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ジェンロ法相が軍政の政治犯迫害を蒸し返す

 タルソ・ジエンロ法相が7月末、法務省が行った軍事独裁政権時代に行われた政治犯に対する非人権的扱いの責任を問う公聴会で、過去を蒸し返す発言を行ない注目されています。大方の見方は選挙戦に向けたパフォーマンスと見られていますが、この発言が軍部を刺激し、大統領府も事態を憂慮しています。
 法相が取り上げた非人権的行為は1964〜85年の軍事政権に遡ります。当時の政治犯に対する拷問及び殺害を含むもので、法相は非人権的行為をおかした軍人、警察官、国家エージエントは処罰されるべきとして、それらの責任を追及したものです。法相は軍事独裁政権時代の拷問や非人権的行為は政治的犯罪ではなく通常の犯罪であるとして、これに関わった軍人や国家エージェントの関係者は特赦令(1979年)の範囲に入らないと主張しているのです。これに対しルーラ大統領は、議論に巻き込まれるのをさけるべく、公式なテーマには取りあげず、コメントもしていません。
 この意見表明に軍部はいきり立ち、ジョビン国防相は、「すでに特赦令がすべてを包含し目的を果たしたことだし、いまさら過去を掘り起こして変更できるものではない」と軍部をなだめにかかっています。 
 しかし、退役軍人たちは納得せず、「それなら今の政府高官たちのテロリスト時代のことを明らかにする。彼らは殺人、誘拐、公金恐喝などを行った」とのべ、このまま議論が白熱化してくれば、政界は異常な雰囲気に包まれそうです。退役軍人たちは、与党PT(労働者党)の有力者及び大臣、元大臣らの当時の写真を披露するとしており、その中にはジョゼ・ジルセウ元官房長官、ジウマ・ルセフ現官房長官、タルソ・ジエンロ現法相、フランクリン・マルチンス現通信相、カルロス・ミンキ現環境相パウロ・ヴァヌチ特別人権担当局長、PTのジョゼ・ジェノイーノ現下院議員も含まれているそうです。
 特赦令は1979年、ジョン・フィゲイレード大統領時代に公布され、それまで政治犯罪を犯した人々のすべての政治追放が赦されました(1961年9月2日〜1979年8月15日)。最高裁判事の中には、同特赦令は左翼ゲリラだけではなく、行き過ぎのあった軍人たちにも適用された。したがって、それを再び持ち出して見直すとなれば、左翼闘士らにも累が及ぶとの意見です。