中南米の最新情報

NPOチャレンジブラジルが、ブラジルを中心に中南米のニュースをお届けします。

第1四半期に景気後退から脱出=メイレレス財務相=

 地元メディアによると、エンリケメイレレス財務相は1日、「ブラジル経済は今、成長への回帰の過程にあり、2017年第1四半期(1~3月)には景気後退(リセッション)から脱する」との見方を示しました。

 サンパウロ市内で開かれた金融機関のイベントに参加した同相が記者団に語ったものです。同相は「我々の期待は第1四半期における緩やかなプラス成長だ」と述べ、報道陣からの「国内総生産のプラス成長はリセッションからの脱出を保証するのか」との問いに、「我々の期待はそういうことだ、リセッションから脱する。(国内総生産は)第1四半期には節度あるペースでの成長だが、年内には成長軌道に乗る」と答えました。

ペトロブラス汚職捜査の報告官にファキン判事

  地元メディアによると、国営石油ペトロブラスを舞台にした汚職捜査の最高裁案件報告官、テオリ・ザバスキ判事が19日に小型機墜落事故で死亡したことを受け、連邦最高裁判所は2日、ザバスキ判事に代わる新たな報告官にエドソン・ファキン判事(58)を選任しました。選任は第2班の判事5人を対象に行われ、ザバスキ判事が抽選で選ばれました。第2班は汚職案件に関連した国会議員に対する告発受理の可否や、下位の裁判所からの請求や異議申し立てに関する司法判断などを担当しています。
 ファキン判事はリオ・グランデ・ド・スル州出身。ジルマ前政権時代の2015年6月、最高裁判事に指名されていました。今後は報告官として、ペトロブラス案件に関連した訴訟や、調査開始や証拠採用などの手続きに関する判断を受け持ちます。
 連邦検察庁のデータによれば、最高裁は現在、ペトロブラス汚職案件に関して364人を調査対象としています。その中には、現在任期を務めている国会議員も多く含まれているとされています。

パトカーに大量の麻薬、軍警察官2人逮捕=サンパウロ市=

 地元メディアによると、サンパウロ市内北部で30日、パトカーのトランク内に麻薬を隠し持っていたサンパウロ州の軍警察官2人が犯逮捕されました。軍警監察当局は、2人の警官が乗務していたパトカーのトランク内から大量の麻薬が詰まったスーツケース2個と缶ビール2本を発見、逮捕に踏み切ったものです。
 逮捕された2人は同州唯一の軍警官専用刑務所、ロマン・ゴメス刑務所に収監され、調べに麻薬の出所は知らないと話しています。監察当局は2人を免職処分とする方針です。

運営が厳しいサッカーW杯の競技場

 地元エスタード紙の報道によると、2014年のサッカーワールドカップ(W杯)ブラジル大会の試合会場となった競技場の運営状況が厳しいと伝えています。3カ所の競技場では、過去2年間での試合開催件数が少なく、毎月の維持費を捻出するのに四苦八苦しているようです。

 連邦直轄区のマネー・ガリンシャ競技場は、昨年以降確定した連邦直轄区選手権の試合は3試合しかなく、州の2行政機関に賃貸することで政府予算の賃貸料支出を節約しています。月の赤字は50万レアルに上っています。マット・グロッソ州のパンタナール競技場は赤字続きで、連邦政府などに対し訴訟を起こす動きを見せています。同競技場は月平均70万レアルの経費が必要ですが、収入は10%に相当する7万レアルにも達していません。

 各競技場は収入不足を補うため、スポーツジムを始めたり、芸能人のショーを勧誘したり、州政府や連邦政府に試合の増加を訴えるなど努力を重ねています。民間に委託された競技場の中には、管理を州政府に戻す方向で検討しているところもあります。

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 2020年には日本でオリンピックが行われる予定ですが、ビッグイベントの後、競技場などの維持費に苦しむところが少なくありません。オリンピック会場の建設などはその後の管理運営を十分に考慮して行わないと、大変な負の遺産を背負うことになりそうです。

3月、ブラジルが舞台の三島由紀夫戯曲「白蟻の巣」上演

 劇作家、三島由紀夫がブラジルを舞台に書いた戯曲「白蟻の巣」が3月、新国立劇場で上演されます。上演を記念し27日、東京・青山の駐日ブラジル大使館で記念トークイベントが行われました。イベントでの講演者は三島由紀夫文学館の松本徹館長、演劇芸術監督の宮田慶子さん、サンパウロ大学の二宮正人教授の3人で、それぞれの立場から「三島がこの作品を書いたのは、ブラジルに強く魅せられたためだ」と語りました。

 松本館長は「三島は米国経由でリオに行っているが、占領下の日本から米国に着いた三島は寂しい思いをしたようだ。米国からは飛行機でリオに向かい、夜中に着いた。その時見たリオの夜景に、ここで墜落しても悔いはないと思った、と書き残している。ブラジルにはそれほど強烈な印象を受けたと思われ、それが作品を書く動機になっている」と解説しました。同館長は、学習院(初等から高等科、大学は東京大学)の同窓生で元皇族の故・多羅間俊彦氏(当時はリンス市で農園経営)の話にも大きな影響を受け、戯曲制作に取り組んだとも指摘しました。

 「白蟻の巣」は三島が初めて手がけた長編戯曲で、この作品で三島の劇作家としての地位が確立したと言われる。宮田さんは「三島はブラジルの様々なことを吸収して、この作品を書き上げている。特に、農園で見た高さ1メートル近くもある蟻塚には強い興味を持ったようで、この作品のタイトルにさえしている」と語りました。

 「白蟻の巣」はブラジルの農家を舞台に、主人夫婦、使用人の運転手夫婦、お手伝い、農園管理者の6人がブラジルの赤い大地を背景に繰り広げる人間模様を描いた作品。三島は日本国内を舞台にした作品が多く、宮田さんは「海外を舞台にした珍しい作品」と説明しました。

 二宮教授は「私が移民でブラジルに着いたのは5歳の時で、三島が訪問した2年後。当時だったら三島は強烈なストリート・カーニバルを目にしただろうし、罪を犯しても懺悔(ざんげ)すれば許されるというカトリックの教えに関心を持ったと思う」と語り、見るもの聴くものすべてに興味を持ち吸収し、「帰国してから猛烈な創作意欲をかき立てられたのだろう」話した。

 「白蟻の巣」は3月2日から19日まで、東京・渋谷の新国立劇場で上演される。演出は気鋭の谷賢一、出演は平田満安蘭けいなど。

黄熱病が拡大 感染88件、死者43人 11:46

 ミナス・ジェライス州東部で顕在化した黄熱病が、次第に拡大を見せています。今月26日までに88件の感染が確認され、死亡も43件を数えています。過去最多85件の感染が確認された2000年を超え、記録が開始された1980年以降最大の流行になっています。現時点では都市部での感染は見られていません。国内各メディアが報道しています。

 全国では423件の感染の疑いで調査が進められており、最も多いのはミナス州で383件、以下エスピリト・サント州32件、バイーア州6件、マット・グロッソ・ド・スル州ゴイアス州が各1件となっています。今回の流行で確認された感染のうち21人は昨年12月半ばまでに初期症状が現れた患者でした。サンパウロ州でも3件の死亡が確認されています。

 厚生省では今回の流行について拡大の早さを指摘、ミナス州で最初に患者が発生したのは今年始めでしたが、現在では51市、486件に増えています。感染が確認されたのは84件で、383件が調査中です。オズワルド・クルス財団の医師は、「患者の数はもっと多く、広範囲にわたっている事が疑われる」と述べています。流行の要因としては、森林伐採や、病気を媒介する森林地帯の蚊の繁殖に有利となる気候の変化などが考えられると指摘しています。同医師は、「昨年末からサルの死亡が報告されていた。黄熱ウィルスがさらに広まっている兆候だったかも知れない」との見方をしています。

 厚生省は今年のワクチン備蓄を1150万本分追加し、うち600万本は今回の流行州へ配布するとしています。同省は流行地域を訪問する人に予防接種を奨めています。

国民の主要な情報源はテレビ

 

 地元での報道によると、大統領府社会広報局が実施した「ブラジル国民によるメディア消費習慣」に関する調査で、ブラジル国民のほぼ9割がテレビを主要な情報源のひとつとしているという結果が出ました。同局が24日に公表したものです。情報源の主なものはテレビが89%で、インターネットは49%でした。

 この調査は2016年3月23日から4月11日にかけて、連邦政府が広報や発表を国民に周知徹底するにはどんな方法が良いかを知るために全国の16歳以上の1万5050人を対象に実施されました。同調査は13年から実施されており、今回が3度目です。

 テレビを視聴する回答者の77%は毎日見ているといい、この割合は前回の調査よりも増加しています。14年度は73%が毎日テレビを見る習慣があり、13年度は65%でした。

全農がブラジルの穀物大手へ出資

 全国農業協同組合連合会JA全農、本所=東京都)は17日、JA全農の米国子会社である全農グレインのブラジル現地法人、全農グレインブラジルホールディングス(本社=サンパウロ州)が、ブラジルで穀物集荷.輸出事業を展開するALDC社(本社=サンパウロ州)への出資を決めました。
 ALDC社はブラジル資本最大の穀物集荷.販売業者であるアマッジ社と4大穀物メジャーの一つであるドレファスのブラジル法人、ドレファス・ブラジル社によって2009年に設立された合弁会社です。マラニャン州イタキ港に穀物輸出エレベーターを所有し、ブラジル北東部の穀物産地であるマピトバ地域(マラニャン州ピアウイ州トカンチンス州バイア州)に6カ所の内陸穀物集荷倉庫も保有する穀物集荷.輸出事業の大手です。
 全農グレインブラジルホールディングスはALDC社の株式33.333%を取得し、全農グレインブラジルホールディングス、アマッジ社、ドレファス・ブラジル社がそれぞれALDC社の株式を3分の1ずつ保有することになります。
 全農は、「ブラジルは世界有数の穀物輸出国であり、今後も生産.輸出拡大が見込まれる。ALDC社へ出資することで、ブラジル産飼料穀物からの供給ルートを確保し、安定供給に努めていく」としています。

ブラジル・キリン売却は未定

 日本経済新聞の報道を元にブラジルのメディアが、キリンホールディングス(磯崎功典社長、本社=東京都)はブラジル事業を約1000億円(約8億7000万ドル)でオランダのビールメーカー、ハイネケン(Heineken)に売却、ブラジル市場から撤退すると報じましたが、キリンHDは「ブラジルキリン社については、自主再建を第一に取り組む一方で、キリンホールディングスとして、他社との戦略的提携も検討している。ハイネケン社との協議を含めたあらゆる選択肢を検討しているが、現時点で決定したものはない」と発表、ブラジル・キリンの売却でハイネケンと合意してはいないとしています。
 ハイネケンもブラジルのメディアを通じ、「ブラジルでの事業についてキリンHDとの間で交渉を進めていることは事実」と認めた上で、まだ交渉中であり合意に達するかは不明と発表しました。

ペトロブラス汚職報告官が小型機墜落で死亡

 地元メディアによると、19日、サンパウロ市からリオ・デ・ジャネイロ州パラチ市へ向かっていた小型飛行機がパラチ空港2キロ手前の海に墜落、同機に乗っていたテオリ・ザバスキ連邦最高裁判所判事(68)を含む5人が死亡しました。ザバスキ判事は、最高裁で国営石油ペトロブラスを舞台にした汚職捜査の報告官を務めており、来月初めには、同汚職に関連した建設大手オデブレヒト社の役員ら77人の司法取引証言の承認が同判事によって行われる見込みとなっていました。同判事の死去で、最高裁における汚職捜査の展開が不透明となってきました。
 墜落した小型機は8人乗りで、19日午後1時ごろにサンパウロ市のカンポ・デ・マルテを離陸し、墜落したのは午後1時45分ごろと推定されています。事故当時、現場付近は雨のため視界が悪くなっていました。
 午後2時20分に航空機事故調査予防センターが連絡を受け、軍人、消防隊員からなる捜索隊が出動しました。ザバスキ判事のほか、同氏の友人で機体を所有するホテルグループの経営者、操縦士など5人の遺体は20日までに収容され、アングラ・ドス・レイスの法医学研究所に運ばれました。ザバスキ判事は休暇を利用してパラチへ向かっていたもので、同判事の死亡は息子が確認しました。
 国家民間航空庁によれば、墜落した小型機の毎年の定期検査は今年4月まで有効で、飛行許可証も22年まで有効でした。操縦士は約20年の小型機操縦経験があり、同型の飛行機は6年間経験していました。
 ザバスキ判事はサンタカタリーナ州ファシナル・ドス・ゲデス出身で、リオ・グランデ・ド・スル連邦大学法学部を卒業。03年から12年まで司法高等裁判所判事を務め、ジルマ政権時代の12年に最高裁判事に就任しました。14年からペトロブラスにからむ汚職捜査の報告官を務め、裁判上の特権のある政治家に対する司法手続きの判断を担当していました。
 来月初めに同判事による承認が行われるとみられていたオデブレヒト社幹部の司法取引証言は900以上の供述からなり、その中では多数の政治家の氏名への言及があるとされています。同判事と作業チームは、年末から休廷期間中も証言の分析を進めていました。同判事の死去により、同司法取引証言の承認を含む最高裁における司法手続きへの影響は避けられないようです。

語られる陰謀論

 同判事の息子は昨年、ソーシャルネットワーク上で汚職捜査に関連した脅迫があることを示唆する投稿をしていたことから、インターネット上では今回の件について陰謀を疑う投稿も見られます。小型機墜落後には、同捜査を担当する連邦警察捜査官が事故を疑問視しているともとれる投稿もありましたが、これは間もなく削除されました。20日付エスタード紙は、同判事の息子はラジオ・エスタドンに対し、「今はいかなる可能性も排除できない」と語ったと紹介しています。