中南米の最新情報

NPOチャレンジブラジルが、ブラジルを中心に中南米のニュースをお届けします。

南東部で猛威を振るう黄熱病

 地元での報道によると、サンパウロ州内で黄熱病による死亡が激増しています。同州保健局調査では、サンパウロ州内で2017年1年間で38人が黄熱病で死亡しました。今年に入ってからも黄熱病の猛威は続き、8月までで昨年の4.6倍に相当する176人が死亡しています。州保健局は、年末までにさらに増えると予想しています。

 黄熱病による死者が増加しているにもかかわらず、黄熱病ワクチンの接種がなかなか進んでいません。保健局は州民の95%がワクチンの接種を受けることを目標に活動していますが、現在、州民の接種率は70%と捗っていません。

 黄熱病の罹患者は主に南東部で増加しています。保健省によると、17年7月から18年6月までに南東部各州で確認された罹患者の数は、ミナス・ジェライス州520人、サンパウロ州516人、リオ州223人、エスピリト・サント州6人となっています。その他、国内全体で1232人が黄熱病の疑いがあるとして調査中です。

零細・小企業517万社が資金ショート

 国内での報道によると、セラーザ・エクスペリアンが13日、6月の時点で延滞債務を抱えている零細・小規模企業が517万4000社と発表しました。これは過去最多の前月(512万2000社)より1%多く、2カ月続けて最多記録を更新しています。対前年同月比では9.5%(約44万7000社)増です。

 セラーザは、「零細・小規模企業は、ブラジル経済がゆっくりとした成長を始めたことで原材料費が上昇、増加する運営資金がショートしデフォルト(債務不履行)に陥っている」と見ています。デフォルト状態にある零細・小規模企業を産業別に見ると、46.5%がサービス業が占め、44.5%が商業、8.6%が工業です。

 また、デフォルト企業の地方別では、54.3%がサンパウロ、リオ両州の南東部に集中し、北東部は16.1%、南部は15.8%、中西部は8.7%、北部は5.2%でした。

長期失業者過去最多

 各メディアによると、ブラジル地理統計院(IBGE)が「全国家庭サンプル継続調査」(4~6月)の結果を16日発表し、国内には2年以上も求職活動を行っている失業者が316万2000人もいる、としています。この数字は対前年同期比8.1%増で、統計史上最多になっています。

 発表によれば、求職期間が1年以上2年未満の失業者は全国に185万7000人、1カ月以上1年未満の失業者は607万9000人となっています。職探しを始めて1カ月未満の人は186万9000人でした。全体の失業率は12.4%で、白人の失業率は9.9%と全体よりも低かったのに対し、黒人は15.0%、褐色人は14.4%といずれも白人を上回り、同調査で統計院は、「黒人及び褐色人の失業率が白人に比べて高い」と指摘しています。

盗難被害で余儀なくされるセキュリティ投資

 国内メディアによると、スーパーマーケットや衣料品販売の小売店が、多発する商品の盗難で盗難予防の強化に追われてています。景気が思わしくない中で小売業界の経営者は、利益が大きく損なわれる販売店内での窃盗(万引き)や強盗の増加に、セキュリティ強化への投資を余儀なくされ悲鳴を上げています。中でもスーパーマーケットや薬局・薬店、衣料品店の被害が多く、これらの経営者は保安システムの強化を急いでいます。

 ブラジル損害予防協会は「ここ数年間、窃盗・強盗が急増している。連邦政府が治安維持に乗り出しているリオ州でさえ、状況は悪化の一途だ」と犯罪の増加を指摘しています。リオ市のリオ小売幹部クラブによると、リオ市内の小売業者は18年上半期(1~6月)だけで合計9億レアル(約270億円)をセキュリティ強化に投資しており、投資金は17年上半期より20%増加しています。

 損害予防協会によると、被害額が大きいのは大手スーパーマーケット各社、近年急速に店舗網を拡大している薬局・薬店業界、衣料品販売店としています。設置した小売店は防犯用の機器を設置するだけではなく、セキュリティシステムに対処できるよう従業員の訓練が欠かせません。投資は、機器だけでなく「人」にも必要で、資金は膨れ上がっています。

 ブラジル・スーパーマーケット協会の調査によれば、17年の食品小売部門の損失額は64億レアル(約1920億円)で、損失の内訳は商
品の汚損や破損、消費期限切れなどによるロスが36%、盗難が25%になっています。万引きされる品は栄養ドリンク、ビール、牛肉、チョコレート、チーズがベスト5です。

全国で殺人、女性殺害捜査で600人を拘束

 各メディアによると、全州の文民警察が24日朝から未遂を含む殺人事件、フェミサイド(性別的要因での女性殺害)事件の一斉捜査に着手、17州で643人の容疑者を勾留しました。捜査は、全国文民警察指導者審議会が指揮して実行されました。捜査は公共保安省も支援、全国で5000人の文民警察官が動員されました。

 公共保安省ジュングマン大臣は同捜査を「警察と検察、司法の統合による保安システムを機能させたものだ」と語り、暴力、フェミサイドの撲滅に加え、家庭内暴力被害者の女性を保護する目的で行ったとしています。

 今回は殺人、フェミサイドの容疑者のほか、女性の保護措置を履行しなかった男性も捜査対象になりました。警察によれば、24日に643人の容疑者を逮捕したほか、61人の未成年者を拘束、32点の銃器も押収しました。逮捕者は最終的に1000人に達する見込みです。

リオ五輪開催の経費未払いやプロジェクト停滞

 ニュースサイトG1によると、リオデジャネイロでオリンピック(五輪)から2年が過ぎた今も請負企業への支払いの停滞、公約したプロジェクトも実行されていません。連邦検察庁は、支出額は当初予算の70億レアルを大幅に上回ると見ており、リオ五輪組織委員会は正確な債務額は9月までに集計するとしています。

 12年のロンドン五輪リオ五輪でも請負企業として五輪に携わったフランスの企業には、現在も約5200万レアルの未払金が残っています。メディアが「世界最大のテント」と呼んだ7500人の選手達を受け入れる食堂を架設したポルトガル企業は、契約金額の20%減額を受け入れざるを得ませんでした。同社は「オリンピックで世界中のメディアを応対する仕事は夢のようであり、やりがいのある仕事だった。しかし、債務額を20%減らさなければ支払いが受けられなかった」と話しています。

 リオ五輪組織委員会は、「今年9月までに正確な債務額が明らかにする。10月初めまでには支払いの準備が整うだろう。どのくらいの金額かは今は言えない」と説明しています。連邦検察庁五輪競技会グループは、「同イベントの支出は当初予算を約30億レアル上回る」との見方をしています。

 このほか組織委員会は、五輪後に約1万3000の苗をデオドロ地区に植え、「アスリートの森」を造る計画を公約しましたが、2年が過ぎた今も苗は成長しているのに植樹されていません。国家会計検査院は、公約の実行を求めています。

ブラジルのアプリ広告市場30億ドル

 各メディアによると、モバイル広告効果測定プラットフォーム「アップスフライヤー」の調査で、ブラジルのアプリ広告市場は年間30億ドルと判りました。アプリ広告とは、主にスマートフォンスマホ)やタブレット端末向けのアプリケーションソフトウェア(応用ソフトウェア)を操作する際に画面に表示される広告のことです。

 同調査では、アプリケーションソフトの取得と利用を促すキャンペーンだけで、世界のモバイル機器業界は1420億ドルの規模としています。ラテンアメリカ地域のアプリ広告への支出額は48億ドルで、この70%がブラジルに投下されています。

 アップスフライヤーによると、2016年6月には、ブラジル国内におけるアプリケーション・インストールの18%が非オーガニック(有料広告等を経由したもの)で、82%がオーガニック(検索結果などからのインストール)でした。18年6月は非オーガニックが37%、オーガニックが63%になっています。

大統領選投票動向はルーラ氏が37%でトップ

 国内メディアの報道によると、調査会社Ibopeは20日、出馬届け出終了後の大統領選投票動向調査の結果を発表しました。発表によると、届け出を行った13候補の中で最も多く支持を受けたのは37%から支持されたルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ元大統領(労働者党)でした。

 ルーラ氏に次いで支持されたのはジャイル・ボルソナロ下院議員(自由社会党)で18%、マリーナ・シルバ元大臣(持続可能性ネットワーク)が6%、シロ・ゴメス元大臣(民主労働党)とジェラルド・アルキミン前サンパウロ州知事(ブラジル社会民主党)が5%、アルバロ・ヂアス上議(ポデモス)が3%と続きました。投票先無しとしたのは16%でした。

 支持者の多いルーラ氏は現在、収賄などで2審有罪判決を受けて収監されています。フィシャ・リンパ法では、控訴審で有罪判決を受けた人の被選挙資格は停止されると定められており、連邦検察庁は選挙高等裁判所に、ルーラ氏の立候補登録に不服申し立てを行っています。同氏の出馬の可否は、9月に入ってから選挙高等裁判所が判断します。

 今回の調査では、ルーラ氏が出馬できず、同氏の副大統領候補フェルナンド・ハダッド元サンパウロ市長が労働者党の候補となった場合、支持はボルソナロ氏(20%)に集まり、シルバ氏12%、ゴメス氏9%、アルキミン氏7%、ハダッド氏4%、ヂアス氏3%と続いています。白票、無効票とした人は29%を占めました。

フォルクスワーゲンが生産調整で一斉休暇

 自動車メーカーのフォルクスワーゲンVW)社は20日サンパウロ州タウバテ市にある同社工場を約1カ月間の一斉休暇に入りました。休暇は今年9月18日までで、その後は通常に戻ります。国内メディアの報道です。

 「up!」「Gol」「Voyage」の3車種を製造するVW工場は3100人が働いています。同社は一斉休暇の理由を「市場の需要に合わせて生産を調整するため」としています。

女性、黒人、身体障害者が採用選考で差別感じる

 国内メディアによると、人材の募集及び選考のための科学技術的解決策を開発・提供する「Vagas.com」の調査で、女性や黒人、身体障害者、高齢者が人材募集や採用選考の過程で差別を受けたと感じていることがわかりました。

 調査は2月6日から3月13日に実施され、3200人以上の求人応募者から回答を得ました。採用選考において「差別で傷付けられた」と感じた人は50%に上っています。差別を感じた人の54%は女性で、55%は黒人、59%は身体障害者、64%は年齢55歳以上の高齢者、59%は大学院卒の高学歴者でした。差別された理由は、年齢(37%)、住んでいる場所(15%)、人種/民族(12%)、社会的地位(11%)、体重(10%)、出身大学(9%)、性別(6%)、宗教または信念(5%)、身体の障害(1%)──などでした。

 ブラジルの求人・求職ウェブサイト大手「Catho」のキャリアカウンセラーは「残念なことに、これらの状況は労働市場で起こり得ること。しかし、企業各社は技能や経験に注目し、多様性を重視するようになって改善されつつある」と話しています。