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ジルマ・テメル両氏の当選は有効

 2014年の大統領選挙でジルマ前大統領(PT=労働者等)を正大統領、テメル現大統領(PMDB=ブラジル民主運動党)を副大統領候補として候補者連記名簿を示し運動、当選した件で、ブラジル社会民主党が不正があったと当選無効を訴え、選挙高等裁判所は6日から審理していました。9日夜、7人の判事による投票が行われ、過半数となる4人の判事が当選有効との判断を示しました。国内メディアが伝えています。

 6日からの審理では、ジルマ、テメル両氏の弁護側が「建設会社幹部による司法取引証言は14年に起こされた訴えには含まれていなかったもので、証拠として考慮されるべきではない」と主張しました。これに対し選挙高裁の報告官は、「ブラジル社会民主党が訴えを起こした時点でペトロブラス汚職に関連した資金の可能性が指摘されていた」と反論、証拠採用するよう求めました。判事7人のうち4人は、建設会社幹部の証言を証拠採用することに反対の姿勢を見せ、弁護側の主張に傾いていました。

 投票では、予想されたとおり4人の判事が「当選を無効とする十分な証拠はない」と当選有効と判断し、2判事が当選無効と判断しました。当選を有効とした判事は、建設会社の司法取引証言は14年時点にはなく、審理の材料には含められないとの認識を示し、汚職の資金が選挙運動に供給されたと結論付けるには十分な根拠がないと、これまでの考えを踏襲しました。「大統領の任期の剥奪は、明白な状況がなければ行うべきではない」という原則論を重視したと言えます。

新車販売17%の伸び

 全国自動車販売業者連盟(自販連)の発表によると、2017年5月のブラジル国内の新車販売台数(登録ベース)は乗用車、軽商用車、トラック、バスを合わせて19万5568台で、前月を24.63%、16年5月を16.77%、それぞれ上回りました。今年1~5月の累計販売台数は16年同時期に対して1.57%増となり、年初来の累計としては14年2月以来39カ月ぶりの前年同期比プラスです。各メディアが報じています。

 今年5月の販売の伸びは乗用車と軽商用車が牽引しました。乗用車と軽商用車を合わせた販売数は昨年5月に対して17.26%増と、対前年同月比としては14年2月以来となる二桁の伸びです。自販連のアラリコ・アスンソン・ジュニオル会長は「1営業日当たり販売数の伸びを維持できれば(前年に対して)2.04%のプラス成長を達成できる」と語ります。

 アスンソン会長は「昨今の不確実な政治環境の中でも景気は回復傾向にある」と前向きに捉え、今年第1四半期の国内総生産GDP)が9四半期ぶりにプラス成長となったこともあり、「我々の業界も上向きつつある」と明るさを見せました。

最多は1万5000台のオニキス
 今年5月に最も多く売れた車種は、乗用車ではゼネラル・モーターズのオニキス(GM ONIX)、軽商用車はフィアットストラーダ(FIAT STRADA)でした。日本のメーカーの車ではトヨタ自動車カローラとハイラックスがそれぞれの部門で最多で、カローラの販売数は前月比11.8%増、前年同月比2.3%増の5553台、ハイラックスは25.3%増、7.7%増の3151台でした。

 乗用車と軽商用車を合算した今年5月のメーカー別シェア上位はGM(17.69%)、フィアット(13.64%)、フォルクスワーゲン(VW、12.83%)、フォード(FORD、9.85%)、現代自動車(HYUNDAI、9.20%)となっています。上位5社の中では現代自が唯一、前月からシェアを落としました。日本勢はトヨタが8.72%で6位、ホンダが6.60%で8位、日産自動車が2.68%で10位でした。

テメル大統領に新たな疑惑

 国内メディアが、テメル大統領が副大統領在任中の2011年に家族をサンパウロからバイーア州まで食肉加工大手JBS社オーナーのジョエズレイ・バチスタ氏が所有する小型ジェット機を利用し連れて行った、との疑惑を報じています。JBS社と親会社J&Fはペトロブラス汚職で捜査対象となっている企業で、同社幹部は司法取引でテメル大統領への違法な献金を証言しています。ジェット機利用の件は、テメル氏と同社の癒着ぶりを示すと注目されています。

 各メディアの報道では、バチスタ氏は「テメル氏が副大統領就任間もない11年1月、テメル氏と夫人がバチスタ氏の小型機で旅行をした」と証言し、飛行日の搭乗記録も提出しています。

 大統領府は、テメル大統領が民間所有の航空機で11年1月12日に家族を連れてサンパウロ市からバイーア州コマンダトゥーバへ移動し、テメル氏はそのまま副大統領職務をこなすためブラジリアへ向かったことを確認した、と発表しています。テメル氏はその飛行機が誰の所有か知らず、使用料金の支払いは行っていないとも発表しました。

 民間ジェット機利用の報道に大統領府は最初、「テメル氏がコマンダトゥーバへ行ったのは同年4月で、空軍機で移動した」と説明していました。その後、民間機を使用したと訂正しました。フォーリャ紙は、「バチスタ氏がテメル氏一家を迎えるため機内に花を用意したことに対し、テメル氏から感謝を伝える電話を受けた」と、裏付けとも言える内容を報じています。

建設会社証言の証拠採用で対立=大統領当選無効審理=

 2014年の大統領選挙で正副大統領として当選したジルマ、テメル両氏の当選無効を訴えた審理が6日から選挙高等裁判所で始まりました。審理で弁護側は建設会社証言の証拠採用に異議を申し立て、報告官は異議を退け証拠採用するよう主張しました。国内メディアが報じています。

 今回の訴えはブラジル民主社会党が起こしたもので、「14年の大統領選はジルマ、テメル両氏の選挙運動が違法に行われ当選は無効」と主張しています。違法性について同党は「未申告の選挙資金口座にペトロブラス汚職に絡んだ企業から不正な資金を受領している可能性がある」と指摘しています。弁護側はいずれも不正への関与を否定しました。これに対し選挙高裁の報告官は、「ペトロブラス汚職の捜査で検察との司法取引で建設会社オデブレヒト社幹部が、ジルマ、テメル両氏に違法な献金を行ったと証言している」と述べ、訴えの正当性を主張しました。

 6日夜に行われた初日の選挙高裁審理では、弁護側が建設会社幹部の証言の内容について、「14年にブラジル民主社会党が起こした訴えの中には含まれていなかった」として、証言の証拠採用に異議を表明しました。翌7日の審理で選挙高裁報告官は、「同党が訴えた時点でペトロブラス汚職に関連した資金が含まれている可能性が指摘されており、建設会社幹部の司法取引証言は最高裁報告官を務める判事も承認している」と述べ、同証言を証拠として採用するよう主張しました。

 同審理の判事投票は、7人の判事で8日に行われる予定です。選挙高裁は、8日は終日審理を行うことを決め、必要があれば9日に新たな審理を行うとしています。

麻薬取引に積極的な女性増加

 国内メディアによると、サンパウロ州刑務所管理局の調査で、州内の刑務所など刑事収容施設にされている女性が10年で90%も増加しているのが判りました。2007年には6531人だった女性収容者が17年には1万2438人に増加しています。サンパウロ市郊外のカンピーナス市の施設に収容されている女性たちが犯したので最も多いのは麻薬取引で、昨年1年間に8434人が勾留されました。窃盗などの盗みで捕まったのはは約2300人でした。

 カンピーナス市の文民警察薬物警察署署長は「多くの女性が夫やパートナーに代わって組織内で重要な立場に就くようになっている」と、麻薬取引における女性の役割が変化していると指摘します。「現在、多くの女性が取引を指揮する立場に立っている。女性が指導的な役割を果たすようになっており、ビジネスパートナーと言ってもいいほどだ」と付け加えました。

 組織犯罪の罪で勾留された女性は、15年の62人から昨年は87人に、誘拐罪で勾留された女性は145人から160人へ増加し、殺人罪で勾留された女性も649人から673人に増加しています。

 政府は、女性被収容者の急増に対応するため、過去6年間に2億6500万レアルを投じ、女性専用施設5カ所を新設しています。同州刑務所管理局によれば、女性用の古い刑事施設は男性用の施設を改造したものでしたが、新設は前例のない措置としています。今年3月に建設された最も新しい施設は、授乳専用のエリアや多目的利用のステージ、収容者を再教育する部屋も整っています。

ジルマ、テメル両氏当選無効の審理開始

 ブラジル国内での報道によれば、選挙高等裁判所で6日から、2014年の大統領選挙で当選したジルマ前大統領とテメル副大統領(当時)の当選無効の審理が始められました。ブラジル民主社会党の訴えによるものです。審理で当選無効の判断が示されても、テメル大統領は上訴が可能です。テメル大統領は現在、食肉大手JBS社幹部の司法取引証言に基づき汚職司法妨害などの疑いで連邦最高裁判所の捜査対象となっており、これが選挙高裁の審理に影響を及ぼす可能性も指摘されています。

 今回の訴えは、14年の大統領選で敗れたネベス上議(ブラジル民主社会党党首)の所属党が起こしました。訴えではジルマ氏を正大統領、テメル氏を副大統領とした選挙人名簿(通常シャッパと呼ばれる)を掲げた選挙運動で、未申告の選挙資金口座にペトロブラス汚職で恩恵を受けた企業から不正な寄付を受けており、当選は無効としています。ジルマ、テメル両氏とも訴えの内容を否定しています。

 6日からの審理は3日間行われ、初日は報告官を務める判事の意見書読み上げ、訴えた側と弁護側、検察による意見陳述が行われます。最終的には判事7人の投票で判断されます。投票の際、判事7人のうち一人でも再検討の時間を求めた場合、審理は中断、延期されます。

9四半期ぶりプラス成長 景気後退終了には疑問符も

 2015年第1四半期(1~3月)から8四半期連続もマイナス成長を続けていたブラジル経済が今年第1四半期にようやくプラス成長に転じました。ブラジル地理統計院が、17年第1四半期の国内総生産GDP)は前期(16年第4四半期)比で1.0%拡大した、と発表したものです。ただ、16年第1四半期比では0.4%減、今年第1四半期までの4四半期累計は2.3%減と依然マイナス成長になっています。国内メディアの報道です。

 この結果,政府関係者は、ブラジルはようやくリセッション(景気後退)から脱したと喜んでいます。ミシェル・テメル大統領も、「リセッションは終わった。我々の施策が功を奏し、プラス成長に戻った。さらに改革を進めることで成長が続く」とSNSに投稿しています。エンリケメイレレス財務相は、「景気後退に陥ってから2年経ち、ブラジルは100年間で最悪の不況を脱した」と声明を発表しました。

 これの対し多くのエコノミストは、「回復の明らかな兆候がすべての分野において見られず、この先の数カ月間についていくつかの疑問も残っており、不況の終結を宣言するのは時期尚早だ」としています。エコノミストのこうした分析は、テメル大統領の不正関与疑惑に端を発する新たな政治的危機の噴出が背景にあるようです。

大西洋岸森林の伐採増加

 アジェンシア・ブラジルの報道によると、SOS大西洋岸森林(マタ・アトランチカ)財団と国立宇宙調査研究院は29日、2015年から16年の1年間に伐採された大西洋岸森林の面積が2万9075ヘクタールとなり、前年から57.7%増加したとするデータを発表しました。この面積は、サッカー場2万9000面以上に相当します。

 14年から15年の1年間は、生物群系(バイオーム)における森林伐採面積は1万8433ヘクタールでした。同財団によると、17州に広がっているこれらの大西洋岸森林エリアでの森林伐採は、過去10年間にはありませんでした。同財団は「最も衝撃的なのは、過去数年間で森林伐採が増加したことで、2005年度に匹敵するほどの面積が消失している」と述べています。

 州別で最も伐採面積が大きかったのはバイーア州で、15年から16年の1年間に1万2288ヘクタールが失われました。同州内で最も森林伐採が進んだ市は、サンタ・クルース・カブラリア市とベルモンテ市で、それぞれ3058ヘクタールと2119ヘクタールです。ポルト・セグーロ市やイリェウス市など、バイーア南部の他の都市で確認されている森林伐採面積をトータルすると、この期間に起きた生物群系破壊の約30%がこの地域で起きています。同財団は、「これらの地域は、生物多様性が豊かな場所で、観光業に向けた大きな潜在力を秘めている。州の発展や仕事、収入に繋がる財産を破壊しつつある」としています。

 2番目に伐採面積が大きかった州はミナス・ジェライス州で、7410ヘクタールでした。この地域は、石炭生産やユーカリ植林のために原生植生林の伐採が行われたもので、今回のミナス州の森林伐採面積は、同財団が行った過去9度の調査のうち7度で最も広くなっています。
 同財団公共政策部門では現状について、「過去数年記録されてきた森林伐採減少傾向の停滞を示している」と指摘しています。

政治危機の噴出で経済の先行きは不透明

 物価上昇の勢いの衰えとより低い水準に引き下げられた各種金利が、小売業者の景況感に好影響を与えています。しかし、ミシェル・テメル大統領の不正疑惑噴出で再び政局が混乱し始めており、調子を取り戻しつつあった経済活動も先行き不透明感を増しています。

 国内メディアによると、全国商業連合がまとめた2017年5月の商業経営者信頼感指数は前月よりも2.7%高い103ポイントへ上昇し、小売業者の景況感が好転していました。前年同月に対する上昇率としては11年3月の統計開始以来最大です。

 発表された指標は、今年4月最後の10日間に実施されたもので、テメル大統領不正疑惑が噴出前の調査。このため全国商業連合では、「6月に指標が逆転(悪化)する可能性を排除しない。(5月の)これらの値は調査時点で直近の政治的な出来事を反映していなく、6月の結果がこれら(政局)のニュースに影響される可能性は非常に高い」とコメントしています。

 全国商業連合エコノミストの分析によると、「政局の混乱は様々な改革の進行を妨げ、商業者らの楽観論に冷水を浴びせるだろう。影響は小売業界だけにとどまらず経済活動全体に及ぶはずだ。小売業者らの投資意欲を削ぎ、新規採用意欲もしぼむ可能性が強い」としています。政界の混乱でブラジル経済は、再び停滞しそうです。

経産省主催の就職説明会をブラジルで開催

 日本の経済産業省日系人向けの就職説明会を19、21両日、サンパウロパラナ州マリンガ両市で開きました。説明会には日本の素材製造系の企業7社、運送系企業1社の計8社が参加しました。採用されれば企業から直接雇用される雇用形態で、これまでの就職斡旋業者が雇用し派遣するものではないため、説明会に訪れた人は期待を滲ませていました。19日のサンパウロ会場には非日系人を含む約80人が訪れました。

 経済産業省の製造産業局素形材産業室の岡本武史室長補佐は「日本の人口減少が激しく、働ける若い層が加速度的に減っている。特にもの作りを手がける製造業への希望者が少なく、日本のもの作りを維持するのが難しくなっている。日系ブラジル人に来てもらい、一緒に働いてもらいたい」と開催趣旨を説明しました。説明会では、短期間の出稼ぎではなく、正社員として採用することが強調され、希望者には会場で面接も行われました。

 説明会に参加した8社中、唯一の運送業者の株式会社ムロオ(広島県)の山下俊一郎社長は「運送業界は人手不足で廃業してしまう業者もいる。その中で我が社の雇用人数は増加傾向にあり、昨年の雇用者は約400人だった。採用した大学新卒内定者の半分は外国籍」と外国籍者の採用に積極的な姿勢を見せていました。参加企業のほとんどは日系ブラジル人を含む外国籍社員の採用実績があり、リーマンショックから立ち直って以降は日系人就労者は増加傾向にあるとしています。

 説明会に参加した三世の男性は「派遣では生活が安定しない。日本で生活していこうと考える人には、直接雇用をする企業が集まる説明会はとて助かる」と説明会の開催を喜んでいました。