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3月、ブラジルが舞台の三島由紀夫戯曲「白蟻の巣」上演

 劇作家、三島由紀夫がブラジルを舞台に書いた戯曲「白蟻の巣」が3月、新国立劇場で上演されます。上演を記念し27日、東京・青山の駐日ブラジル大使館で記念トークイベントが行われました。イベントでの講演者は三島由紀夫文学館の松本徹館長、演劇芸術監督の宮田慶子さん、サンパウロ大学の二宮正人教授の3人で、それぞれの立場から「三島がこの作品を書いたのは、ブラジルに強く魅せられたためだ」と語りました。

 松本館長は「三島は米国経由でリオに行っているが、占領下の日本から米国に着いた三島は寂しい思いをしたようだ。米国からは飛行機でリオに向かい、夜中に着いた。その時見たリオの夜景に、ここで墜落しても悔いはないと思った、と書き残している。ブラジルにはそれほど強烈な印象を受けたと思われ、それが作品を書く動機になっている」と解説しました。同館長は、学習院(初等から高等科、大学は東京大学)の同窓生で元皇族の故・多羅間俊彦氏(当時はリンス市で農園経営)の話にも大きな影響を受け、戯曲制作に取り組んだとも指摘しました。

 「白蟻の巣」は三島が初めて手がけた長編戯曲で、この作品で三島の劇作家としての地位が確立したと言われる。宮田さんは「三島はブラジルの様々なことを吸収して、この作品を書き上げている。特に、農園で見た高さ1メートル近くもある蟻塚には強い興味を持ったようで、この作品のタイトルにさえしている」と語りました。

 「白蟻の巣」はブラジルの農家を舞台に、主人夫婦、使用人の運転手夫婦、お手伝い、農園管理者の6人がブラジルの赤い大地を背景に繰り広げる人間模様を描いた作品。三島は日本国内を舞台にした作品が多く、宮田さんは「海外を舞台にした珍しい作品」と説明しました。

 二宮教授は「私が移民でブラジルに着いたのは5歳の時で、三島が訪問した2年後。当時だったら三島は強烈なストリート・カーニバルを目にしただろうし、罪を犯しても懺悔(ざんげ)すれば許されるというカトリックの教えに関心を持ったと思う」と語り、見るもの聴くものすべてに興味を持ち吸収し、「帰国してから猛烈な創作意欲をかき立てられたのだろう」話した。

 「白蟻の巣」は3月2日から19日まで、東京・渋谷の新国立劇場で上演される。演出は気鋭の谷賢一、出演は平田満安蘭けいなど。