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ブラジルの大停電、投資怠った政府の失態?

 日本でも報道された10日夜のブラジル各地で起きた大規模な停電は、過去10年において最大の停電でした。鉱動省は、停電は18州に及んだと発表し、人口の3分の1以上に当たる7千万人に影響しました。同省によると停電の原因は、落雷で電気回路がショートし、変圧器が連鎖的に停止したとしています。ただ、専門家らはこの説明に懐疑的な見方です。連邦会計検査院が7月に、「このままでは近々、大停電の可能性があるため設備投資が必要」とジルマ官房長官に進言していたことも判明しており、この停電は投資を怠った「政府の失策」とする批判も少なくありません。
 鉱動省と全国エネルギー・システム組織化機構によると停電は、サンパウロ州南部のイタベラーの高圧送電線3本に落雷があったために起きたと発表し、送電線に直結する変圧器15基が連鎖的に停止する「ドミノ現象」が起きて、全伯規模の停電となったとしています。
 この発表に専門家は、「3本同時に落雷する可能性はゼロに近い」と、この説明に懐疑的です。落雷の事実を確認した国立宇宙調査研究院も、「落雷地点は送電線から2〜10キロほど離れており、直撃はしていない」との調査結果を発表しています。 さらに電力公社のエレトロブラスも、政府の公式見解は断絶された送電線の本数や停電範囲の詳細を欠いており、夜間の電力消費量にも関わらず、大規模の停電となったことについても説明不足と指摘しています。
 「大停電は政府の失策」とする批判に鉱動相は、政府は2003年以降の投資額は220億レアルに上り、30%増やしていることから、「これほど投資している政権はこれまでにない」と反論、「ブラジルは自然現象による事故が多く、今回の停電も管理システムが機能していても、落ちる飛行機あるようなもの」と政府失策説を一蹴しています。
 停電の影響が最も大きかったサンパウロとリオ両州では、停電で浄水場が停止し、断水になり、約3千万人に影響が出ました。リオ州は完全復旧までに7時間もかかり、停電時間の最長を記録しました。
 サンパウロ市では、地下鉄や郊外電車が止まったため、通常の3倍の運賃を払ってタクシーで帰宅した人や、帰宅できずに路上で一夜を過ごした人もいました。飲食店の中には、停電に紛れて客が支払をせずに立ち去るなどの被害もあったといいます。同市ジャバクアラ区では、車を運転していた50歳の女性が、停電中に車両強盗に遭い、発砲されて死亡する事件も起きています。