9月2日から11日まで東京日仏学院(東京都新宿区)でブラジル映画祭2005が開かれています。
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ブラジル映画
ブラジル映画といえば日本ではなじみが薄いかもしれません。詳しい人ではグラウベル・ローシャ*1ら60年代のシネマノーボを思い出すでしょうか。
最近ではベルリン映画祭で金熊賞を受賞した『セントラル・ステーション』やリオの暴力的な一面を赤裸々に描きだして話題になった『シティ・オブ・ゴッド』など個性ある作品が次々と発表され、シネマノーボの再来とも言われています。
エジフィシオマスター
今回の映画祭で出品されているのはアニメーションやドキュメンタリーも含む作品30作あまり。そのうちの一つ『エジフィシオマスター』(110分 カラー 2002年作品 エドゥアルド・コウチーニョ監督)*2を見てきました。
この作品はコパカバーナのマンション住人へのインタビューで構成されたドキュメンタリーです。舞台はリオデジャネイロですが、ビーチも椰子の実もコルコバードの丘も出てきません。撮影クルーは住人の部屋を訪ね執拗にインタビューを繰り返します。
部屋の又貸しをして同じマンション内を20回以上引っ越した女性/新聞広告でパートナーを見つけた老カップル/妊娠を理由に父に勘当された娘/仕送りとアルバイトで暮らすミュージシャンのたまご3人組/目を合わせて話ができない自閉症的な女教師/捨て子の現場を目撃し、自分の過去を重ね合わせる男性/ダンサーで日本にきたこともあるバイーア女性/スペイン系移民で勤勉さの美徳を説くハウスメイドのおばあちゃん/上司に恵まれ仕事ができることを感謝する涙もろい男性/月に2回はマイウェイを熱唱し昔を偲ぶ退職男性/ダクトから漏れ聞こえる声で隣人の生活を推し量る女子大生
これら何の脈絡もない人生の断片がマンションの各階に整然と並んでいるを私たち観客は知ることになります。この横断的インタビューという手法によってクルーは足早に、しかし広範にブラジルの現代を描くことに成功しています。
質問に対する予期せぬ答えと語り部たちのマイ哲学が印象的な作品でした。
さまざまなブラジル映画を一同に見るチャンス、みなさんもぜひ足を運んでみてください。(仲)
*1:映画監督。1938年ブラジル、バイーア生まれ。代表作に『アントニオ・ダス・モルテス』(1969)、『黒い神と白い悪魔』(1964)など。
*2:原題はEDIFICIO MASTER。EDIFICIOはビルディングの意味http://www.festivalcinemabrasil.com/CinemaBrasil/long/edificiomaster_jpn.html