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女性への暴力は10億レアルの損失

 地元メディアによると、セアラー連邦大学学部長会で「女性への暴力によって10億レアル(約350億円)を失っている」とする調査結果が発表されました。同調査は「社会経済的条件と家庭内暴力、そして家族に関する調査」としてブラジル北東部9州の州都で1万人の女性を対象に2016年から実施されているもので、今回の発表は同調査の「第2回報告」の一部です。

 女性への暴力で生じる損失が「10億レアル」と数字で示されたのは今回が初めてです。この金額は、ブラジルの女性が家庭内暴力を受けることで仕事で集中力を欠いたり、意思決定が困難になったり、ミスを犯したり、何日も欠勤したりすることで生じる損失額としています。調査では、家庭内暴力を受けた女性は年間平均18日仕事を休み、同じ会社への勤務期間が短いという傾向が分かりました。

 暴力の影響は給料にも表れています。暴力を受けている女性はそうでない女性に比べて平均10%給料が低くなっています。フォルタレーザ市を例に取ると、暴力受けていない女性の平均時給は9.11レアルですが、家庭内暴力を受けている女性の平均は5.98レアルで34.4%低くなっています。同じく暴力を受けている女性の間でも肌の色による給料の格差もみられ、黒人女性が白人女性よりも平均で22%低くなっています。

 同調査担当したジョゼー・R・C・ジュニオル教授は「暴力は女性の価値を下げる。女性のエンパワーメント(能力開化)は働くことで実を結ぶ。男性が女性に暴力を振るえば、女性の能力に大きな影響を与え、女性がもたらす経済的恩恵にマイナスとなる」と話しています。同教授は北米での事例を挙げ、「暴力から女性労働者を回避させる方法は、女性の勤務場所もしくは勤務時間の変更が有効だ」とも話しました。