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サンタクルース病院 2700万レアルの負債

 かつて日本人が総力を挙げて建設、開業した大手の日系病院サンタクルース病院が、巨大な赤字を出し問題化しています。サンパウロ新聞より転載します。
 <以下、転載>
 「昨年70周年を迎えたばかりのサンタクルース病院に不穏な空気が流れている」―。そんな噂が聞こえ始め、今月初めに菜切健児理事長が突然辞任。同院が抱える問題が、一気に露呈した。23日午後5時からビラ・マリアーナ区の同病院事務局で記者会見が開かれ、2700万レアルの負債が明らかになった。訪日中の中村勉第1副理事長不在の中、中矢レナット健二第2副理事長を筆頭に、伝田英二第3副理事長、サルバトレ・スポサト理事、医師会よりユワ・イシハラ医師、レオネル・フェルナンデス院長、カルロス・イトウ技師が出席し、質疑応答が行われた。
 同病院は、日本人移民の救済と医療衛生面改善のために結成された同仁会を中心に、日系コロニアが総力を尽くし、「日本病院」と呼ばれる、初の日系病院として1939年に建設された。総工費4979コント(援協40年史参照)を掛けて完成した同院は、所在地名に由来する「サンタクルース病院」と名付けられ、当時としてはブラジルで比類ない設備を誇っていた。病院敷地の購入から開院まで、14年間にわたる年月を費やした大事業だったにもかかわらず、第2次世界大戦の余波を受け、ブラジル政府に敵性資産として接収され、開院後わずか1年半で経営権は日本人の手を離れることとなった。第2次大戦後も主にブラジル人が経営権を握っていたが、日本人、日系人による「日本病院」返還運動などにより、1990年代には日系人も参入し、日系の病院として事業運営、病院の改修、近代化に取り組み現在に至る。

菜切理事長が突然の辞任 経営陣と医師会で確執か

 記者会見は、中矢副理事長を中心に、出席した幹部らが各自に意見を述べた。その後、日伯両語の新聞記者より質問が飛び交った。
 イシハラ医師によると、菜切前理事長が20年間勤続の麻酔専門医グループの入れ替えを行ったが、半年間給料が支払われなかったため反発を招き、麻酔専門医らは病院に姿を現さなくなった。同院は主収入となる手術ができず、収入が激減した。
 昨年10月に400万レアルを出資し、コンピューター導入、システム化した際も医師会と十分な話し合いは持たれなかったという。
 不信感が募った医師団は、菜切前理事長による不透明な病院運営に対し、同前理事長に質問状を送った。その中には「サンタクルース病院の経費を菜切前理事長個人経営の集中治療科にあてたことについて」という驚くべき質問も投げかけられていた。
 業務のシステム化に加え医療保険のプラサッキ(保険会社)導入が、膨れ上がった負債の原因ではないかという本紙記者の質問に対し、中矢副理事長は「プラサッキは別問題。負債は前からあったが、菜切前理事と医師の間で話し合いが十分になされなかったので、詳細は分からない」と言葉を濁す。「今後経費を抑え、12か月から15か月をめどに全額返済したい」と大きく出るも、「病院に投資は付き物。もしかすると2年くらいかかるかも」と明言は避けた。
 中矢副理事長は「運営側と医師側とコミュニケーション不足が、今回の結果になった。今後は話し合う機会を持ち、皆で情報を共有し、力をあわせて病院を再建したい」と明るい表情を見せ、記者会見を終了した。
 現在、理事長不在の同院だが、中村副理事長が帰伯までは中矢副理事長が代理として先導し、前理事長が残した1年半の任期を務める。
 以上