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30万余の出稼ぎに試練の時代

 アメリカに端を発した金融恐慌の余波を受け急激な円高に見舞われた日本では、輸出企業を中心に打撃を受け、減産を強いられた企業の中には、早々と派遣作業員の解雇をするところが現れています。最も弱い立場にいるブラジルからの出稼ぎ労働者30万人の中にも、解雇の憂き目に遭っている人が少なくありません。
 出稼ぎ者たちの相談に当たっている海外日系人相談センター(神奈川県横浜市)にも、秋口から解雇に関する相談者が増えています。これまでは社会保障や賃金などに対する相談が多かったのに、10月に入ってからは相談の6割近くが解雇に関するものだといいます。
 出稼ぎの解雇では、長野県上田市では一挙に400人も解雇されたケースもあるようですし、出稼ぎ者たちは生活の不安に襲われているようです。解雇による収入減で、ブラジルで大学に通っている子どもに学資が送れなくなり、子どもは大学を休学せざるを得なくなった、といった深刻なケースも出てきています。
 ただ、解雇されたから直ぐ帰国という動きは今のところ見られず、ブラジル旅行者を専門に扱う旅行代理店にも、帰国客が増えているという事実はないようです。ある旅行代理店の幹部は、「出稼ぎの場合、直接雇用は少なく、派遣が多い。従って自宅待機というケースも多く、派遣会社が新たな仕事を探しているというところではないだろうか。今後、本当に仕事がなければ、帰国者が増加することも考えられる」と話しています。
 こうした雇用の悪化については厚生労働省でも注目しています。雇用の調整が始まったことはすでに把握、ブラジル日系人に限らず、外国人の解雇が増えていることも掴んでいるようです。同省としては、外国人の失業問題についても対策を始めており、外国人が集住している地域のハローワーク(昔の職業安定所)には外国語の出来る相談員を重点的に配備するなどして、外国人の再就職の斡旋を積極的に行っています。同省では、「職種にこだわらなければ、再就職の道は十分にあるはず」と話しています。