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環太平洋経済連携協定がブラジルに与える影響

 米国、カナダ、メキシコ、日本、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、シンガポールブルネイベトナム、ペルー、チリの12カ国が10月5日、環太平洋経済連携協定TPP)で大筋合意しました。同協定がブラジルにどのような影響を与えるか、メディアは次のように報じています。
 TPP協定の発効は16年からとの見方もありますが、現段階でははっきりとしていません。ブラジル産業界には、同協定はマイナスに働くのではないかと懸念する声が高まっています。たとえば、輸出及び投資の縮小という形でブラジルに悪影響を与えるというものです。
 生産する製品の35%をTPP参加国に輸出している全国工業連合のヂエゴ・ボノモ貿易部長は、「長期的な計画を立てている大企業各社は直ちに同協定を考慮し、自社の経営戦略を見直す必要がある。そうしなければブラジルもしくは他国から購入していた製品を協定参加国の製品に置き換えられる可能性がある」と説明、「影響は協定が発効する2〜4年前には現れるだろう」としています。

工業、農業に打撃

 かつて財務省の経済政策担当官を務め、現在はサンパウロ州カンピーナス大学で教鞭をとるエコノミスト、ジュリオ・ゴメス・デ・アルメイダ氏は「この協定に集まった地域は大規模な国際的企業にとって一層魅力的になる。グローバルチェーンへの参画が小さいブラジルのポジションは弱められる」と述べ、TPPの発効は、ブラジルにとって悪い結果をもたらすと見ています。同氏は、「現在ブラジルは工業化が進んでいる国として世界11位の位置にあり、世界の工業生産全体の1.6%を担っている。その一方で、世界全体の工業製品輸出に占める割合はわずか0.7%、31位にとどまっており、TPPがブラジルのこのポジションをさらに悪化させる可能性が強い」としています。
 サンパウロ州工業連盟のジョゼー・リカルド・ロリス理事は「ブラジルはまたもや、我々をますます脆弱にさせ、競争力を失わせる新たな貿易協定の出現を眺めるだけだ」と政府の姿勢を批判し、ブラジル農牧連合のアリンネ・オリベイラ国際関係担当専務理事は、「食肉や乳製品、果物の生産でブラジルと競合する国々が協定に加わっており、それらの国々はブラジル企業のこれまでの市場を奪うことになるだろう」と述べています。TPPは工業だけでなく農業部門にも深刻な影響をもたらすとの見方です。
 一方、ブラジル植物油産業協会のフルラン・アマラル経済部長は、「TPPは部分的に損失をもたらすが、大豆輸出にブレーキがかかるとは思えない。米国一国で世界の大豆需要を賄うことはできないからだ」と大豆輸出に限り、それほどの影響はないと見ています。