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エイズ医療に新たな光

 地元メディアによると、国家サニタリー監督庁がエイズの新薬を3月から統一医療保健システムの病院で無料配布する可能性が高まったと報じています。話題の新薬は2012年の発表後から患者やその家族たちが待ち続けてきたもので、既に治療に使用されているテノフォビルとラミブジンの2剤を配合したものです。新薬を開発したブランベール社との共同製造を開始するにあたって、厚生省の製薬センター「ファルマギーニョス」が国家サニタリー監督庁から製造許可登録を得るための手続きを進めています。
 現在のエイズ治療は、世界保健機構(WHO)の勧告に従って患者によっては10種類以上もの異なる薬を併用する「カクテル療法」が一般的に行われているため、2剤配合薬の使用にはエイズ患者の生活の質を高め飲み忘れを最小限に防ぐなど、安全性が向上すると期待されています。感染症医のリジア・ブリット氏は「いつになったら2剤配合薬が統一医療保健システムから配給されるのかという質問を患者から頻繁に受けている。12年に新薬プロジェクトが発表されて以来、患者の間で期待が高まっている」と述べています。
 現在、統一医療保健システムで治療を受けているエイズ患者は31万人に上ります。

エイズワクチン

 サンパウロ総合大学でもエイズワクチン開発の研究が行われており、ヒトを対象とする臨床試験の1段階前となるサルを使った実験に進む所まで来ています。同大学のエイズワクチン開発プロジェクトチームはサルを用いた予備試験で非常に良い結果が得られたと語っています。チームを率いるエデシオ・クーニャ・ネト氏は「ハツカネズミより5〜10倍も高い免疫反応が見られた」としています。
 同ワクチンは細菌から取り出したDNAにエイズを発症するヒト免疫不全ウイルス(HIVウイルス)のペプチド(アミノ酸の化合物)を発現する遺伝子を組み込んで製造され、DNAワクチンという遺伝子組み換えワクチンの一種です。この遺伝子組み換えDNAを動物の体内に導入すると体内でもペプチドが形成され、その結果エイズウイルスに対する抗体が形成される仕組みです。
 今回行われるサルでの予備実験の結果が良ければヒトでの臨床試験へと移行する予定です。このため同大学研究チームは2億5000万レアル規模の予算が計上されているヒト臨床試験を共同で行う民間企業を探しています。