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独立して195年目を迎えたブラジル

 9月7日、ブラジルは195回目の独立記念日を迎えました。ポルトガルの王子ドン・ペドロがサンパウロのイピランガの丘で「独立か死か!」と叫び、独立宣言をして以来195年、着実に発展してきました。1970年代に米国の未来学者ハーマン・カーンが「21世紀は日本とブラジルの時代」と予言しましたが、為政者に恵まれない日本はともかくブラジルは、先進国の仲間入りするのは時間の問題といえるほど発展してきました。ここ数年の経済不況で足踏みしていますが、潜在能力の高さは国際的に認められています。独立記念日を迎えたのを機会に、ブラジルの現状を紹介しましょう。

混血パワーで国作り
 ブラジルの人口は約2億700万人で世界第5位です。今後20年間ブラジルの人口は増え続けると見られ、2040年には2億2000万人に達すると予測されています。20年間は若い世代が増え続ける理想的な社会構成で消費人口が膨らみ、GDPを押し上げる消費が活発に行われることになります。

 ブラジルの人口構成は、欧州系約48%、アフリカ系約8%、東洋系約0.6%、混血約43%、先住民約0.4%(いずれもブラジル地理統計院2011年の調査)で、世界中からの移民が混血して出来上がっている国です。混血が進んでいるため、人種差別が少なく、それぞれの民族がブラジルという新しい国づくりに参画しているのが特徴です。

先進国の条件は治安の回復
 ここ数年ブラジル経済は成長率がマイナスで、物価も高騰し、景失業率も高止まりしています。2000年以降好景気に支えられ、就労者の51%がCクラスと呼ばれる中産階級の生活をするまでになりました。ところが景気後退で失業者が増え、最も大きな影響を中産階級が受け、内需が大きく落ち込みました。加えて、輸出先1位だった中国の景気が減速し主要産品(鉄鉱石や大豆)を買い控えたため、ブラジルは景気後退を余儀なくされ、景気回復の足がかりをつかめないまま現在に至っています。GDPランキングも景気の落ち込みを反映し、2013年の世界7位から15年には9位に落ちたままです。

 しかし、GDPランキングの1位から8位までを見ると、2位の中国、7位のインドを除いてすべて先進国です。数字上ではすでに先進国の仲間入りしているようにも見えますが、経済基盤の弱さ、治安の悪さ、政界の汚職蔓延といったことを払拭しなければ、先進国とは言えません。

資源大国の強み
 天然資源に恵まれたブラジルは、オーストラリアと肩を並べる鉄鉱石輸出国で、中国、日本を中心としたアジア地域への輸出シェアは50%に達し、今後、この地域への輸出はさらに増加すると見られています。
 原油を見ると、13年の原油生産量は1日211.4万バーレルで、中南米ではベネズエラの262.3万バーレルに次ぎ2位の生産量を確保しています。ブラジルが開発した深海層からの発掘技術で07年以降開発のピッチが上がっており、石油公社は「2020年に生産量は倍増する」と強気な予測をしています。

世界の食糧供給基地
 ブラジルは日本の23倍という広大な国土を有し、その国土は水資源、気候に恵まれて農業に適した土壌が大半です。農産物で代表的な生産物はコーヒーで、世界生産量の30%を占めています。かつてはブラジル輸出の筆頭でしたが、今ではサトウキビ、オレンジ、大豆の生産量も世界一を誇り、輸出でもコーヒーを凌駕するまでになっています。その他にはマンゴー、メロン、ブドウなどの果物類も輸出商品に育っており、世界への農作物の供給地として大きな役割を果たしています。

 それでもGDPの中に占める農林水産業の比率はわずか6%です(2013年)。鉱工業が25%、サービス業69%とブラジルは、第一次産業から第二次、三次産業へと大きくシフトしています。

自動車、航空機産業が突出

 製造業の代表が自動車産業です。1970年代まではフォルクス・ワーゲンが市場を独占していましたが、世界中のメーカーがブラジルに進出して製造を始め、13年には年間自動車販売台数が350万台を突破、世界4位の市場に成長しました。業界の予測では、2020年には年間販売台数が460万台程度になるとしています。

 主要輸出品として急速な成長を遂げているのは航空機です。サンパウロ州サンジョゼ・ドス・カンポス市に工場を持つエンブラエルは、世界の旅客機メーカーの一角を占めています。メーカーで1位はエアバス社で、2位が米国のボーイング社、3位にエンブラエルがランクインしています。エンブラエルは小型飛行機生産に特化しており、この分野では1位です。12年まではカナダのボンバルディア社でしたが、13年に追い抜きました。エンブラエルの飛行機は日本航空も使用しています。

今後の課題は政治と教育
 ブラジルはもはや中進国ではなく、先進国と言ってもいいほどの実力を兼ね備えています。しかし、ブラジルの有識者は「政治と教育が良くならなければ、一等国にはなれない」と口を揃えます。昨年来、世間を騒がせている石油公団汚職では大統領から国会議員まで、多くの政治家の関与が疑われています。今回の汚職捜査でどこまで政界浄化できるか、国民が注視しているところです。政治が良くならなければ、ブラジルの先進国入りは遠のくと、多くの国民は考えているのです。

 教育への投資も重要で、1970年代初頭に比べると識字率は向上しましたが、教育の内容、質という点ではまだまだ改善の余地があります。社会が変わるためには、子どもたちに満足のいく教育を受けさせることが必要です。「21世紀の大国」といわれるブラジルですが、大きく羽ばたくにはもう少し時間が必要なようです。