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サッカーW杯会場は負の遺産

 地元での報道によると、2014年サッカー・ワールドカップ(W杯)ブラジル大会で新設及び改装された競技場が現在、各サッカークラブやブラジル政府、地方自治体、工事を請け負った企業などに大きな重荷になっています。工事が未完了のまま大会を開催し、現在も完工していない競技場もあるほか、全12会場のうち8会場で赤字経営を続けています。損失額は昨年だけで合計1億2600万レアルに上っています。
 サンパウロ市のイタケロン競技場も未完工の一つで、西側ビルの8階は工事のため現在も閉鎖されています。経営主体のサッカークラブ「コリンチャンス」は収益目的で同ビル内にショッピングセンターを誘致する計画ですが、全く進捗していません。工事を請け負うオデブレヒト社は今年1月に改装工事の終了を5月まで延ばしていましたが、予定はさらに延期され、今では完工予定日は「未定」となっています。W杯開催前のオープンが見込まれていた軽食レストラン(ランショネッテ)は、5月3日のパルメイラス戦の後でようやく1店目がオープンしただけです。
 イタケロン競技場は総工費11億円の予算で開始しましたが、現在も競技場内の通路にはセメント袋や資材が置かれたままになっています。完工しないままコリンチャンスは来月以降、社会経済開発銀行への返済を開始しなければなりません。14年度は1100万レアルの黒字でしたが、毎月500万レアルの返済で経営が不安定になる可能性が指摘されています。
 観客動員が順調なイタケロン競技場はまだ良いほうで、リオ市のマラカナン競技場やベロ・オリゾンテ市のミネイロン競技場といった強豪クラブの本拠地として使用されている競技場では空席が目立ちます。クラブ側によると工事請負会社とサッカー連盟が試合の収益から受け取る割合を上げ続けているためチケットの上昇が止まらず、各クラブはW杯会場となった競技場での試合開催を避ける傾向にあります。
 クリチバレシフェクイアバ、リオ、サルバドール、ブラジリア、マナウスフォルタレーザ各都市の8競技場は赤字となっており、工事費の返済が大きな負担になっています。