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拿捕されたマグロ漁船の解放は年内は無理

 今年7月下旬から8月中旬にかけて、ブラジルの環境保護規定に違反したとしてブラジル沖で操業していた日本のマグロ漁船3隻が同国当局に相次いで臨検・拿捕(だほ)された件で、在ブラジル日本国大使館と漁船を派遣した日本かつお・まぐろ漁業協同組合(日かつ漁業)によると、拿捕から4カ月余りが経過した現在も「第108欣栄丸」(岩手県)と「第58錦哉丸」(鹿児島県)2隻が当局によって差し押さえられたまま、現在もリオ・グランデ・ド・ノルテ州ナタル漁港に係留されているということです。拿捕されたもう1隻の「第7勝栄丸」(宮城県)はブラジル当局が差し押さえの必要性を認めず、既に解放されました。
 ブラジル環境省は拿捕した理由について、マグロはえ縄漁業による海鳥の混獲防止のために防鳥綱と一定の重りを付けた網の使用を義務付けた国内規定に違反したと説明しています。当局の説明にAT社は「違反の事実は無い」として取締当局を相手に民事訴訟を起こしましたが、いまだに判決に至らず、漁船の解放は年内は無理との見方が強くなりました。
 日かつ漁業によると、差し押さえが長期に及んでいることから2隻の船主は日本政府に対し、今回の差し押さえはブラジル当局が国連海洋法条約に違反しているとして国際海洋法裁判所に提起するよう要請し、日本政府も提訴を含む早期解決策の検討を始めています。拿捕されている漁船の船員は欣栄丸が先週、船労長を除き全船員が日本に帰国、錦哉丸の船員はいまだに漁獲物の陸揚げが認められないため、維持管理のため船内にとどまっています。
 2隻は2011年に日かつ漁業とAT社が契約し、大西洋でマグロ漁を行うために日本から漁船をリースする取り決めを交わし操業していたものです。漁獲量の65%が日本へ輸出されることなどが契約に盛り込まれています。