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田母神俊雄氏、2年後の国政選挙を視野

 ブラジル日本会議(徳力啓三理事長)主催による第29代防衛省航空幕僚長の田母神(たもがみ)俊雄氏(65、福島)特別講演会が、25日午後2時半からサンパウロ市内の愛知県人会館で行わました。会場には今年2月の東京都知事選出馬で約60万票を獲得する善戦を演じ、言動が注目される田母神氏の講演を聞きに400人が訪れました。演題は「新しい日本を創るには」。約1時間にわたり日本の歴史認識、周辺国との外交問題、日本が本来あるべき姿などを皮肉を交えて痛快かつ的確にテンポ良く語り、来場者を惹きつけていました。
 田母神氏は2008年11月に幕僚長退官後、講演活動を精力的に行っています。24〜28日のブラジル滞在期間中は講演会のほか、斉藤準一空軍総司令官と懇談、サンパウロ市内の開拓慰霊碑参拝、ブラジル航空機メーカー「エンブラエル」社の見学、パラナ州ロンドリーナ市訪問をする予定です。
 田母神氏は講演会の前にサンパウロ市内のホテルで記者会見を行いました。会見で同氏はブラジル訪問について、「2016年の国政選挙に出ようと思っているが、来年にると政界再編の動きが始り動けなくなる」と訪問の理由を語りました。
 今年2月の東京都知事選については、「無所属で政党や大きな組織の支持もない。通常5万票入ればいいほうだが、61万票を獲得した。これにマスコミが驚いて、選挙後に僕を追いかけるようになった。落選してこんなに人気が出る人も珍しいと言われる」と話しました。記者から「組織的な支持もなく、当選が難しいことを知っていながら出馬した都知事選は、2年半後の国政選挙の布石だったのでは」と質問が出ると、田母神氏は「いやいや、そんなこと言うけどさ」と言って少し間を置いた後、「その通りだよ」と肯定しました。
 都知事選で田母神氏は得票目標を30万票においていたといいます。2倍の60万票を集めたことは自民党にとっても驚きだったようです。同氏は予想を上回る支持を集めた要因を「僕が言うことは分かりやすいからだと思う」と分析していました。

外交は駆け引き

 会見の中で、中国や韓国との関係悪化の原因について「外交上の駆け引き。一人一人の付き合いではいがみ合っていない。僕も例えば幕僚長の時は韓国軍の参謀長と2、3度会って仲もいいし。僕の家まで呼んで食事もした」と内輪話を披露、外交は仲良くすることでなく国益を最大にすることで、それは「富と資源のぶんどり合戦」だと指摘しました。
  第二次世界大戦前は、軍事力を行使して「ぶんどり合戦」を行ったが、それ以降は日常的な情報操作によって行われていると語り、「うそやデマ、ある いはねつ造でも自国に有利な情報をどんどん流す。自国に有利になるような国際条約やシステムを作る。それを相手にも押し付けて、合法的に富や資源をぶ んどるということです」と説明しました。
 尖閣諸島に中国の船が乗り入れるのを例に上げ、「戦争をやろうとしているわけではない。日本国民、政府に『戦争になったら大変だから中国にくれてやってもいいんじゃないか』という機運を作り出すためにやっている情報戦争」と指摘しました。しかし同時に、同氏は「戦う姿勢」を示さなければ「国際社会でなめられる」という見解も示し、「子どものけんかと一緒。腕力の弱いやつはいじめられる」とも付け加えました。そのためには集団的自衛権も行使すべきと語りました。
 「自衛隊を自由にすると戦争にずるずる引っ張られて、やがて第二次世界大戦のように悲惨な目に遭うというのは、誤った歴史観」と語り、「情報戦争の時代において、武力の戦争にはならない。しかし抑止力として軍事力を確保し、戦えるというメッセージを絶えず発しておくことは重要だ」とも主張しました。