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コロンビア・ブラジル首脳会談でベネズエラの国民投票実施で合意

 ブラジルのメディアによると、コロンビア訪問中のルーラ・ブラジル大統領は17日、首脳会談後の共同声明で「ベネズエラの大統領選挙前に国民投票を開催するというコロンビアのペトロ大統領の提案に同意」しました。ベネズエラの大統領選挙問題では両国首脳会談で重要議題として話し合われ、両首脳が一致したものです。

 先週、ペトロ大統領はベネズエラの首都カラカスを訪問し、「国民投票の結果は政府か野党かを問わず、選挙に勝った者が敗北した反対派を迫害しないことを保証する」ことを、再選候補のニコラス・マドゥロ大統領と野党候補のマヌエル・ロサレス氏に提示していました。

 共同声明では「ブラジルとコロンビアが、政府と反政府勢力に対し、世論調査で支持できる民主的保障について合意に達する可能性を検討するよう促した」としています。ペトロ大統領は記者会見で、この提案をルーラ大統領に提示したが、ルーラ大統領はこの件についてはコメントしなかったそうです。

 ブラジル外務省は「期待と懸念」を持ってベネズエラの選挙経過を見守っているとのメモを発表し、マドゥロ政権はクリーンな選挙を約束したバルバドス合意に「適合しない」行動をしていると説明しています。一方、ペトロ大統領も野党候補の立候補資格を剥奪するといったベネズエラ政府の行動を批判しています。

 また共同声明では、「ベネズエラ国民の苦しみを増大させるだけのいかなる制裁も拒否する」と指摘し、17日、対ベネズエラ制裁の復活を発表した米国を牽制しています。ブラジルの意見は、国連安全保障理事会 で承認された制裁のみが有効というものです。

ブラジル大統領がコロンビア訪問、ベネズエラ問題で会談

 ブラジルのメディアによると、コロンビア訪問に出発したルーラ・ブラジル大統領は16日夜、コロンビアの首都ボゴタに到着しました。ルーラ大統領は17日に同国のペトロ大統領と首脳会談を行い、ボゴタで行われる国際ブックフェアに参加する予定です。ルーラ大統領のコロンビア訪問は3期目の大統領任期中で2度目になります。

 首脳会談では、7月に予定され各国が公平性を懸念しているベネズエラの大統領選、両国が領有するアマゾン地域の発展政策などについて話し合われます。また、同日に行われるビジネスフォーラムとブックフェアにもペトロ大統領と共に出席の予定で、同フェアではブラジル人作家の表彰を見守る予定です。

 注目されるベネズエラ問題については、ペトロ大統領、ルーラ大統領共に、ベネズエラマドゥロ大統領が有力な野党候補の出馬資格を剥奪、出馬できないようにしたことに重大な懸念を表明すると思われます。

 アマゾン問題では、両国が領有するそれぞれのアマゾン地域の持続可能な森林開発について話し合い、ブラジルは「富める国はアマゾン維持のためもっと財政支援をすべきだ」と強調するとおもわれます。

パンタナールに猛毒物質を散布した牧場主が告発される

 牧場主が猛毒物質をパンタナールに散布、森林を伐採したとして告発されました。ブラジルのメディア14日付によると、告発されたのは牧場主クラウデシー・オリベイラ・レメス(52 歳)で、マットグロッソ州に11の農場を所有しています。

 調べによると、牧場主は飛行機からベトナム戦争で米国が使用した有毒な化学枯葉剤を投下、草を植えて牛の牧草地を作るためにパンタナール川の一部を森林伐採した疑いが持たれています。捜査官は「牧場主は最も背の高い植物を根絶することが目的だった。散布地は葉をすべて失った木々が乱立する灰色の風景になった。これは化学的落葉と呼ばれる結果であり、航空機から保護林に大量の殺虫剤を投下する犯罪散布の証拠である」としています。

 牧場主はこの農薬代だけで2,500 万レアルを支出していました。マットグロッソ連邦大学のヴァンダレイ・ピニャティ教授は、「それは非常に安定した薬剤で、20、30キロ離れたところまで風に乗って運ばれ、他の都市、他の農場、他のプランテーション地域にまで想像をに超えて影響する」と指摘しています。

 検察官は「牧場主はこれまでも環境犯罪で15回有罪になっている」と語り、もし有罪になれば罰金だけで20億レアルになると言います。記者が被災地域の上空を飛行し調べたところでは、森林伐採があった地域は合計8万ヘクタール(サンパウロ郊外のカンピナス市の規模に相当)に達するとしています。

ブラジルはイランがイスラエルを攻撃した件で重大懸念を表明

 イランがイスラエルを攻撃した件で、ブラジルは重大な懸念を持っていると表明、国際社会に「エスカレーション」を避けるよう要請しました。ブラジルのメディアによると、ブラジル外務省は13日のイランによるイスラエル攻撃を受け、両国に最大限の自制を求め、国際社会に紛争激化を避けるよう要望しました。

 同外務省は「ブラジル政府は、イランがイスラエルに向けて無人機やミサイルを飛ばし、ヨルダンやシリアなどの近隣諸国を警戒させているとの報道を深刻な懸念をもって見守っている。ガザ地区で進行中の紛争が始まって以来、ヨルダン川西岸だけでなく、レバノン、シリア、イエメン、ブラジルなど他国への敵対行為の拡大の可能性を考慮し、関係国に最大限の自制を求めるとともに、国際社会に対し、事態の悪化を避ける努力を結集するよう呼びかける」との声明を出し、同地域への不要不急の旅行を中止するよう呼びかけました。

 イランのイスラエル攻撃に対しては、14日に国連安全保障理事会が開催されます。イスラエルの要請で開かれるもので、イスラエルは「イランの攻撃は世界の平和と安全に対する深刻な脅威であり、安保理があらゆる手段を使ってイランに対して具体的な行動を取ることを期待する」としています。

 イランは200機以上の無人機とミサイルを発車後に攻撃終了を発表、国連憲章第51条を引用し「軍事侵略から自国の利益を守るために行った」と正当性を強調しました。この攻撃は、イスラエルがシリアの同国総領事館を爆撃し、イラン革命防衛隊の司令官と他の6人の将校が死亡したことで始まりました。イスラエルは、総領事館攻撃の犯行声明を出していません。

 イラン・イスラエルの緊張が高まり、米国はイスラエルを守るために軍艦を派遣するなど、国際的懸念を引き起こしています。アルゼンチンのミレイ大統領はイスラエルへの連帯とを表明し、「アルゼンチンはイスラエルが自国を防衛する権利を認める」と述べました。 

 また、カナダのトルドー首相は「イラン政権は地域の平和と安定を軽視している。イスラエルを守る権利を支持する」と述べ、ポルトガルモンテネグロ首相も「ポルトガル政府はイランのイスラエル攻撃を強く非難する」と表明しています。

サンパウロ州知事の支持率は62%

 ブラジルのメディアによると、サンパウロ州のタルシシオ知事の支持率は62%、不支持率は29%でした。調査はクエストが 4月4日から7日にかけて16歳以上の有権者1,656人を対象に調査したもので、11日に発表されました。

 また、州政府の取り組みについては、41% が肯定的で、35%が普通、16%が否定的でした。因みにクエストが3月に行ったルーラ大統領に対する調査では、サンパウロ有権者の51%が支持し、46%が不支持でした。

ブラジルが3カ国のビザ免除を延長

 ブラジルのメディアによると、ブラジル政府は9日、米国、カナダ、オーストラリアからの観光客に対するビザ免除を2025年4月まで延長しました。この措置がなければ、3カ国からの旅行者は10日からブラジルのビザが必要となるところでした。

 ブラジルは、ビザ免除は相互主義の原則に基づいて行っており、3カ国はブラジル人旅行者のビザを要求しているため、10日でビザ免除を中止するとしていました。観光業界などの反対もあり、政府は3度めの延期を決めたものです。

 ボルソナロ前大統領は2​​019年、米国、カナダ、オーストラリア、日本の各旅行者に対するビザ免除を一方的に実施しました。ルーラ大統領になって、米国、カナダ、オーストラリアは相互主義の原則に反するとしてビザ免除を停止する方針を打ち出していました。

 日本からの旅行者については、日本政府が2023年8月にブラジル人に対するビザ免除を決めたため、日本人旅行者には適用されず、観光ビザ不要が続きます。

無政府状態のハイチで再建の動き

 無政府状態のハイチで政治指導者たちが移行評議会設立で合意しました。ブラジルのメディアによると、評議会のメンバーは9人(投票権を持つ7人、オブザーバー2人)で、主要政党、民間部門、市民社会の代表者で構成されています。評議会が設立されたのは8日で、任期は2026年2月7日までです。

 評議会の目的は無政府状態を解消、秩序の回復を目指すもので、最初に、3月11日にアリエル・ヘンリー首相の辞任で空席になっている新しい首相を選出します。新首相は評議会と協力し内閣を組織、「民主的で自由で信頼できる選挙」の準備を始めます。この選挙には議会や政府のメンバーは立候補出来ません。

 ハイチは2016年以来選挙を実施していなく、長年にわたる政情不安と治安不安に悩まされています。現在、ヘンリー前首相に対する抗争で複数のギャング団が結託、2月に警察署、刑務所、官公庁、空港を襲撃して以来、ギャング団が首都ポルトープランスの80%以上を支配するなど国内は最悪の状態にあります。ギャングに支配されたハイチは政治的、人道的な危機に直面しています。

ブラジルで押収されたコカインが100トン

 ブラジルの港や空港では2年間で100トン以上のコカインが押収されました。ブラジル・メディアが未公開データを入手、調査したところ、2021年から2023年にかけ港や空港で109.2トンのコカインが押収されていることが分かりました。コカインはコロンビア、ペルー、ボリビアからやってきて、主にヨーロッパへ発送されるものでした。

 麻薬組織は、ヨーロッパのマフィア、ラテンアメリカのグループ、カルテル、アフリカで活動しているグループと結びついていると言います。過去 3 年間に発生した 1,330 件の押収記録を見ると、押収されたコカイン約 78.6 トンが92カ国以上に送られていました。アジアではマレーシア、アラブ首長国連邦、香港がの主な目的地とされています。

 連邦警察のデータによると、海外に向かう途中で押収されたコカインの量が急増しています。 2021年には香港へ向かう40kgが発見されました。 2 年後には、 1 トン半が地球の裏側に送られることになりそうです。国連の最新調査では、オーストラリアではコカイン 1 kg がブラジル価格の 20 倍以上で販売される可能性を指摘しています。国連薬物犯罪事務所は、コカインの生産は近年徐々に増加していると言います。

 ブラジルでよく麻薬押収されているのはサントス港とパラナグア港がトップになっています。2023 年、サンパウロ国際空港では平均して 1 日あたり少なくとも 1 人が逮捕されています。同空港は各国への飛行機便が豊富にあるため、麻薬組織には利用しやすいようです。麻薬運び人には旅行客を装った女性を利用するケースが多く、逮捕される女性も増えています。

 麻薬密輸の増加で政府は、「州政府を支援し、組織犯罪、ギャング、麻薬密売、武器密売を撲滅するよう支援する」として、海軍と空軍はリオデジャネイロサンパウロの港や空港での監視を強化しています。

ベネズエラとガイアナ間で対立激化

 ベネズエラ政府がガイアナのエセキボ地域を併合する法律に署名したことで、ガイアナ政府はそれは認められないと発表しました。ブラジルのメディアによると、ベネズエラマドゥロ政権は3日にエセキボ併合を規定する法律を公布し、ガイアナ政府は4日、「併合を認めない」と反発しました。

 ガイアナ政府は、「ベネズエラ国際法の最も基本的な原則に違反している」という声明を出し、「ガイアナベネズエラ両国大統領がブラジルの仲介で2023年12月に開催した二国間会談で署名した文書に矛盾している」と非難、「ガイアナ政府は、主権領土のいかなる部分の併合、押収、占領も許さない」と主張しています。

 ベネズエラは、ガイアナの3分の2を占めるエセキボ地域は自国の領土と主張し、昨年末にベネズエラ政府が併合の是非を問う国民投票を実施、結果は同地域の併合を承認するものでした。これで両国間の緊張が一気に高まり、一触即発の状態になり、事態緩和のためにブラジルが乗り出し、昨年12月の紛争の激化をもたらす言動を自制する、国際法に従って紛争を解決するといった趣旨の文書に両国は署名しました。

 今回のマドゥロ大統領の「ガイアナの領土にベネズエラの州を創設する法律」への署名を、ガイアナ政府は「国際法違反」と反発しています。マドゥロ政権がエセキボ地域に執着するのは、2015年にこの地域で石油が発見されたからで、それまでは深い森林が生い茂る場所で見向きもされていませんでした。

 ベネズエラは、「ガイアナが英国から独立する以前の1966年に、英国との間で締結された協定に支配権があると記載されている」と主張しています。これにガイアナは、現在の国境が確立された1899年のパリでの報告書で、ガイアナの領土が明記されていると主張しています。

ボルソナロ前大統領とハンガリーとの共通点

 ブラジルのメディア30日付けによると、ボルソナロ前大統領が2月12日、ブラジリアのハンガリー大使館に43時間滞在した件で、国内に「どうしてハンガリーの大使館に?」と疑問が持ち上がり、連邦警察が訪問理由の捜査を始めました。

 この件でボルソナロ氏の弁護士は、「友好国当局との連絡を維持するのに役立った」と説明、連邦最高裁判所のモラエス判事は、弁護側が行った説明について司法長官事務所の見解を求めています。

 極右のコーディネーター、ギリェルメ・カザロエス氏はハンガリー独裁政権であり、超保守派が権力を握っていると説明、「世界の中で、ボルソナロ氏のイデオロギーと政治認識に最も近いのがハンガリーであることは間違いない」と強調しています。

 ハンガリー大使館に出頭する4日前にボルソナロ氏はパスポートを押収され、2023年1月8日のクーデター行為を理由に数人の同盟者や元顧問らが捜査を受けていました。この日、ハンガリーはボルソナロ氏の支持を表明、これを受けボルソナロ氏は司法の追及を避けるためハンガリー大使館に避難したと見られています。

 ハンガリーベルリンの壁が崩壊以降、新しい国造りを始めた国で、35年後の今、色々な変遷を受け、極右が支配する国になっています。西側諸国の影響を拒否し、特に中東からの移民やジプシーと呼ばれていたロマ族を拒否しています。現在、世界中の過激派はハンガリーを模範として注目しているとされ、ボルソナロ氏と波長が合う国と言えるようです。