中南米の最新情報

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連邦検察庁がテメル大統領を新たに起訴

 ブラジル各メディアの報道によると、ロドリゴ・ジャノー連邦検察庁長官は14日、犯罪組織形成および司法妨害の容疑で連邦最高裁判所ミシェル・テメル大統領を起訴しました。検察の大統領起訴は、今年6月に収賄容疑の起訴に続き2度目です。

 今回の起訴も、前回の起訴原因となった食肉加工大手JBSとその親会社J&F社役員による司法取引証言と、大統領が属するPMDB(ブラジル民主運動党)の資金オペレーターとみられているルシオ・フナロ氏の司法取引証言に基づいて行われました。

 犯罪組織への関与では、大統領が所属のPMDBが国営石油ペトロブラスやフルナス電力公社、連邦貯蓄銀行、国家統合省、下院議会など様々な公的機関を利用して賄賂と引き換えに不正行為を行い、大統領は2016年5月以来そのグループを主導していたとしています。同事件への犯罪グループの関与では大統領ほか6人のPMDBの元・現閣僚および元下議(エドゥアルド・クーニャ元下議、エンリケ・アルベス元観光大臣、ジェデル・ビエイラ・リマ元総務長官、ロドリゴ・ロシャ・ロウレス元下議、エリゼウ・パジーリャ官房長官、モレイラ・フランコ大統領府事務局長)も起訴されています。起訴状によると、起訴された政治家グループが犯罪グループと指摘し、彼らが受け取った賄賂の総額は少なくとも5億8700万レアルとしています。

 司法妨害の容疑では、大統領のほかJ&F社主のジョエズレイ・バチスタ氏と元役員のリカルド・サウド氏が起訴されました。PMDBの資金オペレーターとみられているルシオ・フナロ氏と検察の司法取引を避けるためバチスタ氏側からフナロ氏家族へ資金提供しており、大統領が資金提供を承認したのは違法行為の隠蔽にあたる捜査妨害と指摘しています。フナロ氏はその後検察と司法取引で合意しています。

 現職大統領起訴の受理するかどうかを最高裁が判断するには、下院本会議で議員数の3分の2以上の承認が必要です。前回の収賄容疑による起訴では、下院で否決されました。大統領府社会広報局は声明で、「検察は前回の失敗を隠すため無責任なことを続けている」と大統領起訴を批判しています。

職にあぶれるミレニアル世代

 企業向け情報サービスなどを手掛ける民間企業、パドラン・グループの情報収集・調査部門であるパドラン情報収集センターとデジタル調査会社マインドマイナーズが実施した「ミレニアル世代」(1980年代から2000年代初めに生まれた18~32歳の若者)の調査が公表され、4人に1人が職にあぶれていることが分かりました。地元メディアによると、ミレニアル世代の25%が仕事をせず、勉強もしていないとしています。

 失業中の若者の57%は1年以上も失業しています。失業期間が半年~1年の人は16%、1~6カ月は21%、1カ月未満が6%です。失業中の47%は就学せず、34%は就学も就職もしていません。

 パドラン・グループの最高経営責任者は、「他国に才能ある人材を流出させないために、ブラジルの労働市場若い人たちにもっと目を向ける必要がある。もしこの労働力が活かされないなら、我々は輝かしい才能を海外へ移してしまうことになる」と警鐘を鳴らしています。

インフルエンザ感染者が減少

 地元メディアによると、保健省が6日公表したインフルエンザ流行のデータで、今年1月から8月28日間に記録されたインフルエンザ感染件数は2070件と昨年同期比の1万1062件から81%減少しているのが分かりました。インフルエンザが原因の死亡件数も、昨年の2007件から今年は361件に減少しています。

 保健省によれば、昨年最も流行したウィルスはH1N1型で、今年はH3N2型。同省関係者は「インフルエンザ感染の減少で予防接種を受ける人が減少したが、予防接種は受けてほしい」と強調しています。今年4月から7月にかけて実施された接種キャンペーンでは、5180万人が予防接種を受けました。

携帯電話契約が1カ月で11万件減る

 地元メディアによると、国家電気通信庁の13日発表で、2017年7月末時点の携帯電話の契約回線数は2億4201万1349件と判りました。前月末時点より11万3100件減少しています。契約回線数は今年7月までの1年間で1056万2492件の減少です。

 首都ブラジリアを含む27州中、今年6月から7月にかけて契約回線数が増加したのは10州でした。最も増加したのは15万6393件増のサンパウロ州で、ゴイアス州が1万2138件増で続いています。逆に大きく減少したのは6万5795件減のリオグランデ・ド・スル州でした。

キノコ研究で石川ノエミアさんが勲章受章

 アマゾナス州マナウス市のブラジル国立アマゾン研究所研究員、石川・カズエ・ノエミアさん(45歳、三世)が8月11日、高等労働裁判所の労働司法勲章をキノコ研究で受章しました。受賞について石川さんは、「今回の受章は日本の奨学金で勉強したことも関係しており、日本のお陰でもあります」と日本への感謝を口にしていました。

 現在、ヤノマミ族の食用キノコの研究をしている石川さんは、ブラジルでシイタケ栽培先駆者の一人だった祖父、駒込信夫さん(故人)の影響を受けキノコ研究を始めて26年になります。彼女は現在、日・ブラジルを繋ぐ共同研究やヤノマミ族の食用キノコのレストランへの導入など、多岐にわたって活躍しています。

シイタケの中で育つ
 石川さんは、1972年にパラナ州ロンドリーナ市マラヴィーラ村生まれ。祖父の駒込信夫さんが岩手県から菌株(きんしゅ)を持ち帰り、1970年前後からシイタケの栽培を始めたこともあり、「煮しめ、ご飯、味噌汁など全部にシイタケが入っていた」というほどシイタケに囲まれて育ちました。15歳くらいになって初めて、自分の家庭や周りだけにしかシイタケがないことに気づいたといいます。

 駒込さんは孫の石川さんに「シイタケの研究をしたら博士にもなれるよ」という言葉を残しています。「キノコの研究に興味を持った」という石川さんに後継者として期待したのでしょう。彼女は祖父の期待を裏切らなかったわけです。

 91年にロンドリーナ州立大学生物学コースに入学、菌類学を勉強。97年10月から日本の文部科学省奨学金を受け、北海道大学の博士課程へ進学。同じキノコでもエノキダケに関連した研究で博士号を取得しました。北大で博士号を取得後帰国、現在は国立アマゾン研究所の研究員(国立アマゾン生物多様性技術院の副コーディネーターも兼任)を務めています。2009年には10カ月間、鳥取県の日本きのこセンターで日本人研究者と共同研究も行いました。

原住民の生活向上に貢献
 ヤノマミ族はブラジルとベネズエラの国境付近に住む原住民で、アラゲカワキダケやシイタケの近縁、ヒラタケの同属種などを含む15種類のキノコを食用にしています。石川さんは「研究ではインディオから学ぶことは多いし、インディオのためになるのも嬉しい」と話します。実際石川さんらの努力で、これらのキノコはサンパウロ市内のレストランで提供されており、その収益はヤノマミ族の生活向上に充てられています。

 今後の目標について石川さんは、「アマゾンのキノコを世界に広げ、アマゾンの人たちのサポートをしたい。おじいちゃんがブラジルにキノコを持ってきたこともありがたいことだけど、今度は逆にブラジルから日本にも持っていきたい。それが今の夢」と語りました。

独立して195年目を迎えたブラジル

 9月7日、ブラジルは195回目の独立記念日を迎えました。ポルトガルの王子ドン・ペドロがサンパウロのイピランガの丘で「独立か死か!」と叫び、独立宣言をして以来195年、着実に発展してきました。1970年代に米国の未来学者ハーマン・カーンが「21世紀は日本とブラジルの時代」と予言しましたが、為政者に恵まれない日本はともかくブラジルは、先進国の仲間入りするのは時間の問題といえるほど発展してきました。ここ数年の経済不況で足踏みしていますが、潜在能力の高さは国際的に認められています。独立記念日を迎えたのを機会に、ブラジルの現状を紹介しましょう。

混血パワーで国作り
 ブラジルの人口は約2億700万人で世界第5位です。今後20年間ブラジルの人口は増え続けると見られ、2040年には2億2000万人に達すると予測されています。20年間は若い世代が増え続ける理想的な社会構成で消費人口が膨らみ、GDPを押し上げる消費が活発に行われることになります。

 ブラジルの人口構成は、欧州系約48%、アフリカ系約8%、東洋系約0.6%、混血約43%、先住民約0.4%(いずれもブラジル地理統計院2011年の調査)で、世界中からの移民が混血して出来上がっている国です。混血が進んでいるため、人種差別が少なく、それぞれの民族がブラジルという新しい国づくりに参画しているのが特徴です。

先進国の条件は治安の回復
 ここ数年ブラジル経済は成長率がマイナスで、物価も高騰し、景失業率も高止まりしています。2000年以降好景気に支えられ、就労者の51%がCクラスと呼ばれる中産階級の生活をするまでになりました。ところが景気後退で失業者が増え、最も大きな影響を中産階級が受け、内需が大きく落ち込みました。加えて、輸出先1位だった中国の景気が減速し主要産品(鉄鉱石や大豆)を買い控えたため、ブラジルは景気後退を余儀なくされ、景気回復の足がかりをつかめないまま現在に至っています。GDPランキングも景気の落ち込みを反映し、2013年の世界7位から15年には9位に落ちたままです。

 しかし、GDPランキングの1位から8位までを見ると、2位の中国、7位のインドを除いてすべて先進国です。数字上ではすでに先進国の仲間入りしているようにも見えますが、経済基盤の弱さ、治安の悪さ、政界の汚職蔓延といったことを払拭しなければ、先進国とは言えません。

資源大国の強み
 天然資源に恵まれたブラジルは、オーストラリアと肩を並べる鉄鉱石輸出国で、中国、日本を中心としたアジア地域への輸出シェアは50%に達し、今後、この地域への輸出はさらに増加すると見られています。
 原油を見ると、13年の原油生産量は1日211.4万バーレルで、中南米ではベネズエラの262.3万バーレルに次ぎ2位の生産量を確保しています。ブラジルが開発した深海層からの発掘技術で07年以降開発のピッチが上がっており、石油公社は「2020年に生産量は倍増する」と強気な予測をしています。

世界の食糧供給基地
 ブラジルは日本の23倍という広大な国土を有し、その国土は水資源、気候に恵まれて農業に適した土壌が大半です。農産物で代表的な生産物はコーヒーで、世界生産量の30%を占めています。かつてはブラジル輸出の筆頭でしたが、今ではサトウキビ、オレンジ、大豆の生産量も世界一を誇り、輸出でもコーヒーを凌駕するまでになっています。その他にはマンゴー、メロン、ブドウなどの果物類も輸出商品に育っており、世界への農作物の供給地として大きな役割を果たしています。

 それでもGDPの中に占める農林水産業の比率はわずか6%です(2013年)。鉱工業が25%、サービス業69%とブラジルは、第一次産業から第二次、三次産業へと大きくシフトしています。

自動車、航空機産業が突出

 製造業の代表が自動車産業です。1970年代まではフォルクス・ワーゲンが市場を独占していましたが、世界中のメーカーがブラジルに進出して製造を始め、13年には年間自動車販売台数が350万台を突破、世界4位の市場に成長しました。業界の予測では、2020年には年間販売台数が460万台程度になるとしています。

 主要輸出品として急速な成長を遂げているのは航空機です。サンパウロ州サンジョゼ・ドス・カンポス市に工場を持つエンブラエルは、世界の旅客機メーカーの一角を占めています。メーカーで1位はエアバス社で、2位が米国のボーイング社、3位にエンブラエルがランクインしています。エンブラエルは小型飛行機生産に特化しており、この分野では1位です。12年まではカナダのボンバルディア社でしたが、13年に追い抜きました。エンブラエルの飛行機は日本航空も使用しています。

今後の課題は政治と教育
 ブラジルはもはや中進国ではなく、先進国と言ってもいいほどの実力を兼ね備えています。しかし、ブラジルの有識者は「政治と教育が良くならなければ、一等国にはなれない」と口を揃えます。昨年来、世間を騒がせている石油公団汚職では大統領から国会議員まで、多くの政治家の関与が疑われています。今回の汚職捜査でどこまで政界浄化できるか、国民が注視しているところです。政治が良くならなければ、ブラジルの先進国入りは遠のくと、多くの国民は考えているのです。

 教育への投資も重要で、1970年代初頭に比べると識字率は向上しましたが、教育の内容、質という点ではまだまだ改善の余地があります。社会が変わるためには、子どもたちに満足のいく教育を受けさせることが必要です。「21世紀の大国」といわれるブラジルですが、大きく羽ばたくにはもう少し時間が必要なようです。

新車販売数が8月、20万台超え

 地元メディアによると、全国自動車販売業者連盟が先ごろ公表したデータで、8月の国内新車販売台数(登録ベース)が乗用車、軽商用車、トラック、バスを合わせ21万6534台を記録、昨年12月以来の20万台超えとなりました。前月より17.17%増、前年同月比では17.75%増でした。また同月は、乗用車と軽商用車だけの販売台数も20万9871台と15年12月以来20カ月ぶりに20万台を上回りました。

 発表した自販連のジュニオール会長は、「金利の低下や失業率の改善などで景気が回復向かっていると、消費者や投資家が認め始めているのだろう」と好調な売れ行きの背景を説明しました。景気が回復しつつあることは統計にも表れ、ブラジル地理統計院も先ごろ、「17年第2四半期の国内総生産GDP)は前期比で0.2%、昨年同期比で0.3%、それぞれ拡大した」と発表しています。

日本車では「カローラ」が好調
 8月に最も売れた車種は、乗用車は前月同様ゼネラル・モーターズのオニキス、軽商用車は3カ月ぶりに首位の座に返り咲いたフィアットストラーダでした。オニキスの販売台数は前月を21.5%上回る1万8,513台でした。ストラーダは5,108台と前月を44.9%上回りました。

 日本のメーカーの中では8月もトヨタカローラとハイラックスがそれぞれの部門で最多でした。カローラの販売台数は前年同月比10.8%増、前月比6.9%増の6,679台、同様にハイラックスは1.6%増、4.6%減の2,923台でした。

 同月のメーカー別シェア(乗用車・軽商用車合算)上位5社はGM(18.24%)、フィアット(13.96%)、フォルクスワーゲンVW、12.50%)、現代自動車(HYUNDAI、9.55%)、フォード(FORD、8.84%)となっています。この5社で前月を上回るシェアを獲得したのはフィアットのみで、他は軒並みシェアを落としました。日本勢はトヨタ(8.79%)が6位、ホンダ(5.67%)が8位、日産自動車(3.31%)が10位でした。6~10位の5社の中で前月よりもシェアが落ちたのはトヨタだけでした。

服役女性数は4万5000人

 地元メディアによると、法務省国家刑務所管理局の最新データで、服役する女性数が2000年当時の5601人から16年には4万4721人へ、698%も増加していることが分かりました。14年の12月から16年の12月までの2年間で3万7380人から4万4721人へ増加しています。

 服役する女性の43%は未決勾留者とされています。先ごろ弁護士の人権団体が、妊婦や出産後45日以内の母親、未決勾留の女性全て釈放するよう訴えた人身保護令状を申請しました。

 服役している女性の80%は世話が必要な子供のいる母親で、刑務所管理局は「女性服役の影響は、社会的に深刻な影響をもたらす」と懸念しています。こうした現状から申請を受けた裁判所は「刑務所に収容されている妊婦と子供のいる母親を全て確認する」ことを求め、改善に取り組むよう要請しています。

ネット通販の伸びが加速

 ブラジル電子商取引の情報を扱うイービット社によると、2017年上半期(1~6月)の同業界全体の売上高は前年同時期より7.5%増加し210億レアル(約7,350億円)でした。また、インターネット上で商品を販売するオンラインショップが受けた注文数は前年同期比で3.9%増の5,030万件、注文1件当たりの金額は平均418レアルでした。地元メディアが報じています。

 イービット社は、ブラジルのネット通販市場は今年後半さらに拡大すると見ており、17年7~12月の売り上げは昨年同期比で12~15%増と予想しています。この予想が当たれば、同業界の17年の年間売上は16年比で10%増となります。

リオ五輪誘致で票買収の疑い

 地元メディアによると、連邦警察と連邦検察庁は5日、リオデジャネイロ五輪の開催誘致で国際オリンピック委員会(IOC)委員を買収した疑いで捜査を開始しました。同日早朝からリオ市内のブラジル五輪委員会とカルロス・アルトゥール・ヌズマン同会長の自宅を捜索し、書類やパソコンを押収しました。警察は会長に出頭を求め事情を聞いています。

 捜査当局は、ヌズマン会長が五輪開催決定に向けIOC委員の買収を仲介したと見ており、会長の出国を禁止し、パスポートの提出を求めています。同会長は弁護士を通して、違法行為への関与を否定しています。

 今回の捜査にはフランス検察が協力しています。フランス検察は陸上競技のドーピングを捜査する中で、買収スキームの疑いが浮上したとしています。今年3月にはフランスのル・モンド紙が、2009年10月に16年の五輪開催都市を決める投票が行われる直前に、企業家からIOCの2人の委員側に間接的に資金が支払われた疑いを報じていました。

 連邦検察庁は、企業家の関連企業を通じて当時のカブラル州知事(昨年11月から勾留中)が投票権を持つIOC委員の息子に200万ドルの賄賂を支払ったという疑いを持ち、捜査を続けています。