中南米の最新情報

NPOチャレンジブラジルが、ブラジルを中心に中南米のニュースをお届けします。

最高裁、テメル大統領の捜査を許可

 大手食肉企業JBSオーナーのジョエズレイ・バチスタ氏が連邦検察庁との司法取引で行ったとされる証言の内容が17日報じられ、政界が混乱しました。メディアの報道によれ、国営石油ペトロブラスをめぐる汚職で勾留されているエドゥアルド・クーニャ元下院議長と資金捜査担当者が証言を行わないよう同オーナー側が資金提供を行っていると供述し、テメル大統領が同オーナーと面会時に資金提供を容認するような発言をしたとしています。また、社会民主党党首アエシオ・ネベス上議が同オーナーに200万レアルの資金を要請したという証言も行われたと報じられました。テメル大統領、ネベス上議はいずれも疑惑を否定しています。

 バチスタ氏兄弟の司法取引証言は、連邦最高裁判所の報告官が会話を録音したテープを含め承認、連邦警察および連邦検察庁は18日、ネベス上議の関係先を家宅捜索し同上議の親族、関係者などを拘束しました。連邦最高裁はネベス上議の議員職務の一時停止を命じ、同証言の内容に関するテメル大統領の捜査開始も許可しています。これでテメル大統領はペトロブラス汚職の捜査対象になりました。

 録音されたジョエズレイ・バチスタ氏とテメル大統領の会話は、今年3月7日にブラジリアの副大統領公邸で秘密裏に行われたとされ、その中でジョエズレイ氏は勾留中のクーニャ元下院議長と資金捜査担当のルシオ・フナロ氏に対し、証言を行わないよう逮捕以来月々の資金提供を行っていると述べ、そのとき大統領は「それを維持しなければならない」と語ったとしています。連邦警察はフナロ氏の親族、クーニャ氏の関係者に資金が渡ったことを掴んでおり、クーニャ氏には少なくとも500万レアル渡ったとみています。

大統領府は疑惑を否定
 大統領府は17日、「大統領はエドゥアルド・クーニャ元下議が沈黙を守るよう支払いを要請したことはない。(クーニャ)元議員による司法への証言または協力を回避する目的を持ついかなる動きにも、加わったことも、許可したこともない」という声明を発表しました。大統領府は、大統領が3月初めにジョエズレイ氏と公邸で会ったことは認めていますが、報道の内容については否定しました。

 大統領は18日午後4時過ぎから大統領府で会見し、証言で言及された内容について強く否定。自身の潔白を主張し、辞任の意思はないことを表明しました。

3割がブラジル経済「良くなる」

 調査機関ダタフォーリャが2日公表した最新の調査で、ブラジル経済の先行きを悲観的に見るブラジル人が減少していることが分かりました。地元メディアによると、ブラジル経済がこの先悪化するとした人は2016年12月調査では回答者の41%でしたが、今年4月の調査では31%に減少しました。経済が上向くとした人は28%から31%に上昇、現状維持と答えた人は27%から35%になっています。

 また、回答者自身の財務状況が悪くなると答えた人は昨年の27%から18%に減少、良くなるとした人は37%から45%に増えました。ただ雇用に関しては回答者の57%が悪化すると見ています。雇用についての見方は昨年12月の67%より少なくはなっていますが、悲観的な人が依然半数を上回っているのが実情です。

子持ちの独身女性世帯が10年前から110万増加

 地元メディアが、他の親族と同居している場合も含め配偶者のいない女性と子供で構成される世帯が2005年から15年の間に約110万世帯増加した,と報じています。05年の1050万世帯に対し、15年のデータでは1160万世帯に増加しています。

 ブラジル地理統計院が発表したもので、独身女性世帯の絶対数は増加していますが、全体に占める割合は18.2%から16.3%へ低下しています。原因は、子供のいない夫婦や単独世帯が増えているためとしています。子供のいる独身女性世帯は25.8%から26.8%に増加しています。

 人口統計国勢調査によれば、10年の出生率は1.9人で、00年の2.38人から減少しています。出生率の低下は全ての年齢層で起きていますが、15~19歳の母親の割合は女性の高学歴指向により、00年の14.8%から10年は11.8%に減少しました。中等教育で学ぶ女性の増加率は男性に比べて9.8%高く、大学における男女学生(18~24歳)の割合も、10年には女性が全体の過半数(57.1%)を占めるようになっています。

 ブラジル地理統計院は「家庭の構成に変化が起きつつあり、家族の主要な担い手と見なされる女性が増加している。この社会的変化に注意を向ける必要がある」と指摘しています。子供のいる世帯で配偶者がいても、女性が世帯を代表していると見なされるケースは、05年の4.8%から15年の15.7%へ増加しています。

マクドナルドがラ米地域で利益倍増

 地元メディアによると、米ハンバーガーチェーン・マクドナルドの店舗をラテン・アメリカ全域で展開するアルゼンチン企業、アルコス・ドラドスが2017年第1四半期(1~3月)の成績を16年第1四半期の純利益の2.5倍を超える4060万ドルになったと発表しました。ブラジル通貨が対ドルで上昇、これが好影響を与えたとみられます。ドルに対するレアルは今年1月から3月にかけて1ドル=3.90レアルから3.14レアルと20%上昇しています。17日現在は3.10レアルです。

 17年第1四半期の純売上高は7億8150万ドルで16年同時期を18.7%上回っています。為替レート変動の影響を排除した値では16年同期比は17.0%増です。同社は「レアルの上昇はアルゼンチン・ペソ、そしてメキシコ・ペソを含む我々が活動する地域の他国の通貨価値の下落を相殺する以上のものだった。(為替変動の影響を除いた)恒常通貨ベースの売上の伸びは    全部門における平均来店客数の増加によるもので、既存店の売上が9.6%拡大した」としています。ブラジルにおける17年第1四半期の売上高は、レアルベースで前年同期比0.7%増、ドルベースで同24.7%増の3億6000万レアル(約126億円)でした。

 マクドナルドを経営するアルコス・ドラドスは現在、ブラジル国内の904店舗のほか1252店舗をラテン・アメリカ地域で展開しています。

GMオニキスが安全性で最低の評価

 自動車の安全性をテストするラテン新車アセスメントプログラムが発表した衝突安全性試験で、ブラジルで製造され2015年8月から国内新車市場で月間販売台数トップの座を維持し続けている乗用車、ゼネラル・モーターズのオニキスが、安全性で「星0個」と最低の評価を受けました。乗員保護性能は子供にとっては「星3個」と高く評価さています。国内メディアが報じています。

 同プログラムは「ブラジル国内で最も売れている車であるオニキスは、特に側面の保護に関して悪い結果を示している」とコメントしています。オニキスは14年に大人の乗員の安全性について「星3個」の評価を受けていましたが、側面衝突時の衝撃に関する新たな基準に沿った今回の試験では、安全性がまったく認められませんでした。GMは「シボレー・オニキスは販売されている南米各地のすべての安全要件に完全に準拠している」と反論しています。

 衝突安全性試験では、韓国・起亜自動車の小型セダン「リオ」(韓国製)もまた大人の乗員に対する安全性について「星0個」と最低の評価でした。子供の安全性では「星1個」でした。なお、「リオ」はブラジル国内では販売されていません。

ルーラ元大統領が起訴内容を否認

 国内メディアによると、ルーラ元大統領がペトロブラスの契約で建設会社に便宜を図った見返りに高級マンションなどの形で賄賂を受け取ったとして起訴された公判で、10日、同元大統領に対する被告人質問がパラナ州クリチバ市の第13連邦裁判所で行われ、同氏は起訴内容を否認しました。

 ルーラ元大統領は昨年9月、建設会社OASとペトロブラスの契約で便宜を図った見返りとして、OASからサンパウロ州グアルジャー市のマンションの三層型居室や、大統領時代に受けた贈り物など個人所有物の保管料などの形で計370万レアルの不正な利益を得たとして収賄資金洗浄などの罪で起訴され、汚職捜査の第一審を担当する同裁判所が受理、刑事被告になりました。同訴訟ではこのほかに6人が被告となっています。ルーラ元大統領は同訴訟のほか、汚職を含むを含む4つの刑事訴訟で起訴されています。

 ルーラ元大統領が初出廷した10日の尋問は大きな注目を集め、当日、クリチバ市には各地から同氏の支持グループ、汚職捜査の支持グループが集まったため、治安当局は両グループの分離や交通規制に追われました。ルーラ元大統領支持者は6千人が集まり、中には労働者党(PT)所属国会議員や関係者、ジルマ前大統領の姿も見られました。

 ルーラ元大統領の尋問は午後2時過ぎから5時間にわたって行われ、ルーラ元大統領は提供されたとされる居室について「要求したことも、受け取ったこともない」と述べました。夫人(今年2月に死去)と同物件を見学に行ったことは認めましたが、購入枠は夫人の名義であり、自身は取得する考えはなく、そのとき購入を諦めたとしています。所有物の保管料がOAS社によって支払われていたことについても、自身は保管については関与しておらず、支払いが行われた後にOASの役割について知ったと述べました。

 同訴訟は今後、検察または弁護側による審理の要請がなければ、判事によって両者の最終意見陳述のための期限が設定され、その後判決が下されることになります。

坂本龍一氏公演に1万5000人

f:id:ncb:20170512133805j:plain ジャパンハウス開館記念コンサート出演のため来伯した音楽家の坂本龍一氏と三宅純氏が7日、サンパウロ市イビラプエラ公園で、無料コンサートを行いました。観客が1万5000人(主催者発表)も集まる盛況ぶりに、主催したジャパンハウス関係者もえびす顔でした。

 出演した三宅氏は、リサ・パピノー、バイア州出身のブルーノ・カピナン、勝沼恭子、伊丹雅博、ブルガリア・コスミック・ヴォイセズ合唱団、サンパウロ州交響楽団と共演、昨年のリオ五輪閉会式でも演奏された「君が代」のアレンジ曲などを披露しました。

 坂本氏は、モレレンバウム夫妻らと共演し、大島渚監督の映画『戦場のメリークリスマス』のテーマ曲、トム・ジョビン作曲のボサノヴァ『Cheda de Saudade』などを演奏しました。

 会場にいた非日系の20代のカップルは「フェイスブックで友達が共有していたので知った。今日はとても良いライブ。ジャパン・ハウスのこともテレビやニュースを通じて知っている。今日(一般公開に)行きたかったが、行列が長くて諦めた」と話していました。非日系でサンパウロ20年在住の弁護士は、「坂本龍一もジャパン・ハウスも知らなかったが、友達に誘われて来てみて、素晴らしい演奏に驚いた」と喜んでいました。

 日本人1世男性と3世女性の二人組は「もっと(これからも)日本の芸術家を呼んでほしい。三味線や琴なんかはやらないの? 日本の文化でしょ」と注文を付けていました。

 写真 会場を湧かせた坂本龍一氏(サンパウロ新聞提供)

ペトロブラス汚職捜査で汚職減少への期待は45%

 調査会社ダタフォーリャが先月末に行ったペトロブラス汚職に関する意識調査によると、捜査で汚職が減少していくと思うかの問いに、回答者の45%が減少すると答えました。同汚職捜査は2014年3月に始まってから3年以上が経過しています。同調査は先月26、27両日、国内172市で有権者1781人を対象に行われたものです。フォーリャ紙が報道しました。

 汚職捜査では大手企業の関係者だけでなく、元大臣や元下院議長、現職上院議員も逮捕され、国の政治に大きな影響を与えています。捜査の進展にもかかわらず、意識調査では44%が今後も汚職は変わらないと回答し、増加すると答えた人も7%いました。汚職が続くとの回答は16~24歳の若い層で50%と多く、割合は年齢が進むにつれて減少、60歳以上では36%に止まっています。

 また、汚職が減少するとの回答は所得が高くなるほど多くなり、月9400レアル以上の所得のある富裕層では54%を占めました。

ハイネケンのブラジル・キリン買収を承認=経済防衛行政審議会=

 日本の公正取引委員会に当たる経済防衛行政審議会は5日、オランダのビールメーカー、ハイネケンによるキリンホールディングス(磯崎功典社長、本社=東京都)の子会社、ブラジル・キリンの買収を制限なしで認める決定をしました。国内メディアが報じています。

 この買収でハイネケンのブラジル国内におけるシェアは19%に上昇、同15%のペトロポリス・グループを抜き、最大シェア65%のアンベブに次ぐ2位になります。

 キリンホールディングスは今年2月、「単独で安定的な高収益事業へと転換していくには限界がある」として、ブラジル・キリンの自主再建を断念、22億レアル(約770億円)でハイネケン・グループへ譲渡する契約を結んでいました。

ブラジル経済0.2%成長=IMF予想

 地元メディアによると、国際通貨基金IMF)が18日、最新のブラジル経済成長予想を発表しました。それによるとブラジル経済は2017年に景気後退(リセッション)から脱し、18年にはプラス1.7%と成長が加速するとしています。IMFは「状況の改善は政治的不確実性の縮小、通貨政策の緩和、そして改革プログラムの進捗の結果だ」と指摘しています。

 IMFは、ブラジルのインフレ率を17年は4.4%、18年は4.3%と予想しています。失業率は、17年は12.1%まで上昇し、18年は11.6%に下がるとみています。