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労働者党と大統領への抗議激化

 地元メディアによると、ジルマ大統領(労働者党)は6日、政府への不信感を募らせている国民に向けテレビ演説を行いましたが、これが逆効果になっています。テレビを見た国民がブラジル国内の多くの都市で抗議の声を上げる事態に発展しているのです。住宅街ではマンションのベランダや街中に出た人々が鍋を打ち鳴らす「パネラッソ」や指笛を吹き鳴らす「アピタッソ」が繰り広げられ、サッカー・W杯観戦時に使われた「ブブゼラ」までも鳴り響いています。
 サンパウロ、リオ、べロ・オリゾンテ、サルバドールの各都市圏では、ジルマ大統領の演説が始まると抗議の音が激しさを増し、抗議のため家や自動車の照明を点滅させ、夜の街に「ジルマは辞任しろ!」「目を覚ませブラジル!」といった叫び声も飛び交いました。
 この日の政見放送はラジオとテレビで10分間、ブラジル全土に向け行われました。今年3月8日にジルマ大統領が国際女性デーを記念して演説を行った際と同様に、抗議の声は各都市の高級住宅街で激しかったとされています。

憎悪と保守化が進む

 7日付の地元紙にはジャーナリストのベルナルド・カルバーリョ氏(54)の評論が掲載され、現在のブラジルはが軍事政権後の最大の政治危機を迎えていると指摘しています。同氏は、政界に対する不信間は汚職スキャンダルだけに止まらず、インターネットで拡散される様々な情報がそれに拍車をかけ、現代社会特有の現象でもあるとも指摘しています。
 ブラジルでは大きく報じられませんでしたが、7月1日にジルマ大統領が米スタンフォード大学のイベントに同国のライス元国務長官と共に出席した折、ポルトガル語で「テロリスト! 人殺しの共産党員め!」と罵る言葉が会場に響きわたりました。声の主はブラジル人留学生のイゴル・ジリさんでした。彼は、フェイスブック内のグループ「蜂起者オンライン(Revoltados Online)」のメンバーで、ジルマ大統領を罵った瞬間を録画した動画をフェイスブックに投稿、これには150万回のアクセスがあったとされています。
 右派思想を持つ実業家の息子として1992年に生まれたジリさんは、「ルーラ前大統領の初就任時に労働者党に対する嫌悪感を持つようになった」と語ります。現在はジルマ大統領の失脚を目的とした全国規模のデモを今月16日に開催することを計画しており、既にフェイスブック上で参加を呼び掛けています。彼は、理想のブラジルの姿として「社会保障制度をカットして軍部を増大することで実現する強大な軍事国家」としています。
 ジャーナリストのカルバーリョ氏はこういった極端な考えの根源には憎悪の感情があるとして、「ブラジルだけの現象ではなくフランスや米国など民主主義の歴史が長い各国でも目立つようになった」と説明しています。インターネットが普及する以前の社会では、過激な発言を行うにはそれなりの覚悟も必要でした。現在は誰でも容易に発信することが可能です。情報を読み取る能力が受け手側に欠如していることと、経済危機で広がりつつある不安とが相まって、現在のブラジルでは議論の二極化が進んでいます。カルバーリョ氏は「労働者党の勢力は弱まるかもしれないが憎悪は消えず、社会をさらに保守的な方向に導いていく恐れがある」と警告を発しています。