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食肉不正疑惑で各国が輸入制限措置

 農牧供給省の衛生検査官が賄賂を受け取り不正に衛生証明書を出しため基準を満たさない食肉製品が国内外で販売された問題で、ブラジルから食肉を輸入している国が対応を始めています。地元メディアによれば、17日に連邦警察が同疑惑の強制捜査を実行して以来、輸入の一時停止や製品の検査強化などの対応を取った国・地域は21日までに12カ国に達しています。

 今回の不正疑惑で捜査対象となっているのは国内21の生産施設で、パラナ州18カ所、ゴイアス州2カ所、サンタカタリーナ州1カ所です。連邦政府はこれらの施設からの輸出を停止しています。連邦警察による強制捜査の後、最初に対応が報じられたのは中国、韓国、チリ、欧州連合でした。中国、チリは食肉製品の輸入を一時停止し、韓国は検査を強化、欧州連合は捜査対象となっている21施設からの輸入を停止しました。

 捜査対象となった施設の食肉製品を輸入した国・地域は33に及びます。輸入制限措置を採る国は増加しており、香港、メキシコ、ジャマイカなどが輸入を一時停止、日本も21日、捜査対象となっている施設から出荷された鶏肉などの輸入を一時停止する措置に踏み切っています。スイスは4施設からの食肉製品輸入を停止し、ジャマイカは国民にブラジル産食肉製品を購入しないよう広報、スーパーマーケットから製品を撤去するよう命じています。アルゼンチン、米国はブラジルの食肉製品の検査を強化し、イスラエルはブラジル政府に対して情報提供を要請しています。

食肉検査不正の捜査対象企業の輸出停止

 地元メディアによると、国内の食肉加工業者の衛生検査で業者側からの賄賂の見返りに農牧供給省検査官が手心を加えた事件で農牧省は20日、同件で捜査対象となっている21の加工施設に対する輸出許可を停止すると発表しました。

 連邦警察が17日に始めた捜査で、賄賂の支払いのほか、不適切な加工、化学薬品を使った古い肉のごまかしなどが行われていたことが明らかになっています。同事件を受けて中国、韓国、チリ、欧州連合がブラジル産食肉製品輸入の一時停止、検査強化などの措置を採り、欧州連合は捜査対象となった企業の輸出停止をブラジル政府に求めていました。(筆者注:日本もブラジルからの食肉輸入の検査を厳しくしています)。マッジ農牧相は各国からの情報提供の要請に対応していくとしています。

 輸出停止となった企業の製品の国内市場での販売は、特別検査体制の下で継続して行われます。20日午後マッジ農牧相は、国内市場においてはより管理が行き届くことを挙げ、「現在も小売店等において捜査対象工場の製品のサンプル調査を行っている。仮に問題が検知された場合は商品回収等の措置を採る」という考えを述べました。

市民は肉を食べないと怒り
 ブラジルから筆者に寄せられた情報によると、国内はパニック状態にあり、食肉の売れ行きが一気に下降しています。市民たちは、「もう肉を食べる気がしない」という人もいて、スーパーの中には売り場から肉を撤去する店もあるそうです。

食肉検査めぐる不正疑惑 約30社捜査

 地元での報道によると、連邦警察は17日、国内の食肉加工業者の衛生検査で不正が行われていた疑いで、国内6州および連邦直轄区で強制捜査を行いました。食肉加工業者が農牧供給省の衛生検査官に賄賂を贈り、基準に適さない食品の衛生許可を得て国内外で販売していた疑いがもたれています。

 捜査対象は大手を含む食肉加工業者30社で、5カ所の工場に対しては業務一時停止の措置が採られました。勾留された関係者の中には大手食肉業者の重役も含まれ、関与が疑われる農牧省検査官は免職処分となっています。

 17日の捜査は1100人の連邦警察捜査官が参加した過去最大規模になり、27件の予防勾留令状と11件の一時勾留令状、個人・企業に対する計190件以上の捜索・押収令状が出され、パラナ、サンパウロ、サンタ・カタリーナ、リオ・グランデ・ド・スル、ミナス・ジェライス、ゴイアスおよび連邦直轄区の各地で強制捜査されました。

 サジア社やペルジゴン社の親会社BRF社や、セアラ社やビッグ・フランゴ社の親会社JBS社など、国内の主要な食肉加工業者も捜査対象になっており、パラナ州連邦裁判所は捜査対象者の資金10億レアルの封鎖を決定しました。

 今回の捜査は、農牧省の衛生検査官によって主導されていたと見られる不正の摘発を目的に行われ、関与した検査官は食肉業者から賄賂の支払いを受ける見返りに、検査を行うことなく衛生証明書を発行、基準を満たさない製品の生産を容易にしていました。食肉加工業者は賄賂を贈ることで、農牧省の検査官選考にも影響力を及ぼしていたと指摘されています。

 この捜査で、加工工場でアスコルビン酸を使って腐った肉の色付けが行われていたことや、期限切れ製品の再包装、腸詰製造の際に豚の頭の肉やボール紙が混ぜられていた事も明らかになっています。パラナ州第14連邦裁判所の判事は、農牧省検査官が賄賂を要求する際、「指」や「手袋」「書類」などの用語を使っていたと述べています。

 連邦警察では、2007年から16年まで、パラナ州の農務省事務所の監督だったダニエル・ゴンサルベス・フィーリョ検査官がこのグループを主導していたと見ています。09年から14年まで検査官を務めた現大手食肉企業の幹部ほか、同省の少なくとも他の8人の職員と組んでいたとしています

 強制捜査では、このグループに加わっていた疑いのある19人の検査官、大手を含む食肉加工業者の重役などのほか、腐った肉を使用したとして一部企業の従業員なども勾留の対象になりました。農牧省は同日、捜査対象となった5カ所の工場を業務停止にしたほか、疑惑への関与が疑われる職員33人を免職処分にしたと発表しました。

 テメル大統領は19日、ブラジルから食肉を輸入している各国の外交官と会い、今回の連邦警察の捜査対象となった食肉加工業者21施設の監査を行う特別チームを設置することを伝えました。調査を受けているのは農牧省1万1000人の職員のうち33人、国内4800以上の施設のうち21に過ぎないと述べ、今回の不正は一部のものが引き起こしたに過ぎないと説明しました。

輸入各国は輸入停止措置

 ブラジルから食肉製品を輸入している各国は、この事態に様々な反応を見せています。マッジ農牧相は同日、中国政府が同捜査についての説明を求め、説明がなされるまでブラジルからの輸入肉の貨物を港に留め置く措置を決めたことを明らかにしています。韓国はブラジルからの輸入鶏肉の検査を強化し、チリはブラジル産牛肉の輸入を一時停止しました。欧州連合も20日、ブラジルからの輸入肉を監視し、捜査で対象となっている施設からの輸出を一時停止するよう求めています。

 日本のメディアによると、厚労省は問題の工場1社から鶏肉を輸入しており、同工場で加工された鶏肉の輸入を保留にしています。ただ現在国内に流通している鶏肉に問題はないとしています。

燃料窃盗容疑者14人を拘束

 地元での報道によると、リオデジャネイロ州文民警察と連邦検察庁は16日、州内バイシャーダ・フルミネンセ地域に設置されているペトロブラス傘下トランスペトロのパイプラインから原油、燃料を盗んだ疑いのある14人を拘束しました。検察庁は、このグループが2016年に1400万リットルを盗んだとしています。同社の損害額は3300万レアルに上るとみられます。拘束は、リオ州ほかサンパウロ、ミナス・ジェライス各州で一斉に行われました。

 容疑者グループは15年6月から活動しており、検察庁は燃料の供給を閉鎖する必要なく非合法の誘導管を設置する穿孔技術を使用していたと見ています。

 この組織は、リオ、サンパウロ、ミナス各州に拠点をもつ3つのグループに分かれており、リオのグループが管への接続と燃料の抜き取り、他州への販売を担当し、他州のグループが燃料の受け取りを担当していました。ドゥケ・デ・カシアス市の元市議がこのグループを指揮していた疑いがもたれています。

 調べでは、このグループは原油を処理する製油施設も所有していました。拘束された容疑者の中には、ガソリンスタンドの経営者も含まれており、不正な出所の製品であることを知りながら転売していた疑いがもたれ、パイプに穴が開けられた地点の土地を賃貸していた土地所有者も拘束されました。

検事総長が最高裁に政治家の調査許可要請

 地元メディアによると、ロドリゴ・ジャノー検事総長は14日連邦最高裁判所に、ペトロブラス汚職に関わったとされる政治家など320件の捜査許可要請を送付しました。これは、汚職捜査の捜査対象になっている建設大手オデブレヒト・グループ役員が行った証言に基づき、名前が挙げられた政治家捜査の許可を申請するものです。報道では、調査開始許可を求める83件の中には現職閣僚も含まれているとしています。

 国会議員や閣僚の場合は特権があり、最高裁が認めないと捜査できません。320件の要請のうち211件は、この特権を持たない被疑者について証言された内容を下級裁判所に送付する要請です。

 最高裁の調査開始許可を求める対象の政治家には、ヌネス外相、パジーリャ官房長官、モレイラ・フランコ大統領府事務局長、カサビ科学通信相、アラウージョ都市相の5現職閣僚のほか、マイア下院議長、オリベイラ上院議長、PMDB(民主運動党)のロボン、ジュカー、カリェイロス各上議、PSDB(社会民主党)のセーラ、ネベス各上議の名前が私語されています。

元大統領の名前も
 このほか、ルーラ元大統領、ジルマ元大統領、パロッシ、マンテガ元大臣も対象に入っていますが、今は議員ではないため、下級裁判所で扱われる予定です。

日本人3人が強盗に襲われる=サンパウロ市内=

 在サンパウロ総領事館の発表によると、7日午後10時頃、サンパウロ市リベルダーデ区のコンセレイロ・フルタード街(東洋街にある広いバス通り)で日本人がピストルを持った強盗2人に襲われ、現金約500レアル(約18,000円)と旅券のコピーなどを奪われました。

 日本人人3人が車で信号待ちをしていたところ、突然2人組が現れ、日本人3人のうち2人に拳銃を突きつけました。拳銃を突きつけられた2人が携帯と財布等を差し出したところ、犯人はこれを奪って逃走しました。もう一人は盗難の被害はなく、3人とも負傷など身体的損傷はありませんでした。

 サンパウロの治安は極度に悪くなっており、夕方から夜間の外出は極力控えた方が良さそうです。サンパウロ事情に疎い旅行者、一時滞在者は特に注意が必要です。

臓器提供者が増加

 厚生省が9日に発表したところでは、ブラジル国内における移植用の臓器提供者が2016年は前年比で5%増加、過去最高の2983人になりました。人口100万人あたり14.6人の割合です。国内メディアが伝えています。

 厚生省の臓器提供者集計は01年から行われ、15年は2836人でした。16年は心臓移植の件数も前年比13%増加し、過去最高でした。臓器移植件数増加の背景を連邦政府は、16年6月に署名された法令によって空軍機による臓器輸送が可能となったことを指摘しています。臓器移植を待つ人は16年で約4万1000人で、2万4914人が腎臓移植の希望者です。

女性の46%が家庭外でも働きたい

 国連の専門機関である国際労働機関と世論調査コンサルティングのギャラップ社が「労働の実情」について調査、7日結果を発表しました。それによるとブラジル男性の32%が妻は仕事ではなく家にいて欲しいと考え、家の外で働いて欲しい男性は30%でした。女性は家の中と外の両方で働くのが良いと考えている男性が最も多く、36%に上りました。地元での報道です。

 この調査で女性にも同じ質問をしたところ、家にいることを選ぶとした女性は28%、外で仕事をしたい女性は26%、家の中と外の両方で働くのが良いとする女性は46%でした。就業機会の調査では男性の大多数が労働市場で女性は男性と同等の機会を持っているとしていますが、女性は就業条件が男性より悪いと考えています。

女性失業率は13.8%
 ブラジル地理統計院(IBGE)が2012年第1四半期に開始した調査によれば、この四半期のブラジル全体の失業率は7.9%でした。男女別では、男性の失業率が6.2%なのに対し女性は10.3%でした。その後の数年間で男女間の失業率の差はわずかに縮まりましたが、それでもまだ女性の失業率は男性に比べて高くなっています。地理統計院による最新の調査結果では、16年第4四半期のブラジル全体の失業率は12.0%。男性の失業率は全体よりも低い10.7%、女性の失業率は男性よりも3ポイント以上高い13.8%です。

大きい賃金格差
 求人・求職サイトのカトが行った賃金に関する調査では、研修生からマネジャー(部門管理者、支配人)まで、調査対象9職務のすべてにおいて女性の賃金が男性よりも下回っています。男女間の格差が最も激しかったコンサルタント職では、男性の賃金は女性の賃金よりも62.5%高くなっています。他の職務の男女間の賃金差は、オペレーター職58.0%、大卒専門職51.4%、技術専門職47.3%、調整役・管理職・取締役46.7%、スーパーバイザー28.1%、アナリスト20.4%、研修生・インターン16.4%、補助・助手9.0%といずれも男性優位でした。

 エンリケメイレレス財務相は9日、サンパウロ市内で開かれたエスタード・デ・サンパウロ紙のフォーラムの席上、男女間の賃金格差について言及、社会保障改革の新たなルールが承認された場合、この男女間の賃金格差は20年以内に解消されると語りました。

サンパウロ市の街頭カーニバル 盗難届2千件

 サンパウロ州文民警察の集計(速報値)によると、2017年のカーニバル期間の6日間(2月24日~3月1日)にサンパウロ市内各地で行われた街頭カーニバルで携帯電話を盗まれたとする被害届けが1954件に上りました。地元メディアが伝えています。報道によると、携帯電話の盗難届けの内訳は、市内中心部で行われた街頭カーニバルで盗まれたものが1150件、市内西部のピニェイロス地区で盗まれたのが804件になっています。
 この届出数は警察に届けを出したものだけで、実数は増えるかも知れませんし、逆に「盗難」として届けたものの、実際はパレードで歩いたり踊ったりしている時に落としてしまったのかも知れません。従って実数は若干の変動があると思われます。
 12日には同市内のパウリスタ大通りで、カーニバルで携帯電話を無くした人によるパレード「Bloco do “perdi” o Celular no Carnaval」が予定されています。これには3675人が参加を表明、1万433人が関心を示しているそうです。

誘拐、殺害の中国人ギャングを逮捕

 サンパウロ州文民警察は8日朝、同州内の中国人に犯罪行為を仕掛けている中国人犯罪組織の構成メンバーと疑われる中国人8人をサンパウロ市内及び同州沿岸地域で逮捕しました。地元メディアが報じています。文警の殺人・人身保護部で指揮をとるエリザベテ・サトウ捜査責任者は「合計で20人の中国人が指名手配されている」としており、逮捕者の数は今後さらに増加するとみられます。

 サトウ氏によると、この日の逮捕は、中国から渡ってきた二つの組織の動きを捜査していた文警からの請求で裁判所が許可しました。逮捕された中国人は、サンパウロ州内で通常の商業に従事する中国人に対し殺人、誘拐、恐喝を働いた容疑がかけられています。サトウ氏は「捜査は、パラグアイとアルゼンチンからブラジルへ入国した中国人が来て始まった。被害者は他の中国人から商品を購入して、主にサンパウロ市内中心部で働いていた中国人だ」と話しています。

 文警はここ数年の間に州内で起こった中国人に対する殺人、誘拐、恐喝事件を捜査し、容疑者を特定しました。サトウ氏によると、この日は20の逮捕状と33の捜索・押収令状を執行するため、文警の捜査官はサンパウロ市内及び海岸部の複数の都市で捜査・逮捕に当たりました。「我々は約10人の被害者を特定しているが、実際の被害者は100人以上だと確信している」と指摘しています。

 サンパウロにおける中国人ギャングの犯罪はここ数年目立っており、2015年にはギャングの構成員である中国人4人が、1人の中国人女性を誘拐し、サンパウロ市内で逮捕されています。当時、中国人による犯罪を告発した被害者の話をまとめると、被害者と犯罪者のプロフィルはいつも同じで、被害者は中国から来た商売人もしくはその親戚で、誘拐犯は三合会(さんごうかい、トライアド)と呼ばれる犯罪組織構成員の移住者。ギャングはサンパウロ市内中心部で仕事をする中国人経営者に対し、「保護料」を払うよう要求、経営者らは家族が暴行されたり誘拐、殺害されないよう、1000~1万レアルを支払っています。要求に応じない場合は暴行や誘拐、殺人の標的にされていました。