中南米の最新情報

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サンパウロ市が電線地中化で合意

 地元での報道によると、サンパウロ市のジョアン・ドリア市長は14日、電力供給会社のエレトロパウロ社や電気通信事業各社との間で、同市内の電線(電力線、通信線)延長52キロメートルを地下に埋設することで合意に達したと発表しました。短文投稿サイト「ツイッター」にジョアン・ドリア市長が投稿し明らかにしたものです。合意通りに地中化されれば、2000本以上の電柱がサンパウロ市内の街頭から消えることになります。

 今回の合意内容は、ボン・レチーロ、サンタ・セシーリア、ベラ・ビスタ、レプブリカ、ブラス、コンソラサン、ジャルヂン・パウリスタといったサンパウロ市中心部の117の街路で電線の地中化が進められます。

 ドリア市長はツイッターに投稿した文章で、「これは始まりにすぎない。我々の目標はもっと大きい」と述べています。同市長は年平均100キロメートルの電線を地中化したいとしています。サンパウロ市は「地中化にかかる費用はエレトロパウロ社及び電気通信企業各社が負担する」と語っています。

非正規品によるサンパウロ州の税収1700億円減

 地元メディアによれば、業界70団体が構成する「ブラジル合法市場防衛運動」のまとめで、市場に出回っている非正規品がサンパウロ州に与えた損害は2017年上半期(1~6月)だけで50億レアル(約1750億円)に上ることが判りました。密輸品であるたばこなどの非正規品からは税金が徴収できないのに、非正規品によって市場が荒らされ、本来徴収されるはずの税金が徴収できていないのが原因です。

 サンパウロ市内では、中心部だけでなく街の至る所で携帯電話用のUSBケーブルやイヤホン、時計、半ズボン、Tシャツ、メガネ、たばこ等の「非正規品」が販売されており、望めば誰でも簡単に購入することができます。これらが州の税収に大きな打撃を与えていて、なかでも密輸入のたばこの影響が大きいとしています。

 同運動は、サンパウロ州内ではパラグアイから密輸されている16ブランドのたばこが流通していると推定しており、ブラジル国内で流通している違法たばこの3分の1に相当します。この違法たばこでサンパウロ州政府は、今年上半期だけで16億レアル(約560億円)の税金を徴収し損なっています。関係者は「裕福な州の中で一番売れているたばこが違法製品であるとは、理解できない」と怒りを露わにしています。

 たばこ以外での損害額は、自動車部品5億レアル(約175億円)、電気電子製品4億レアル(約140億円)、衣料品2億5000万レアル(約87億5000万円)、飲料2億4000万レアル(約84億円)、電材1億7500万レアル(約61億2500万円)、メガネ1億2500万レアル(約43億7500万円)、高級ブランド品1億2000万レアル(約42億円)と推計されています。

大統領の起訴手続き中止

 国内メディアによると、連邦最高裁は10日、ペトロブラス汚職関連で起訴されていたテメル大統領の司法手続きを大統領在任中は停止すると発表しました。検察による最高裁への起訴は6月に行われていました。起訴手続きの停止は、下院での承認が得られなかったためです。

 大統領の起訴は、民間企業に便宜供与するため50万レアルの賄賂を受け取ったとして最高検から起訴されていました。起訴は取り下げられたわけではなく、大統領の任期中は手続きが停止されるだけで、2018年末にテメル氏が大統領を退任すれば、一審の裁判所で取扱いが再開され,司法的に特権を与えられる役職に就いたときは上位裁判所で開始されることになります。

国境治安強化で軍、警察の支援要請

 国内メディアによると、ベネズエラと国境を接する北部ロライマ州知事が8日、テメル大統領に国境の治安活動強化のため国軍、連邦警察の支援を要請しました。同州文民警察の犯罪統計報告では、国境地帯には多くの非合法ルートがあり、薬物、銃火器の取引や人身売買が横行しているとしています。

 現在、政治的・経済的に混乱しているベネズエラから多くの同国人がブラジルに不法入国しており、その数は現在までに3万人以上とみられます。ブラジルに入国したベネズエラ人の難民申請件数は今年上半期だけで約7600件に上っています。今回の州知事の要請は、難民申請の処理、国境地域の犯罪の捜査手続きの迅速化を目的としています。

 今回の要請が認められれば、3500人の陸軍兵士が国境パトロールに参加することになります。

五輪後のホテル業界 客室増や経済危機で苦境

 アジェンシア・ブラジルの報道によると、五輪から1年が過ぎたリオデジャネイロ市のホテル業界は、客室数の増加、州の経済危機、犯罪増加と言った悪いニュースが続き苦境に喘いでいます。ブラジルホテル産業協会のアルフレッド・ロペス会長は次のように話ししています。

 「激しい競争で宿泊価格の下落が起きている。客室数増加の投資は銀行融資によって行われ、今はその返済に迫られている。しかし、資金の不足と低い客室稼働率で思うようにいかない」

 リオのホテルチェーンでは2009年から16年の間に、客室数が3万室から6万室に増加しています。そのうち5000室は五輪後にオープンしました。この新規投資は、五輪を開催した都市は5年間、外国人観光客が25%増加するとの予測で行われました。

 ロペス会長は、「五輪後の最初の1年間は、確かに需要の伸びに供給が追いついていなかった。ここに来て客は減少を始めている。客室数増加以前の客室稼働率は年平均70%だったが、需要が倍増しなければ、稼働率は半分になる。現在、その状況に近い」と述べています。

リオ五輪から1年 施設の再利用進まず

 エスタード紙によると、五輪終了から1年経過したリオデジャネイロ市の五輪競技場や市内西部の五輪公園、自転車競技が行われたラジカル公園などの各スポーツ複合施設の利用や維持管理が、連邦政府やリオ市にとって大きな負担になっています。特に深刻なのはラジカル公園で、昨年12月以来閉鎖されたまま、利用される気配がありません。

 同公園は、市内の貧困市民のレジャーエリア、あるいはカヌースラロームやBMX自転車競技各選手のトレーニング場所として利用されるはずでした。現在、同公園維持のため毎月75万レアルをリオ市が出費しているにもかかわらず、五輪向けに建設された人工湖の水は濁り淀んでいます。リオ市スポーツ局は「同公園は50万平方メートルの広さがあり、3000万リットルの水が流れる急流のある複合施設。維持が困難で経費がかかる」と説明しています。同市の前市長は、「この公園が閉鎖されている理由がわからない。ここは2015年12月にオープン以来、自分が退くまで十分に機能していた」と首を傾げています。

 ラジカル公園に隣接する軍管轄地域のデオドロ公園の五輪施設は機能していますが、改修工事が必要で、その工事を数カ月間も待っています。この公園は射撃場、馬術フィールドホッケー近代五種用水泳センターとして五輪向けに改修され、青少年アリーナも増設されました。しかし、五輪終了後、通常使用向けに改修工事が必要ですが、数カ月経っても行なわれていません。改修工事担当のリオ2016五輪委員会は「改修を行うための資金160万レアルがない」としています。

 五輪の中心となった五輪公園は現在、週末に一般開放されています。カリオカ競技場1および2、自転車競技場、テニスセンターはスポーツ省の管理ですが、利用者が少なく、維持に年間4500万レアル出費しています。リオ市の担当施設はほとんど利用されていません。ハンドボール競技場は解体され学校になる予定ですが、資金不足のため工事は全く進んでいません。

 2020年には東京五輪が開催され、それに向け多額の税金を投入、施設を整備しています。税金を投入する以上はリオの二の舞にならぬよう、五輪後のことも考えて整備して貰いたいものです。

商業施設向け新製品=ネスレ=

 地元メディアによると、食品・飲料大手のネスレはコーヒーを入れる直前に豆を挽いて楽しむ焙煎済みコーヒー豆の製造に1000万レアル(約3億5000万円)を投資し、新たな分野に挑戦します。ネスレは、「新製品はこの先3年間で4億杯(コーヒー2000トン分)の需要を作り出す」としています。

 新製品はミナス・ジェライス州の山岳地帯で育ったアラビカ豆を100%使用し、サンパウロ州アララス市の工場で製品化されます。同製品はネスカフェ・ブランドのエスプレッソやカプチーノ、クリーミーな飲料といった異なるタイプがあり、その都度必要な量の豆を挽きマシンで提供します。

 ネスレの関係者は「ネスレはマシンを普及させるために食品分野の複数の企業とパートナーシップを結んだほか、地下鉄駅構内やフードトラックで営業している企業とも協力する」と語り、提供するマシンの普及に力を注ぐとしています。

大統領起訴を下院本会議が否決

 地元メディアによると、連邦検察庁が連邦最高裁判所に提出したテメル大統領収賄容疑の起訴の件で、下院本会議は2日、同起訴承認の是非を問う投票が行われ、起訴反対263票、起訴賛成227票で起訴が否決されました。これにより同起訴の司法手続きは、大統領の在任中は停止されます。今回の起訴案件を下院で最初に審議した憲法・法務委員会では、連立与党により多数の正委員の交代が行われ、大統領も下院での投票に先立ち、会合や食事、電話などで下院議員と話し合う場を持ったとされています。

 2日の本会議は、意見書の報告官と大統領弁護側の意見表明に続き、議員による意見表明が行われ、野党側から投票の延期を求める複数の要請が提出されましたが、全て否決されました。当初は、出席議員数が下院議長が投票を開始するための最低数とした342人に達しないのではとの予測もありましたが、正午過ぎに342人を越えました。定数に達した後、午後6時過ぎから、議員一人ずつがマイクを通じて投票意向を表明する形式で投票が行われました。出席議員数は492人で、棄権2票、欠席は19人でした。

与党の見通しより起訴反対が少数
 メディアの中には「投票結果は与党側の見通しを下回った」との報道も見られます。与党側は起訴手続き継続への反対票を270票以上と見ていたにもかかわらず、結果は263票でした。大統領が属するPMDB(民主運動党)でも6人が起訴賛成と投票し、連立与党のPSDB(社会民主党)では21議員が賛成票を投じました。

 テメル大統領は2日夜、下院での投票終了後に大統領府で会見し、「下院議会の判断と、我々の国を信じる全てのブラジル人に感謝したい」と述べ、政権による各種の改革を今後も進めていく意思を示しました。

男女別料金、サンパウロ州内では合法

 国内メディアによると、サンパウロの連邦民事裁判所は1日、ブラジル・バー・レストラン協会サンパウロ州支部の主張を支持し、男性客と女性客の間で料金に差を設けることは合法だと判断しました。ただ、この判断は、ブラジル・バー・レストラン協会サンパウロ州支部の会員に対してのみ有効で、それ以外の飲食店には適用されない、としています。

 法務公共保安省の下部組織である国家消費者局は今年7月3日、バーやレストラン、ナイトクラブ、バラーダ(ディスコ)などがイベントやパーティーの際に男女別料金を設定、徴収することは違法であり、1カ月以内にこれを撤廃せよとの通達を出していました。同局は、マーケティング戦略として女性を利用することは違法であり、それは人間の尊厳の原則、平等の原則に反するとしていました。この主張にブラジル・バー・レストラン協会サンパウロ州支部は、差別に当たらないとサンパウロの連邦民事裁判所に訴えていました。

 サンパウロ連邦民事裁判所は国家消費者局の主張に、ブラジル・バー・レストラン協会の男女別料金が弊害をもたらしているとは思えないとして、むしろ男女別料金の禁止は自由競争、自由な企業活動の妨げになるとの見解を示したものです。

フィリピン女性を奴隷にする富裕層

 国内メディアによると、サンパウロ州労働検察局は、サンパウロ市内及び同市を中心とする大サンパウロ都市圏内の富有家庭で、フィリピン女性など外国人が奴隷のような条件下で働かされている事実を掴み,捜査を始めました。当局は、彼らは人身売買でブラジルへ連れてこられたようなもの、と見ています。

 奴隷のような環境から脱出、フィリピンへの帰国に成功した女性は次のように話ししています。「2014年、フィリピンにいるとき、ブラジルで家政婦として働かないかと誘われた。条件は1週間44時間労働で約2000レアル(約7万円)の報酬、往復の飛行機代は無料、2年間働けば定住する権利を得られるというものだった。その誘いでブラジルに来たが、まるで違う条件で働かされた」。

 女性は帰国後、サンパウロ州労働検察局に「自由が奪われ、空腹で、約束の賃金は支払われなかった」と告発しました。女性の話によると労働時間は1日14時間にも及び、週休無しで働くことは何度もあった、といいます。

 検察当局は告発を受け、フィリピン人女性と類似したケースがないか捜査を続け、家政婦を求める家庭と外国人らの間に立つ仲介業者「グローバル・タレント」と「ナナ・フィリピーナ」の2社の存在を突き止めました。その2社の斡旋で、サンパウロ市内では180軒が告発された事例と同じような環境下でフィリピン人女性を働かせていました。ことが露見し仲介業者2社は労働者の待遇改善を約束する書類にサイン、その後、同様のケースは確認されなくなりました。

 今年に入って労働検察局は奴隷のような環境下で働かされているフィリピン人女性2人を発見し、現在、捜査をしています。同検察局は「報告では、労働者らは週44時間労働で報酬700ドル、残業手当付きという条件を提示されてブラジルへやってくる。しかし彼女達はブラジルで、その条件は反古にされる。これは詐欺だ。今後強制労働、長時間労働などについて捜査を進め、我々は適切な行動をとることになる」としています。