中南米の最新情報

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「外国人女性を侮辱した罪」で検察が捜査

 サッカーW杯でロシアを訪れているブラジル人男性グループが、ポルトガル語を理解しないロシア人女性にポルトガル語で女性器を意味する言葉を何度も浴びせ、それを動画で撮影、ソーシャル・ネットワーキング・サービス上で公開し非難されています。首都ブラジリアの連邦検察庁はこの件で、関与したブラジル人を特定するために刑事捜査の開始を決めました。

 地元メディアによると連邦検察庁は、「問題のブラジル人グループは動画撮影で、外国人女性を侮辱する罪を犯している」と指摘しています。連邦検察庁の捜査開始は、1979年12月に国際連合で採択された「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の第1条と第3条に基づいています。今回の事例はロシア国内で起こったものですが、ブラジル刑法第7条には、「ブラジル国外で犯された罪であっても、それがブラジル人によって行われたものであれば、ブラジルの法律の適用対象である」と定めています。

ロシアW杯、コロンビアからの金星に歓喜

 サッカーW杯ロシアが開幕しブラジルは17日、日本は19日に初戦を迎え、日本はコロンビアに2―1で勝利するという大金星を挙げました。サンパウロ市東洋街の岩手県人会館で日本ーコロンビア戦のPV(パブリック・ビューイング)が行われ、日本の勝利に大いに盛り上がりました。

 日本代表初戦の日本ーコロンビア戦のPVには、約30人のサポーターが日本代表に声援を送りました。日本は前半6分に香川真司のペナルティ・キックで先制し、同39分に追いつかれて前半を終えました。ここまでは4年前のブラジル大会のコロンビア戦と同じでした。後半に入り攻勢をかけた日本は同28分、大迫勇也コーナーキックを頭で合わせて追加点を挙げ、そのまま逃げ切って番狂わせを演じ、試合終了時には飛び上がって喜ぶサポーターの姿が見られました。

 観戦したギリェルメ・アンドラーデさん(23、非日系)は日本留学時代の友人とPV会場を訪れ、「観ていて緊張した。勝てるとは思わなかった」と笑顔でした。会場には複数のブラジル・メディアも訪れ、スペインの通信メディアは「日本人の移民110周年に注目している。こういう集まりを通して、日系社会の人と交流したい」と日系社会への関心を見せていました。

 日本代表は24日にセネガル戦、28日にポーランド戦と強豪との連戦になりますが、ブラジル日系社会は日本代表の活躍に大きな期待を寄せています。

日本企業はW杯対応に戸惑い

 ブラジル日本商工会議所(松永愛一郎会頭)は、W杯期間中に「各企業や工場がどう対応するか」のアンケート調査(348社対象)を実施しました。それによると、事務所・工場にテレビを設置し、試合を観戦できるようにする企業が最も多く、日本戦でも同様の対応を取る企業がありました。

 ただ、対応についてのガイドラインやルールがないため、日本企業には対応に苦慮する声も聞かれました。「伝統的に振り替え休日にしている」「従業員にアンケートを取って対応を検討」「全員休日」と企業によって対応はバラバラです。通常勤務と回答した事務所・工場は15件でした。

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日本の追加点で盛り上がるサポーター(19日、岩手県人会館)=サンパウロ新聞提供=

「国を離れたい」が43%=ダタフォーリャ調査=

 調査会社ダタフォーリャが実施した調査で、「可能であればブラジルから離れたいか」との質問に肯定的な回答をした人が43%を占めました。16~24歳の年齢層ではこの割合はさらに高く、62%となっています。17日付フォーリャ紙の報道です。調査は、5月9~14日に国内129市の16歳以上を対象に実施、2090人が回答しました。

 外国へ移りたいと答えた人数は、16歳以上は7000万人、16歳~24歳は1900万人に相当します。25~34歳では50%、35~44歳では44%でした。また、学歴の高いグループ、所得の多いグループほど移住希望者は多く、高等教育修了者は56%、上層階級は51%でした。

 2017年に米国への移住ビザ発給件数は3366件で、世界経済危機が始まった2008年当時の倍になっています。ポルトガル市民権の申請も増加しており、在サンパウロポルトガル領事館だけで16年以降5万件が承認され、学生、企業家、年金生活者へのビザ発給件数が倍増しています。

 バルセロナのラモン・リュイ大学経済学部、フラビオ・コミン教授は、「現在は移動が容易になったという変化の一方で、大きなフラストレーションもある。2010年頃のブラジル国民は、ブラジルに大きな期待を持っていたが、期待したほどよくはならなかった。そのショックが大きいようだ」とこうした傾向を説明しています。

W杯異聞 メキシコ人審判と間違われ脅迫受ける

 地元メディアによると、1対1の引き分けで終わったサッカー・ワールドカップ(W杯)のブラジル─スイス戦で主審を務めたメキシコ人審判員、セサル・ラモス氏と同姓同名のブラジル人が、ブラジルのサッカーファンから罵倒される被害に遭っています。

 批判の的になっているのは、ストックカー(市販車をベースにした改造車)レースのドライバー、セザル・ラモス氏です。ブラジル─スイス戦でブラジル側に不利な判定をしたと思われているメキシコ人審判員と間違われての抗議です。セザルとセサル、ブラジルとメキシコでは読み(発音)は異なりますが、文字にするとまったく同じ綴りで、ブラジルのサッカーファンは両者を混同しているのです。

 セザル氏はインスタグラムで、「フィリョ・ダ・プータ(馬鹿野郎)」「買収された審判」「あんたにいくら払ったんだ?」「泥棒審判」といった攻撃の例を公表し、脅迫に恐怖を感じているとしています。セザル氏はこうした嫌がらせに、フォロワーの1人が書き込んだ「皆さん、我々は間違った人を罵倒している」というコメントを紹介、人違いであることを訴えています。

サッカーW杯効果は6090億円

 地元メディアによると、クレジット保護サービスと全国商店経営者連合がサッカーW杯がブラジル経済にどんな効果をもたらすかを調査しました。調査で、消費者の約6000万人(消費者全体の51%に相当)がW杯に関連する何らかの製品を購入したり、サービスを受ける意向を持っており、商業及びサービス業全体に203億レアル(約6090億円)の収入をもたらすことが分かりました。調査は18歳以上の男女1061人を対象に実施され、全体の25%はW杯関連では支出しないと回答しています。

 試合観戦の際に友人または親類の家で食料品を購入すると答えた人は全体の91%に達し、飲み物を購入するのは87%で、バーやレストランなどの飲食店へ出掛けるのは62%でした。支出額は、自宅もしくは友人・親類で試合観戦の人は119レアル前後で、飲食店へ出向く人は128レアルでした。

 購入する食料品はビール(74%)、ソフトドリンク(72%)、水(69%)、おつまみ(56%)、シュラスコ(焼き肉)用品(49%)、軽食類(39%)、ポップコーン(37%)などでした。また、勝敗予想の賭けに参加すると答えたのは46%、スマートフォン用のインターネットデータサービスを利用するとしたのは38%、新しいテレビを購入するとした人は21%でした。

犯罪組織を14州で捜索

 地元メディアによると、サンパウロ州文民警察と検察局は14日、同州を拠点とする犯罪組織PCC(州都第一コマンド)国内拠点の捜査を開始し、75人を予防勾留しました。捜査は、PCCの幹部が収監されているサンパウロ州内の刑務所で手書きメモが発見されたことから開始され、当局は、ここに収監されている幹部が他州や近隣国で武器や麻薬の密売に関わる指令を出していたと見ています。

 サンパウロ州内のPCCメンバーは約1万900人と推定されています。サンパウロ州を除く国内のメンバーは過去4年で3000人から約2万人に増加したといわれ、パラナ州(2829人)、セアラー州(2582人)、ミナス・ジェライス州(1432人)3州が特に多くなっています。当局は、国内だけでなくボリビア、コロンビア、ガイアナパラグアイ、ペルーでもPCCメンバーが活動していると見ています。

 PCCは他州へも進出を図り、その州の犯罪組織と抗争事件が続発しています。ミナス・ジェライス州内各地で発生したバスへの放火など一連の事件も、この抗争の一環という見方が報じられています。

5~17歳の子供・未成年者200万人が就労

 アジェンシア・ブラジルの報道によると、全国児童労働防止撲滅フォーラムは12日、労働検察庁、国際労働機関の協力で「子供を保護しないことは未来を否定すること」をテーマにキャンペーン開始を発表しました。キャンペーンでは、農業や家内作業、麻薬の密売、性的搾取、都市部での未登録労働に焦点を当て、18歳未満のこうした労働への従事を撤廃することを目標にしています。

 同フォーラムは、こうした労働に5~17歳の子供・未成年者200万人以上が就労していると見ており、「この子供たちの将来はどうなるのか。働いている子供たちは、勉強への集中やエネルギーが不足している。国は全ての子供に質の高い公的教育を保証しているとは言えない。彼らを早期就労させることは、子供たちの未来を否定することになる」と警告しています。

 フォーラム関係者によると、最悪の児童労働形態の一つとされる農業に近年、5~9歳の子供の就労が増えていると語り、「児童労働の絶対数は都市部で多いように見えるが、農村部は集中していないだけで、都市部より多くの子供が働いている」と指摘しています。最新の全国家庭サンプル調査では、2015年に法律違反の就労をしていた子供・未成年者は270万人に上るという結果を得ています。

サッカーW杯に関心なしが5割

 フォーリャ紙12日の報道によると、調査会社ダタフォーリャが実施したロシアで開催されるサッカーW杯に関する意識調査で、W杯に関心がないと答えた回答者が過半数の53%を占めました。調査は国内174市の2824人を対象に行われました。

 1月の前回調査で関心がないと答えた人は42%でした。今回は大いに関心がある、中程度の関心があると答えたのはいずれも18%で、前回調査より減少しています。無関心と答えたのを男女別で見ると女性が61%と高く、年齢別では35~44歳層の57%が無関心と答えています。地方別では南部が59%で高くなっていました。

 同調査では48%がブラジルが今回のW杯で優勝すると考えています。ブラジル代表は、1次リーグではスイス(17日午後3時から)、コスタリカ(22日午前9時)、セルビア(27日午後3時)と熱戦を繰り広げます。(日時はいずれもブラジリア時間)

熱病流行の危険性高まる=保健省調査=

 フォーリャ紙が7日報じたところによると、国内全市の22%に相当する1153市でネッタイシマカが繁殖する環境下にあることが、保健省の調査で分かりました。ネッタイシマカデング熱、ジカ熱、チクングニア熱のウィルスを媒介するため、同省はこれらの熱病が新たに流行する危険性を指摘しています。

 ネッタイシマカの繁殖調査は、同省が各市と協力して3カ月ごとに実施しており、今回のデータは3月から4月にかけて収集したものです。データを見ると、1153市で調査した不動産の4%以上でネッタイシマカの存在が確認されています。この他2069市(昨年は1445市)を警戒地域としており、危険地域と警戒地域合わせると3222市になります。
 
保健省は「デング熱やその他の熱病の感染が弱まる秋と冬でも、ネッタイシマカの幼虫は繁殖する可能性がある。各市は蚊が繁殖しそうな場所の管理を強化してほしい」と語っています。既に産み付けられたネッタイシマカの卵から孵化した幼虫は、1年以上経過してから成長し、新たな卵を産み付け繁殖していきます。ある感染症医は、「状況は非常に深刻で、基礎衛生、防水、緑地保全の対策が必要だ。早急に対策を講じないと、蚊の繁殖を防げない」と警告しています。

ストによる農牧業の損失1500億円

 地元メディアによると、各業界団体は5月後半のトラック運転手ストの業界被害額を集計し発表しています。政府の応用経済研究院は農牧業全体の推計被害額を5日、50億レアル(約1500億円)を超えると発表しました。

 同院によれば、トラック運転手ストの混乱が正常化するには1カ月以上を要するとしており、数週間は消費者向けの価格が上昇する可能性を指摘しています。牛乳や鶏、豚、牛、果物の農家は損失額を40億レアル以上と試算しており、最も影響を受けた食肉部門は5億2000万ドル相当の製品出荷ができなかった、としています。