中南米の最新情報

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壁絵の消去、審議会の許可必要ない

サンパウロ州控訴裁判所は23日、サンパウロ市歴史的・文化的・環境的財産保存審議会の許可なしで市当局が市内の建造物などに描かれた落書きや壁絵を消去することを差し止め、これに従わない場合は1日につき50万レアルの制裁金を科すとした今月13日の一審の決定を覆しました。
 地元メディアによると、アルベス控訴裁判事は、市当局の独断による壁絵などの消去を差し止める市民からの要求は一般的なものであり、市役所が公共の場所や建物の維持管理を行うのを妨げていると述べ、さらに「審議会に委ねられる壁絵などの技術的評価は財物の保護の観点から行われるものだとし、市当局が落書きや壁絵を消去するにあたって同審議会の許可を得る必要はない」と結論づけています。
 無許可での消去を差し止めた一審の決定後、サンパウロ市役所は控訴し、「壁絵は保護されるべき文化的財産ではない。壁絵の消去は同審議会もしくは技術サポート機関の事前承認を必要としない」と主張していました。

サンパウロのカーニバル 年々拡大

 ブラジルはカーニバル・シーズンを迎え,サンパウロでも24日夜からサンボードロモ(サンバ会場)でカーニバル・パレードが始まりました。市内各所では週末からカーニバル休日にかけブロッコと呼ばれる小・中規模グループ154チームの街頭パレードも行われています。カーニバルは28日まで続きます。各メディアによれば、サンパウロではブロッコの街頭カーニバルは拡大を続けており、今年は昨年より28%多い391チームが参加しています。
 18日に始まったサンパウロ市の街頭カーニバルでは、最初の週末だけで175チームが市内各所の街路でパレードを行いました。2009年創設の「バイショ・アウグスタ」は、35万人もの人を集めました。
 サンパウロの街頭カーニバルは、フェルナンド・ハダッド市長の時代に規模が拡大し始めました。13年から市役所がインフラ設備の提供など支援を始め、予算も年々投入しています。11年、12年に市内を行進したブロッコは30程度でしたが、今では390を越えるまでになりました。
 スポンサーの協賛も増え、昨年は1050万レアルの予算の7割を市が引き受けていましたが、今年はスポンサーだけで1500万レアルが集まったといいます。
 市文化局では、今年のカーニバルの人出は昨年より100万人多い300万人に達すると見込んでいます。他市から観光で訪れる人も増え、ホテル産業協会によれば、短期賃貸の物件を探す人の数は昨年のカーニバル時期から187%増加したとしています。

日本人が換金後に強盗被害

 在サンパウロ総領事館によると、16日午後、サンパウロ市東洋街の旅行代理店で現金を両替した日本人が、同市内から約70キロ離れた場所で強盗に襲われ、現金1万4000レアル(約50万円)、旅券、パソコン、クレジットカードを奪われました。

 被害に遭った日本人は、同行者とともに東洋街の旅行代理店で換金後、目的地までタクシーに乗りました。強盗の追尾を恐れサンパウロ市内を迂回し、高速道路を利用するなどして同市内から約70キロ離れた場所の駐車場に入りました。そのとき車両とバイクが接近してきて、その車に乗っていた強盗に銃を突き付けられ、所持品を奪われたものです。日本人に身体的な被害はありませんでした。
 このところ両替後の日本人が強盗に襲われる事件が頻発しており、同領事館では注意を呼びかけています。

貧困層最大360万人増加と予想=世界銀行=

 世界銀行は、ブラジルの貧困層が2017年末までに250万~360万人増加するとの調査結果を発表しました。現在ブラジルが直面している不況が、貧困と不平等の進行を早め、政府の貧困層支援策「ボルサ・ファミリア」などの貧困回避策に深刻な打撃を与えると警告しています。

 国内メディアによると、世銀の調査結果のように360万人の貧困層が増加すれば、月々140レアル未満で暮らす極度の貧困状態にある人の数はブラジル全体で2960万人に達します。世銀は新たな貧困層の増加は主に都市部で起こると指摘、ブラジル南東部(エスピリト・サント、リオ、ミナス・ジェライス、サンパウロの4州)の都市部に住む白人の若年成人が貧困に陥るとしています。彼らは何らかの資格を持ち、サービス業界で働いていた人とも指摘しています。

 これを回避するために連邦政府は17年のボルサ・ファミリアの予算を304億レアル(約1兆640億円)に増額する必要があったと指摘しました。実際は、「ボルサ・ファミリア」の2017年の予算は298億レアルで、世銀が必要と主張する額よりも6億レアル(約210億円)少ない予算になっています。

ブラジルはジャーナリストに危険な国

 ブラジル・ラジオ・テレビ放送協会が公表した調査結果で、ブラジルの報道機関で働く人は世界で10番目に、ラテンアメリカ地域で2番目に危険に晒されていることが分かりました。2016年、ブラジル国内でレポーターなどメディア関係者の261人が暴行被害を受けています。

 地元メディアによると、ブラジル国内における報道関係者に対する暴行などの事例は15年から16年にかけて60%も増加、16年には2人のジャーナリストが職務中に命を落としています。

 ジャーナリスト保護委員会(本部=米ニューヨーク)と国際ジャーナリスト連盟(本部=ベルギー・ブリュッセル)は、真実を追う現場におけるメディア関係者らへの脅迫が増加したとしています。ブラジル・ラジオ・テレビ放送協会のカマルゴ会長は、街頭デモの現場における治安部隊による対応は暴力の一つに当てはまるとして、「協会はデモや公共イベントにおける報道関係者に対する治安部隊の対応訓練を行い、対処方法を変えて欲しい」と政府に提案するとしています。

 報道関係者にとって危険な国ランキング(16年版)の上位10カ国は、1位から順にイラク、シリア、アフガニスタン、メキシコ、イエメン、グアテマラ、インド、パキスタン、トルコ、ブラジル。紛争の当事国やテロ事件がたびたび発生する国の名前が並ぶ中に、ブラジルも顔を出しています。

地下鉄での性的嫌がらせ、1日あたり2件=サンパウロ市=

 サンパウロ市の地下鉄および駅など付属施設で昨年記録された性的嫌がらせの件数は748件で、15年の165件から350%増加しました。

 地元メディアによると、地下鉄やその構内で起きた犯罪は、サンパウロ市西部バラ・フンダ駅にある州文民警察都市警察局により捜査されています。地下鉄や公共交通機関で起こる性的嫌がらせは、貞節に対する侮辱的な嫌がらせに分類されます。刑法では職場内での性的嫌がらせとして分類されているためです。侮辱的な嫌がらせは軽犯罪として罰金が科されるに過ぎません。

 州公共保安局によると、昨年度はメトロにおけるレイプ事件は起きていません。メトロ公社では利用者による運動を受けて、15年下半期以降、性的嫌がらせを撲滅し、通報を奨励するキャンペーンを開始しています。

インフレ予想また低下=中銀=

 ブラジルの金融市場はインフレがさらに低下すると予想しています。ブラジル中央銀行が13日公表した週次レポートによると、100を超える金融機関のアナリストは2017年の予想インフレ率を4.47%(前週4.64%)としています。低下予想はこれで6週連続です。2018年の予想は前週同様4.50%でした。
 地元各メディアによると、2017年の金融市場の経済成長見通しはプラス0.49%(前週プラス0.48%)でした。18年の見通しは前週のプラス2.25%から2.30%へ0.05ポイント改善しています。現在の年利13.00%の基本金利については、17年末時点で9.50%とする前週の見方と同じでした。

テメル政権の評価、前回から低下

 地元メディアによると、全国運輸連合の委託で調査会社MDAが行ったテメル政権の評価の聞き取り調査で、肯定的に評価したのは10.3%で、昨年10月の調査(14.6%)から低下しました。否定的な評価は前回の36.7%から44.1%へ増加しました。

 現政権を「良い」と答えた人は9.1%、「最高」と答えたのは1.2%で、前回の12.5%、2.1%から低下しています。「普通」と答えた人は38.9%で、前回は36.1%でした。否定的な答えをした人で「悪い」とした人は13.2%から17.6%へ、「最悪」は23.5%から26.5%へそれぞれ増加しています。テメル大統領の仕事ぶりについては、肯定的な評価が24.4%(前回は31.7%)、否定的な評価が62.4%(同51.4%)でした。

 各分野の6カ月後の見通しに関する質問では、雇用が「良くなる」は31.3%、「悪くなる」は30.6%、「今と同じ」が35.9%でした。その他、保健は25.7%、教育は28.9%、治安は20.4%が「良くなる」と答えています。

ルーラ元大統領の人気衰えず
 大統領選が今実施される場合を想定した投票先意向の聞き取り調査では、最も人気があったのはルーラ元大統領で30.5%、以下マリーナ・シルバ元上議11.8%、ジャイル・ボルソナロ下議11.3%、PSDB党首のアエシオ・ネベス上議10.1%、シロ・ゴメス元大臣(民主労働党)と続いています。

リオのレブロン区で邦人窃盗被害

 在リオ日本国総領事館によると、1月31日午後、リオ市内レブロン地区のPlataforma(有名なショーレストラン)前の屋外駐車場で邦人が窃盗事件に遭いました。被害者は、知人との会食のためイパネマ地区の飲食店に運転手付きの車で行き、食事を終え車の所に戻って鞄が盗まれていることに気付きました。鞄の中には現金と私物が入っていました。

 知人との会食の間、運転手は駐車場で待機していましたが、運転手が15分ほど駐車場を離れた隙に車両の鍵をこじ開け、車内にあったカバンを盗んだものです。

 被害者は速やかに文民警察観光警察署に届けようとしましたが、文民警察はストライキ中で、なかなか被害届を受理してもらえず、翌日になってインターネットで被害を申告したそうです。

サンパウロ市の壁絵、「許可無く消去」を禁じる

 今年1月1日にジョアン・ドリア氏(PSDB)がサンパウロ市長に就任して以降、市内の至る所で、建造物や道路の構造物などに描かれたグラフィッチ(壁絵)やピシャサン(落書き)が市当局によって消去されており、これに抗議して新たに落書きするなどした複数のグラフィテイロ(壁絵師)やピシャドール(落書き人)が同市警備隊や軍警察に身柄を拘束されるなどしています。

 地元メディアによると、この件に関して裁判所は13日、サンパウロ市歴史的・文化的・環境的財産保存審議会の許可無く市役所が街中の壁絵を消去することを禁じるとの決定を下しました。この決定に従わない場合、市役所は1日につき50万レアルの制裁金が科されることになります。サンパウロ市役所は裁判所の決定を不服として異議を申し立てる予定です。

 裁判所の今回の決定は、ドリア市長が市内を貫く幹線道路の側壁に描かれた壁絵を消して灰色に塗ったことを受けて壁絵の制作者らが起こした集団訴訟の結論です。原告側は訴えの中で、ドリア市長の街頭美化プロジェクトの一環として市役所が明確な技術基準なしに公共スペースにすでに存在している作品を灰色の塗料で消去したという行為は、景観的、文化的に取り返しの付かない被害をもたらしたと主張していました。

 裁判所の決定に対し市役所は、「壁絵は保護されるべき文化的財産ではない」とし、壁絵の消去は同審議会もしくは技術サポート機関の事前承認を必要としないと主張、異議を申し立てるとしています。