中南米の最新情報

NPOチャレンジブラジルが、ブラジルを中心に中南米のニュースをお届けします。

W杯は小売業に悪影響

 地元メディアによると、サッカーW杯ブラジル大会がブラジルにもたらす経済効果は限定的で、逆にマイナスの影響が大きく膨らむとの見方が広がっています。試合開催日が「休日」となることが小売業にマイナスではないのか? 旅行客の増加で大幅な増収が期待できると見られていた旅行・観光業は好調なのか? 懐疑的な見方が広がっています。
 ブラジルの小売業者は同大会は商売にマイナスに働くのではないかと懸念しています。全国商業連合がW杯2002年大会から実施している調査では、同大会が実施される2カ月間の「限定的小売り」(varejo restrito、自動車及び建材を除く小売り)が通常年の同じ時期に比べて0.7%落ち込むとしています。同連合のエコノミスト、ファビオ・ベンテス氏は、今年6、7月に開催されるW杯によってブラジル国内の限定的小売りは15億レアル(約675億円)の売り上げを失うと試算しています。
 W杯が開幕する6月12日はブラジルでは「恋人の日」です。多くの恋人や夫婦が互いにプレゼントを交換したりレストランで食事を楽しんだりします。このため小売業や外食・サービス業では特需を期待できます。しかし、今年はW杯開幕日に当たり、「休日」とする自治体や企業が多く、市民の外出が鈍り、例年のような消費拡大が期待できないと見ています。

ビジネス需要減少で『スカスカ』

 W杯開催期間中及びその前後には国内外の旅行者がブラジル中を飛び回り、旅行・観光関連産業は大いに潤うと見られていましたが、実はその逆で、ブラジルの観光業界はW杯によっ て損失を受けています。ブラジル観光事業者協会のマルコ・フェラズ会長は「レジャーもビジネスも、旅行・観光業は全体的に落ち込んでいる」と話しています。
 同氏によると、W杯開幕前20日以内の同市内ホテルの客室稼働率(予約率)は36%と低迷しています。同氏は「W杯の開催期間中、通常は様々な動きがあるサンパウロ市内の企業・団体関係のイベントは活気がありません。多くの施設が遊んでいる状態です」と述べ、ビジネス需要が激減し、通常年には埋まっている客室や催事場の予約が現時点で『スカスカ』 だと話しています。
 同氏は、試合観戦チケットの販売における国際サッカー連盟FIFA)の対応もまた、旅行・ 観光業界に損失をもたらした要因の一つだと指摘します。FIFAがチケットの販売を自由化しなかったことで旅行・観光業者らは顧客に対してチ ケット付きパッケージツアーを提供することができませんでした。「以前はパッケージツアーを購入した人は試合のチケットを手に入れることができたのに、今回はそれができなかった。こんなことは今回が初めてだ」と話しています。
 試合観戦のために国内を移動する機会を利用して各地を周遊する人もいるはずですが、フェラズ氏によると、インターネットで今大会のチケットを購入したブラジル人らの『観戦旅行』の期間は、日帰りもしくはせ いぜい1泊2日程度。「彼らは15日間も周遊しない。我々は飛行機をチャーターすることもなければ、ホテルを押さえることも、観光のために現地のサービ スを利用することもなかった」と、W杯観戦客らは旅行・観光業界にとって『うまみがない旅行者』のようです。