラジル被爆者平和協会の森田隆会長と渡辺淳子理事の2人が「原子力発電所原発)は今すぐに止めるべき」「集団的自衛権行使には反対」と訴えました。同協会は、今年の3月14日にも、在サンパウロ日本国総領事館を通じて、安倍首相あてに脱原発の要望書を送っています。 
 森田会長は、「地震が想定外の規模だったから、漏れても仕方ない。それで片付くのでしょうか。今でも苦しむ人が多くいる。まだ放射能に気付かず、何年後かに悲劇を知る人もいるかもしれない。福島(での原発にかかわる一連の事件)は終わっていないです」と話します。
 森田、渡辺両氏は、ブラジルへの原発輸出を「言語道断」と切り捨てました。「日本の技術なら大丈夫。なぜそう言えるのか。今回の安倍首相のブラジル訪問で議題に挙がらなければいいのですが」と渡辺氏は不安そうに話し、森田会長も「日本に要らないし、まして他に売り込もうなど、人道的にあってはならない」と強い口調で語ります。
 広島に原爆が投下され70年。森田氏は被爆者です。「被爆の恐ろしさは自覚症状がないところ。それに死ぬまで差別されます。この先研究が進み、後遺症や人体への影響範囲がデータで把握できるようになっても、被爆者の心に刻まれる恐怖は数値で測れません」と訴えます。そして、「国民の命や苦しみを、目先の経済の犠牲にしないで欲しい。私たちが放射能で苦しんだ人生は、後世の未来のために教訓にしなければならないのです」と力を込めました。

安倍首相に問う原発と戦争の重み

 同協会は戦争に反対する運動も続けています。先月安倍内閣は、集団的自衛権の部分的行使を認めるために、憲法9条の解釈を変える閣議決定をしました。今後日本は、日本と関係のない第3国の戦争に同盟国として巻き込まれる事態もありえます。渡辺理事は「ニュースで連日報道される他国の戦争。 これは事実であり、映画ではない。軍人だけでなく、大人も子どもも男性も女性も死んでしまいます。食も住もない。今、身の回りにある幸せが奪われる瞬間を想像 できていない」と、安倍内閣を糾弾します。
 森田会長は東京で憲兵をしていて、東京大空襲に遭いました。当初は戦争を肯定していましたが、悲劇を目の当たりにし、考えは180度変わりました。「一発の原子力爆弾で辺り一面が焼け野原になり、次々に人々が死んでゆく。その光景はこの世の地獄です」。さらに言葉を継いで、「安倍首相は国民のためと思ってはいるのだろうけれど、戦争の悲惨さを本当には分かっていない。どの国が悪いじゃない。戦争が悪いのです。安倍内閣の行く末を我々は憂いています」。